「女性は宝石」。イスラム女性がヒジャーブで髪や肌を隠す本当の理由

イスラム教徒の女性は、ヒジャーブ(スカーフ)などで髪や身体のラインを隠しています。

これを見て「自由を奪われている」「抑圧されている」と私たちは思いがちです。

果たしてそうでしょうか?

なぜ彼女たちは隠すのでしょう?

それは髪や肌が「美しいもの」だからです。

その美しい部分は「大切な人だけに見せるもの」だから。

「大切な人」とは、夫や父親など身内の男性です。

イスラムには「女性は宝石」という言葉があります。

女性は宝石のように高貴で美しいものであり、その美しさは不特定多数の男性に見せるものではない。

大切な人(夫や父親)だけに見せべきものなのです

 

まずヒジャーブの元になっている「コーラン」の章句から説明しましょう。

ヒジャーブの根拠:コーランの章句

①美しい部分を隠す

コーランでは、女性たちに「美しい部分を隠しなさい」と命じています。

 「それから女の信仰者にも言っておやり、慎みぶかく目を下げて、陰部は大事に守っておき、外部に出ている部分はしかたがないが、そのほかの美しいところは人に見せぬよう。胸には覆いをかぶせるよう」(24章31節)

この後に、見せても良い相手として「自分の夫や親」などが記されています。

そのために、女性達は美しい部分(性的部位)を隠します。

②長衣を着ること

またコーランでは長衣を着るようにも命じています。

「これ、預言者、お前の妻たちにも、娘たちにも、また一般信徒の女たちにも、(人前に出る時は)必ず長衣で(頭から足まで)すっぽり体を包みこんで行くよう申しつけよ。」(122章59節)

このように、ゆったりとした長衣などで体の線を見せないのが、本来の正しいイスラム女性の服装です。

髪を隠す義務はある?

「①美しい部分」には、具体的な部位は書かれていません。

そのため「頭髪は含まれるのか?」は、イスラム教徒の間でも意見が分かれています。

髪が性的部位に含まれると考える人は髪を隠し、そうでない人は隠しません。

ただアラブ地域では「髪は美の象徴」と考えられているため、多くの女性が隠しています。

なぜ隠すように命じたのか?

男性に刺激を与えないためです。

日本の女性専用車両と同じです。女性車両は、男女のスペースを分けることで痴漢を減らし、女性が不快な思いをしないようにしています。

ヒジャーブも女性の美しい部分を隠し、男性から身を守るためです。

イスラムでは「人間が欲望を持つ存在であり、欲望に弱い存在」であることを認めています。

そして男女について、こう考えます。

・「男女は違うもの」
・「男性は女性の性的魅力に誘惑されやすい生き物

女性は守られるべき存在であり、男性が女性の美の誘惑に惑わされないよう、女性に美しい部分を隠すよう規定したのです。

女性がヒジャーブで髪と肌を隠す「本当の」理由

ではイスラム女性達たちは宗教の教えを守るために、しかたなくヒジャーブを着用しているのでしょうか?

厳密に言えば髪を隠すことは義務ではありません。しかし多くの女性が髪を隠しています。

なぜ髪まで隠すのでしょう? 

ヒジャーブ着用の裏にある「本音」を紹介します。

第一の理由は宗教心

ヒジャーブで髪を隠している女性に理由をたずねると「イスラム教徒だから」「それがムスリマ(イスラム女性)としての正しい行いだから」という答えがかえってきます。

コーランに「髪を隠せ」とありませんが、多くの女性は髪を隠すことが「イスラム的に正しい行い」だと信じています。

「女性は宝石」ーヒジャーブの根底にあるもの

では、「信者の義務として」しかたなくヒジャーブを着用するのでしょうか? 

そうではありません。「自分の美しい部分は大切な人にだけ見せるもの」だからです。

多くの女性はいいます。

「紙で包んであるアメとそうでないアメがあったら、人はどっちを食べる? 包んである方でしょう。むき出しのアメはハエがたかっているかもしれないし、汚い手で触ったかもしれない。

