陰毛の処理は男女のたしなみ。イスラム圏の脱毛事情

エジプトの結婚式。その多くは新郎新婦の家の前の路地や広場など屋外で行われる。結婚する男女にとって陰毛の処理は大切な身だしなみ。
イスラム圏では男女とも陰毛を処理するのか?その理由は?お手入れはどうしてる? そんな疑問にお答えいたします。
アラブでは昔から「ハラーワ」(キャラメル)というシュガーワックスが使われています。
アンダーヘアの処理は男女双方のエチケット
イスラムでは陰毛の処理は大切な身だしなみ。男性も女性もです。とりわけ結婚する女性にとって、下の毛の処理することは、大切な旦那さまへのエチケットなのです。
私が結婚するとエジプトの友人に告げた時のこと。彼女からかえってきた言葉がこれでした。
「フジヨ、ちゃんと毛を剃った?」
「うん、脇の下とかでしょ」と私。
「ちがうわよ、あそこの毛よ」
ええ!?
「あそこも剃るの?」
「そうよ。男は毛がきらいなのよ」
男性はどう思っている?
男性女性の陰毛など気にしないのでは?と思っていましたが、とんでもない!彼女の夫に「毛のある女性はどう思う?」と聞いてみたところ、ものすごーくイヤそうな顔をして「ありえないよ」とボソ。
「女性としてのエチケットだよ。処理しないなんて不潔だ。男も剃ってるよ」と聞いて、2度びっくりです。
イスラム圏には胸毛を誇らしけにシャツのボタンの合間から見せている男性もいたりするのですが、アンダーヘアはちゃんと処理しているそうです。
大切な夫婦の交わりにおいて、「ムダ毛を生やしたまま」は失礼なのです。
陰毛のお手入れは「信仰」の一部
陰毛を処理することは、イスラム教の教えから来ています。彼らが日々行いの手本にしている「ハディース」(預言者ムハンマドの言行録)に「陰毛、脇毛を処理するように」とあるのです。
男女の両方が対象。ただし男性は、胸毛、足のすね毛を処理する必要はありません。
なぜ陰毛を処理が義務に?
シャワーや風呂などない時代、毛じらみにたかられたりしないよう、また体臭をやわらげるために、そのような教えが生まれたものと思われます。
実際、ムダ毛を処理することで、汗や汚物がたまりがちな部分をきれいに保て、性交の際の感染症予防にもなります。
女性は生理中に毛があるとムレの原因になったり、かゆみが出たりすることがありますが、デリケートゾーンを処理することで清潔感をキープできます。そういった意味で、あの部分の処理は理にかなったものなのです。
それを預言者ムハンマドは体感し、千年以上も前に信者に指示していた。まさに卓見です!
アラビアンワックスの美肌効果
ではイスラム圏の女性たちは、その処理をどうしているのでしょう?
多くは「ハラーワ」(キャラメル)を使います。昔からムダ毛処理に使われてきたものです。「ハラーワ」はアラビア語で「甘いお菓子」の意味です。
その名の通り、レモンと砂糖を煮付めた甘いネバネバしたワックスで、「アラビアンワックス」などの名称で薬局などで売られていますが、たいていの女性は家で手作りしています。
アラビアンワックスの作り方
材料は水と砂糖とレモンだけ。まず水と砂糖をフライパンに入れて煮込み、トロトロになってきたらレモン汁を加え、深いアメ色になったら出来上がりです。
これを両手でこねたりして粘着力を出させます。イメージとしては、モチを両手で持ってびよーんと引っ張る感じです。
これを肌にベッタリ力強く押し付け、後でガムテープをはがすがごとく、ベリっと剥がす。思わず「イタッ!」と叫んでしまう痛さですが、これがやがて快感に変わります。
処理した後の肌を触るとスベスベになっている!ワックスに含まれるのは天然素材だけ。肌にとても優しく、レモンに含まれるビタミンCで美肌効果絶大です。
「カミソリでそったらすぐに毛が生えてきちゃうけど、これならなかなか次の毛がはえてこないのよ」と友人。ワックスなら毛が根本から取れるのです。カミソリ負けで肌が荒れたり、かゆみが出ることもありません。
最近は便利なレーザー脱毛などあるものの、今でもハラーワがアラブ女性たちに愛されているのは、こういうわけなのです。
【参考図書】
20年間にわたり取材したイスラム女性たちのリアルな日常を紹介。モロッコ、チュニジア、エジプト、イラン、パキスタン、モルディブ‥‥。歌あり踊りありデートあり。「抑圧」などメディアによって作られたイメージと違う、生き生きした女性たちの実像を紹介します。
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