イスラムの結婚制度は総じて男性側の金銭的負担が大きくなっています。具体的には以下のとおり。
・結婚前に男性が家を用意する。
・男性が女性にマフル(婚資)を払う。
・生活費は男性の負担。
・結婚時に離婚時の慰謝料を決める。
男性が家を用意する
多くのイスラム圏では、結婚時に男性が「家」を用意することになっています。
それも賃貸ではなく持ち家が理想とされている。日本ならローンを組んで何年もかけて買うものを、結婚時に用意する必要があるのです。
これはイスラムの決まりというより、アラブ諸国の慣習に近いかもしれません。
家具は男女双方で分担が決まっていますが、ベッドやテーブルなど大型家具はたいてい男性側の負担です。
中東の国ヨルダンでは、家具もすべて男性が用意します。
男性から女性にマフルを贈る
イスラムの結婚では、男性から女性に「マフル」(婚資金)を払う義務があります
(「マフル」についてはムスリムとの国際結婚で「マフル」はどうなる?)。
これは日本では「結納金」と訳されることが多いのですが、実際は花嫁への贈り物です。
花嫁個人に贈られるもので、結婚後は彼女の個人財産になります。
マハルの額は国によって違いがありますが、月収の数十倍になる場合も。
エジプトなどでは、結婚資金を貯めるためにサウジアラビアや湾岸諸国に出稼ぎに行く男性がたくさんいます。
離婚時の慰謝料を決める
イスラムの結婚では、離婚時の慰謝料をあらかじめ決めておきます。
先ほど書いたマハルには「前払い」と「後払い」があり、後払いがこれにあたります。
これは(夫からの要求で)離婚した場合に夫が妻に払うお金で、女性が離婚後の生活に困らないためのもの。
「後払い」は「前払い」より高額なのが普通です。
「前払い」「後払い」のマフルの額は、結婚契約の際に、新郎新婦の親同士が決めます。
本人同士はたいてい「結婚だ!」などと心が浮かれているため、冷静な話し合いができないからです。
お金がない男性は、離婚も簡単にできないシステムなのです。
「イスラムの法では離婚する場合、男性の側は女性に生活の補償を与えることを義務づけているし、また女性の側からも離婚の申し立てをすることができる。これも当時の世界では他に類を見ない女性尊重である。
イスラム教団が短期間にして、あれだけの急成長を遂げた背景には、こうした平等思想があったと見る学者は少なくない。
アッラーの前には富貴の差も、男女の差もないととく教えが、当時の人々意にとってどれだけ衝撃的で、威力的であったかは想像にかたくない。
(「日本人のためのイスラム言論」)
結婚時に離婚のことを決めておくなんて‥?
「結婚する前から離婚のことを決めておくなんて縁起でもない」と日本人なら思いがちです。しかし男女の愛ほどアテにならないのも、また事実。
「あからさまにお金のことを話題にするなんて‥‥」と思いますが、大事なことだからこそ、うやむやにしないのです。
現に日本では離婚して慰謝料や子供の養育費を受け取れない女性は多い。
「離婚後の養育費の未払い率は8割を超える。ほとんどの母子世帯は元夫から養育費をもらえていない過酷な現実がある。(相手の男性が)法律をある程度知っていれば、強制執行は難しく、訴えられても逃げることができるとわかっている。民事なので支払わなくても逮捕されるわけではない。」
(『東京貧困女子。』)
生活費は男性の負担
イスラムの結婚では男性が扶養義務を負います。
女性の就労を禁じているわけではなく、女性が収入があっても家にお金を入れる義務は本来ありません。夫より収入が多くでも同様です。
「生活費は、すべて男性の義務とされているから、仕事をもっている女性はもちろんのこと、一般に女性の方が金持ちだともいわれる。あとにのべる女性銀行には、女性たちが財産をもちこみ、「これは、家族のだれにも内緒にしておいてね」という人が多いと、女性支店長が語っていた。これらを資本にして、男性をエイジェントにたて、大がかりなビジネスをしている女性も、サウディアラビアをはじめ、あちこちに見られる。」
(『イスラームの日常世界』)
(参考:イスラムにおける夫婦の役割分担。家計は基本、夫の負担。それは女性差別?)
イスラムの結婚について興味がある方の参考になれば嬉しいです。
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