スカーフもそれと同じ。女性の髪が美しい・高貴なものだから包む。包むからますます価値が上がり、尊ばれることになるのよ

大切な人へのプレゼントは、きれいな包装紙で包みます。

女性も同じです。宝石のように高貴で美しい存在だからこそ、美しい部分は隠すのです。

自分の美しさは大事な人にこそ見せるものであり、不特定多数の男を楽しませるものではありません

その根底には、「女性は美しいもの」「守られてしかるべき存在」という自己肯定感、そして「女性としての自分を大切にする」という思想があります。

「ちゃんとした女性」と見てもらえる

さらにヒジャーブを着用することで、「品行正しい女性」「モラルがある人」と周囲の人に見てもらえます。

サラリーマンの背広とネクタイのようなものと言ってもいいでしょう。

ヒジャーブを身につけることで、公共の場での扱われ方も違ってきます。レディとして扱ってもらえるのです。

結婚しやすくなる 

男性は結婚相手にちゃんとした女性を望むもの。イスラム教徒の場合、それはつまり「敬虔な」女性です。

ヒジャーブを身につけることで敬虔さをアピールでき、結婚相手を見つけやすくなります。

実際私が会った男性の中には、妻に対して「彼女はちゃんと礼拝するって聞いたから結婚したんだ」と話す人もいました。

多くのイスラム男性は「信心深い女性なら、間違いを起こさないから(不倫など)」といいます。あちらの男性は嫉妬深い方が多いのです。

私のエジプトの友人は、ふだんヒップラインが見えるジーパンをはいたりしていましたが、結婚を意識し出した頃から黒いアバーヤ(ガウン)を着るようになりました。

男性の性的嫌がらせが減る

美しい部分を隠すことで、男性のわずらわしい視線をカットでき、性的嫌がらせも受けにくくなります。

「ハチミツにふたしないで晒しておいたら、ハエがよってくるでしょう?

それは当たり前よ。いちいち苛立つより、最初から隠してしまった方が賢いわ」

というのがムスリマ(イスラム女性)の考え方です。

プライバシーが確保できる:「見られる者」から「見る者」へ

美しい部分を晒した女性は、本来「見られる」存在です。

それがヒジャーブを身につけることで、「見る者」へと立場が逆転します。

これによってプライバシーと「ジロジロ見られない」気楽さ、優位性を手に入れることができます。

身体コンプレックスを隠す

先の「②長衣を着る」で書いたように、体の線を見せないのが正しいイスラム女性の服装です。

このような衣服を着用すれば、足が太い、ウェストのくびれがないなどの身体的コンプレックスをすっかり隠してくれます。(だから油断して太ってしまう、という女性はいるようですが)

サウジアラビア女性が身につけているアバーヤとニカブが最たるもの。これなら年齢でさえも隠してくれます。

ヒジャーブへの誤解

強制からではない

以上見てきたように、女性たちは自らすすんでヒジャーブを身につけています。

イランのように国の法律でスカーフ着用を身につけている国もあります。しかし多くの国では自由です。

にもかかわらず、ヒジャーブで髪まで隠す女性が大多数です。

アタチュルクの時代に近代化をおしすすめ、一夫多妻を禁じたトルコでさえ、多くの女性が髪を隠しています。つまり自ら望んで身につけているのです。

イスラム固有のものではない

髪を隠すヒジャーブは、イスラム圏だけのものではありません。

イスラーム以前のササン朝ペルシャや、スペインなど地中海沿岸地域でも、女性がヴェールで顔や体を覆うことは珍しくありませんでした。

「ヴェールの着用の習慣にしても、イスラーム以前のササン朝においてもちいられていたものであり、ムハンマドの生存中ヴェールの着用を義務付けられていたのは、彼の妻たちだけであった

イスラームにおける女性とジェンダー

今もイスラム圏のキリスト教徒やユダヤ教徒の中には、スカーフで髪の毛を覆っている女性はいます。

ヒンズー教徒の女性

インドのヒンズー教徒の女性。彼女たちの中にも、外で髪を隠している人もいる。

 

後記:ヴェールを脱がせる楽しみ

髪や肌を隠すことで、よりいっそう自分の価値が増す。それをイスラム女性達はよく理解しています。

隠すことで神秘性が増し、より魅力的に見えるということを。

「オマーンの街角で日本人男性と一緒に歩いていた時、チャドルの女性とすれ違うたびに、「隠しているのを見ると、よけい綺麗に見えますよね(笑)」と鼻の下をのばしていた。

 何事もあからさまに見せない方が美しい。イスラム圏にいると、そんなことを思ったりする。」

イスラム流幸せな生き方』

隠されているから、よけい見たくなる。それが人間の心理です。

見たいのに見れない。それによって、さらに興味をそそられる。

男性は神秘のベールに包まれた女性の布を一枚一枚はいでいくことに、ワクワクする興奮を覚えるものです。

男性は基本的にハンターです。

教会の結婚式では、きまって新郎が新婦のヴェールを持ち上げます。

なぜヴェールをかぶるのが女性なのか? 
ヴェールを脱がせるのが男性なのか? 

それが「男女の本性」に沿っているからです。

逆に女性が自分から何もかも脱ぎ捨て、「どこからでも見て!」となったら、男性から「ベールを脱がす楽しみ」を奪ってしまいます。

ヴェールは女性が自ら脱いではいけない。男性の手で脱がせてこそ意味があるのです。

女性の美しさは、あからさまに見せないことで価値が増すのです。

そして本当に女性として尊ばれるのは、「隠す美しさ」を知っている女性なのです。


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