イスラム教徒の人口増加率は、イスラム教徒以外に比べて世界的に高くなっています。
(出典:Pew Reserch Center)
なぜイスラム教徒の人口増加率は高いのか?
イスラム教徒の出生率は高いのか?
そんな疑問に答えます。
この記事を書いている私は、イスラム入門書『イスラム流幸せな生き方』など多数の本を出版しています。
イスラム教徒の人口増加率が高いのは、①入信者が多い、②出生率が高い、が理由です。
①の理由は、「世界でイスラム教徒が増える理由」で紹介しました。
ここでは②出生率が高い理由を解説します。
目次
イスラム教は結婚を奨励
まず1つ目の理由は、イスラムで結婚を奨励していることです。
『おまえたちのうちの独身者、またおまえたちの男女奴隷のうち善良な者は結婚させよ』
(「コーラン」24章32節)
コーランは神の言葉を集めたものです。つまり結婚は「神の命令」です。
「義務」とはではいきませんが、基本的に誰もがするものです。
日本のように独身を謳歌するという考え方はありません。
結婚して一人前という考えは強く、適齢期になれば周囲から結婚話がしきりに持ち込まれます。
独身者はなにかと生きづらい社会で、独身者用のアパートなども限られています。
というわけで、イスラム圏では総じて結婚年齢は若く、若いうちに結婚するので妊娠率も高くなります。
婚外交渉を禁止している
2つ目の理由は、婚外交渉の禁止です。
夫婦としかやることができないため、夫婦間の性交渉が増える結果となります。
男女隔離が出生率を上げる
特に婚前交渉を禁じた効果は大きいでしょう。
男性が女性と交わるには、結婚が唯一の手段です。若く元気な男性が結婚したいと思うのは当然です。
いくら宗教で結婚を奨励しているといっても、中には結婚したがらない男女(特に男性)はいるはずです。結婚はお金もかかるし、責任も伴います。
それでも結婚したいのは、結婚しないと女性と交われず、結婚が推奨行為でもあるからです。
また男女隔離も異性への憧れを高める一種の効果があると思います。
私はあるパキスタン人の学者の話を思い出した。
彼は「なぜイスラム文化は男性と女性を分離することにそんなに熱心なのですか」と尋ねられてこう答えた。
「出生率を上げるために決まっておろう!」
常に身近にあるものには、人間ありがたみが感じられないものです。
簡単に手に入らないからこそ憧れるし、関心が高まる。
日本のように常に男女が身近にある状態では、「異性への憧れ」という点ではマイナスに働きます。
異性と簡単に交われないから、ちょっとでも縁がある異性には「この人しかいない!」と、ときめいてしまうのです。
アラブの男は5分で終わる
結婚までおあずけですから、結婚したらセックスレスになっているヒマはありません。
これに関連することで、アジアに通い続ける男性たちにインタビューした「アジア行きの男たち」という本に、面白い記述があります。
タイにのめりこんだ男性の語りがあり、興味深かったのはタイの娼婦との会話です。
「アラブ人はノック(タイ語で鳥の意)と同じだよ」
「どうして?」
「五分で終わるんだもん。早くていいよ」
イスラムの世界の男たちは、すぐに興奮するから鳥のように早く終わるというのである。
おそらく映画やビデオなどで性的な表現が規制されているせいだろう。
そういえばアラブ人に連れ出された女はたいてい三十分くらいで帰ってくる。
一方、最近の日本人はもっぱら「クレイジーだ」との評判である。顔にかけさせろだの、3Pをやらせろだの、ビデオを撮らせろだの。
アダルトビデオが日本人の性生活に与えた影響は、ファーストフードが日本人の味覚に与えたのと同じくらい革命的だった。
つまり、世界が変わったのである。
タイの娼婦でさえ、「ちょっと前までの日本人はよかった」というくらい激変しているらしい。
この本が書かれたのは2001年。
今はアラブでもネットでエッチ画像が簡単に見られる時代ですから、5分が10分くらいになっているかもしれません。
それでも、雑誌や映画館や夜の街にそういったモノがあふれていませんから、状況は当たらずしも遠からずです。
男女交際が自由、性の情報があふれる日本では、本来なら心踊る異性との交わりが、味付けをしなければ満足できなくなっているとしたら、すこし悲しいことかもしれません。
母は強い
出生率の点に話を戻すと、イスラムでは母性がかなり尊重されています。
「天国は母の足元にある」という有名なハディース(預言者ムハンマドの言行録)もあります。
「女性は子供を持って一人前」という考えは日本以上です。
アラブ社会では、人を呼ぶ時、子どもの名前を使って「誰々のお父さん」「誰々のお母さん」と呼ぶ習慣があります。
子どもがいることは、ある意味ステイタスなのです。
だから子どもを産めない女性は、かなり肩身がせまい思いをします。
夫が第二夫人をめとっても文句は言えません。
このようにイスラム社会では結婚して子どもを産んで、初めて一人前とみなされ、結婚もせず、子どもを産まない人生を歩むことは、男女とも相当の困難を伴います。
日本はある意味、自由でとても生きやすい社会なのですが、それが出生率の増加という点ではマイナスに働いてしまっている現実は、悲しいかな否めないかもしれません。
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