パキスタン男性と結婚しパキスタンに暮らして20年。【ベーグめぐみさん:インタビュー】

パキスタンに暮らす日本人妻

お子さんが通う学校の職員さんと子どもの学習ぶりについて相談。

ベーグ(岩崎)めぐみさん(50歳)

パキスタンに暮らして約20年。1989年にパキスタン人の夫と結婚。2001年パキスタンに移住。現在イスラマバード市内で、4人のお子さん(30歳長女、25歳次女・23歳長男・18歳三女)と暮らす。

パキスタンでの暮らしぶり、女性でパキスタンに暮らすということ、パキスタン人男性と結婚を考える女性へのアドバイスなどをお聞きしました。

*この記事はコロナ前に現地で取材し、その後追加取材しました。

ご主人との出会い

パキスタンに暮らす日本人妻

雑貨店にて。お茶やスナック菓子、潜在などあらゆるものが売られている。

まずは、ご主人と結婚したきっかけを教えてください。

友人がバングラデシュ人とお付き合いをしていて、その雇い主が夫でした。塗装業です。友人とその彼、雇い主と私の4人でよく遊んでいるうちに付き合うようになりました。

付き合ってすぐに「結婚してほしい」と言われて、「この人、頭大丈夫かしら?」とびっくりしました。イスラム教のことを全く知らなかったので。イスラム教では結婚外の男女の交際が認められていないんですよね。

とにかくアプローチが熱烈で、「こんなに思ってもらえるなら幸せになれるかな」と結婚を決意しました。

結婚するにはイスラム教に改宗しなければりませんが、迷いはありませんでした?

実はそんなに深くは考えず、軽い気持ちで改宗しました。他に信仰している宗教も特になかったので。

ただ宗教には抵抗がありませんでした。小学校2年の時に母が亡くなって、おばのところにあずけられました。寂しかったのか、神様とか誰かに見て欲しいという気持ちがありました。そこで教会に行ったり、霊波之光とかエヴァの商人とか、たくさん宗教をかじりました。でもこれもちがう、これもちがうと。

イスラム教は、最初は良いイメージを持っていませんでした。お祈りしろとか酒は飲むなとか、押さえつけられている気がして。それに日本ではイスラムに触れる機会がないから、どういうものかわからなかったんです。だから改宗したくないという人の気持ちもわかります。

主人には「豚肉だけは食べないでね」と言われました。子供の頃から豚肉の匂いがダメでした。お酒も多少は飲んでいましたが、それほど好きというわけではなく、コーランにお酒を飲むなと書いてあるから、いっさい飲まなくなりました。それ以外は前と変わらない生活をしていましたね。パキスタンに来るまでは名前だけのムスリムでした。

結婚手続きや結婚式はどうしましたか?

結婚契約は、家に宗教関係者を呼んでやりました。ニカーナマ(NIKAH NAMA)という結婚証明書を発行してもらいました(注)。

あと日本の役所に婚姻届を出し、パキスタン大使館にも婚姻届を出しました。

結婚式は日本のインドレストランで家族や友人、知人を呼んでパーティーをしました。

(注)結婚契約は現在モスクで行うことが多い。

はじめてパキスタンに来たのはいつですか?

結婚してからです。移住前に2回来ました。義理の弟の結婚式に出席するためと、男の子を出産したお祝いのためです。

最初の印象は「怖かった」です。空港の中が暗いし、ヒゲをはやした民族衣装の男性ばかりで、女性の姿が全くないんです。

そこから車で3時間ほどの主人の実家へ向かいました。途中は外灯もほとんどなく真っ暗で、心細かったです。時々キンキラに飾りつけたトラックが走っていて「うわー!すごい」と思ったり、初めてリキシャを見て感激したりしました。かと思えば、牛がのんびり歩いていたり。

結婚式は一晩中歌って踊っていました。主人に「この人たちいつ寝るの?」と聞いたくらい。疲れた人は部屋の隅で寝ていたりしていました。イスラマバードは今は結婚式場で2~3時間ですませますが、田舎では1週間続いて、毎日夜中の2時3時までやっているんです。娯楽がないから、そういうところで発散するんですね。

パキスタンに移住してから

パキスタンに暮らす日本人妻

生地店で自分の服を仕立てるための生地を選ぶ。

移住した理由を教えてください。

20011月にパキスタンに移住しました。息子が3歳の時です。「とりあえず1年住んでみる」ということで来ました。それがいつのまにか20年近くになってしまいましたけど。

移住した理由は、子どもたちにイスラムを学んで理解してほしいという姑の意見があったからです。

彼女は日本に来た時に、すごいカルチャーショックを受けたんです。女の子がミニスカートを履いていて、タバコを吸ってる娘もいるし、若い学生風の男女が手をつないで歩いている。パキスタンでは考えられません。「孫娘達は日本で育って欲しくない」と思ったようです。

ご主人はその頃、日本で仕事を続けていたんですか?

