2019-08-14

イスラムの結婚ルールとは?

エジプトの結婚式

エジプトの婚約式で、花婿から贈り物の貴金属を付けてもらう花嫁。アラブの結婚では今も見合いが多く、また結婚にあたっては男性から女性に貴金属品を贈るのが慣しになっている。

イスラムにおける結婚とは?どんな決まりがある?日本の結婚と違うのか?
そんな疑問に、わかりやすく答えます。

*イスラム教徒との結婚の際の「改宗」についてはは、イスラム教徒との結婚には改宗が必要?

*「マフル」については、「ムスリムとの国際結婚で「マフル」はどうなる?」に詳しく書きました。

結婚は推奨行為

イスラムでは結婚をすすめています。

『おまえたちのうちの独身者、またおまえたちの男女奴隷のうち善良な者は結婚させよ』(24:32)

結婚した者は信仰を半分達成した(のと同じである)」というハディースもあります。

つまりイスラムでは結婚は「かなり義務に近い推奨行為」です。

結婚は「契約」

インドネシアの結婚式イスラムでは結婚は「契約」として扱われ、必ず契約書を作成します。日本のように役所に届け出るだけでは結婚は成立しません。(日本でイスラム教徒と結婚した場合も同様です)

結婚契約式

契約書を作成する儀式は「結婚契約式」などと呼ばれ、通常2人の男性の証人が立ち会います。

インドネシアやパキスタンでは「二カー(Nikah)」、エジプトでは「カタブ・アルキターブ」と呼ばれます。

日本では、モスクでこれを行います。(→日本のモスク一覧

契約書に記載する内容

契約書には結婚の色々な条件を書き込みます。男女の年齢、夫の名前と両親の名前、仕事、妻の名前(夫がすでに結婚している場合)などです。

夫の妻の名前」を記す欄もあります。イスラム教では一夫多妻が認められているからです。

以前はこの項目はありませんでした。そのため「独身と思っていたら実はよそに妻子がいて」といった話も珍しくなかったそう。(中には母国に妻子がいて、内緒で日本で結婚しようとする男性もいます

他に契約書にはこのような内容が書かれることが多いです(イスラム圏の場合)。

「他の女性と結婚しないこと」
「結婚後も妻が仕事を続けることを認めること」
「妻が自分の親や親族を訪ねることを妨げないこと」

(ただ条件等は双方の話し合いで決まり、必ず自分の希望が通るとは限りません)

結婚にはマフルが必要

結婚成立には、男性から女性にマフル(マハル=婚資)を支払う(贈る)ことが必要条件です。

これは「結納金」と訳されることも多いのですが、実際は贈り物に近く、結婚後は妻の個人財産になります。

マフルなしの結婚契約は成立しません。(→「ムスリムとの国際結婚で「マフル」はどうなる?」

またマフルは基本的に「前払い」と「後払い」があり、契約書にはこれらのマフルの額を記します。

(後払いは離婚時に支払われ、女性の離婚後の生活保障の意味合いがあります)

異教徒とイスラム教徒の結婚

イスラム教では異教徒同士の結婚は基本的に認められていないため、改宗の必要があります。

(詳しくは→イスラム教徒との国際結婚には改宗は必要?)をご覧ください。

結婚指輪はある?

イスラム圏の国々では、結婚にあたって新郎から新婦に貴金属の贈り物をするのが通例です。メインは結婚指輪です。

*イスラムの結婚では、男性はマフル、貴金属を女性に贈り、さらに家を用意することになっているため、金銭的負担が大きいです。

(→イスラムの結婚制度:男性の経済的負担が大(マフル、持ち家、離婚時の慰謝料の義務

イスラムにおける夫婦関係:権利と義務

結婚は契約なので、夫婦双方の権利・義務が定められています。

夫の義務=①生活費を負担すること。 ②性行為を行うこと。
妻の義務=①家庭内の運営に責任を持つこと。 ②性行為を行うこと。

夫の義務:生活費を負担

イスラムでは夫が家計を担うのが義務です。

「アッラーはもともと男と(女)の間には優劣をおつけになったのだし、また(生活に必要な)金は男がだすのだから、この点で男のほうが女の上に立つべきもの」(「コーラン」4:34)

イラン人と結婚した日本女性で、「夫が家にお金を入れてくれない」と相談を受けたことがあります。日本では夫が生活費を入れるのは慣習ですが、イスラムでは宗教で定められた明確な義務

もちろんイスラムでは女性が働くことを禁止しておらず、実際生活上、家計に協力する妻もたくさんいます。それでも原則的には妻の方が収入が多くても家計を負担するのは夫です。

参考:イスラムの夫婦の「役割分担」。家計は基本、夫の負担

離婚の決まりは?

イスラムはキリスト教と違い、離婚は禁じられていません。それは「契約の解消」であって、「バツイチ」など暗いイメージはありません。離婚した女性もわりとすぐに再婚します。

ただ避けるべきなのは変わりなく、コーランでは積極的に和解をすすめています。

「できるだけ仲良く添いとげることが第一。汝らの方では嫌いな相手でも、もしかしたらアッラーが立派にしておやりになった者かも知れないから」(4:19)

「二人の間にひびが入りそうな心配のある時は、男の一族から調停人を一人、それから女の一族からも調停人を喚んで来るがよい、もし両人に仲直りしたいという気持ちがあるならば。アッラーが二人の仲をうまく合わせて下さるであろうぞ」(4:35)

夫の離婚権は強い

イスラムでは離婚を宣言する権利は夫だけにあり、夫が「お前を離婚する」と3回宣言すれば離婚が成立することになっています。

(参考:「イスラムの「離婚」はとても複雑。2回目・3回目の離婚は何が違う?」)

ただし「宣言の権利」が夫にあるだけで、妻からも離婚の要求はできます。

夫からの離婚は「後払いのマフル」を払う

離婚を宣言する権利は夫だけにあるのですが、その際は夫は妻に「後払いのマフル」を支払う義務があります。

実際には夫婦喧嘩などで怒りにまかせて「離婚だ!」と言ってしまい、冷静になってから後悔する男性はたくさんいるようです。

離婚後の待婚期間

女性は離婚後、すぐに別の男性と結婚できるわけではなく、原則3回の月経を見るまで独身でいなければなりません。前の夫の子を妊娠している可能性があるからです。(2章228節)

ただ床入り前に離婚した場合は、この限りではありません。

子どもの親権

イスラムでは血縁関係を重視しているため、原則として養子は認められません。このことは名前にも反映され、「父の名」の部分には育ての親ではなく、実の父親の名前が記されます。

離婚したら、7歳未満の子供は母親に託されます。それ以降の年齢は、男子はどちらの親の下に行くか選択できますが、女の子は必ず母親と暮らすことになっています。

ムスリムとの結婚で大切なこと

記のとおりイスラムの結婚ではマフル」や「夫の扶養義務」など女性の権利を明確に定めています。ムスリム男性と結婚する日本人女性で、それらを知らずに結婚している方も多いようです。

ただルールはあくまでルール。特に日本人とムスリムの結婚では、必ずしもマフルが伴わないケースもあるでしょう。あくまで大切なのは相手との信頼関係。これは日本人であっても外国人であっても同じ。

イスラム教徒との結婚について相談したい

イスラム教徒との結婚や改宗については、こちらの機関に相談できます。

SKIPサポートプロジェクト
楽しもう!ムスリムライフ 
東京ジャーミイ
アラブイスラーム学院

【参考図書】

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