日本と行ったり来たりで、月1回パキスタンに来ていました。2001年で景気がよかったので仕事も忙しくて。

当時は一番下の子を妊娠中で、検診の時は必ず主人が付き添ってくれました。出産の時もです。20001年の1010日に計画出産しました。

パキスタンに住んでみて、どうでしたか?

最初は慣れない生活で憂鬱気味なってしまい、月に1、2回睡眠薬を飲むほどでした。

「女性は走ったり自転車に乗っちゃダメ」、「大きな声で話しちゃいけない」、「あまり外に出るな」とか主人の親戚の女性たちからは言われていました。

最初それはイスラム教のせいなのだと思っていましたが、土地の風習なんですよね。インドもそうです。こういうのは南アジアの習慣とイスラムの厳しい解釈が混ざったものです。

40歳になって本格的にコーランの日本語訳を読むようになり、本来のイスラムはもっと寛容だと知りました。それから断食したり礼拝するようになりました。

イスラムでは女性が外に出るなとは言っていないし、預言者ムハンマドの時代に女性は馬に乗っていたから、自転車に乗れないというのは正しくないんです。でも最初はそういうことを知らなくて、イスラム教があまり好きではありませんでした。アッラー、 ごめんなさい。

他に困ったことはありますか?

服ですね。既製品はあまり売っていなくて、みんな仕立て屋に頼むんです。まず生地を買ってきて、デザインを自分で決めます。袖はどのくらいの長さにするかとか、レースをつけたり、リボンつけたりとか。慣れてきたら楽しくなりましたけど。

使用人の管理が大変

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果物店で果物を選ぶ。ここでは基本的に野菜や果物は量り売り。

使用人はいましたか?

多い時で10人くらいいました。ガード2人、ドライバー1人、女性の家事使用人2人、ベビーシッター1人、庭師2人です。ガード2人というのは門番です。昼用と夜用の人がいました。

日本人の感覚だと、他人にお金払ってやってもらうより自分でやった方が気楽だと思うのですが

パキスタンの中流階級以上の家庭は、みんな使用人がいます。そういう文化、習慣なんです。

それに日本に比べて家が広すぎて、自分だけでは掃除しきれません。子供が4人いましたから、その世話も大変で。自分で全部やれたら楽かもしれませんが。

それだけたくさん使用人がいたら管理や気遣いも大変ですね。

食事に1番気を使いました。男性の使用人には飲食の世話をしなきゃいけません。そのために食事をつくる使用人をさらに雇わないといけないみたいな状態です。その点、女性は自分で食事作って食べてくれるので楽ですね。

今は子ども達が大きくなり自分で運転できるようになったので、運転手も必要なくなりました。今雇っているのは女の子の使用人1人だけです。これまでのベストに入るくらい良い子です。

使用人の給料はどのくらいですか?

今の使用人には月13000ルピー(約8千円)払っています。朝から晩までいてもらい、家事全般をやってもらっています。

運転手は6年前の当時で15,000ルピー(約9500円)でした。24時間住み込みで、3食付きです。チャイ(お茶)がいつも飲めるように、牛乳やお茶、砂糖のお金も渡していました。その分、プラス5,000から1万ルピーかかりました。またイード(イスラム教の祭り)のたびに服を新調するので、その生地と仕立ての代金も渡していました。

パキスタンに暮らして良かった事 

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お子さんが通う学校の職員さんと子どもの学習ぶりについて相談。

パキスタンに住んで良かった事は何ですか?

子供たちの教育ですね。上の子3人はIGSCINTERNATIONAL GRAMMAR SCHOOL AND COLLEGE:注)に通いました。ISI(パキスタンの軍統合諜報部)の息子さんたちも通った名門校です。

授業ではオックスフォードとケンブリッジの教科書を使用しています。子どもたちは全てイギリスのカリキュラムを終了したことになっています。

授業は全て英語ですから、子どもたちは今は母国語みたいに英語が話せます。世界のどこに行っても生きていけるでしょうし、親バカみたいですが、イギリス英語だから上品でクラシックです。

(注:IGSCは、イスラマバードで初めてロンドン大学とケンブリッジ大学の学校システムを導入した、幼稚園から高校までの一貫校。)

学費はどのくらいですか?

1人月17,000 ルピー(約25000円)です。日本ならこの値段で、こんな素晴らしい教育は受けさせられなかっただろうと思います。

日本では長女はいじめにあったりしていました。「おまえは外国人だ」と言われたりして。給食にも食べれないものがあるので、お弁当を作らなければならなくて大変でした。

ふだん家族の会話は何語ですか?

子ども同士は英語、私と子どもはウルドゥ語で話します。長女は小学校5年生まで日本語学校にいたので、日本語も話せます。

出産は日本と比べてどうでしたか?

こちらの方が良かったですね。イスラム教徒なので女性の医者です。

日本では、赤ちゃんの頭を出しやすいように会陰に少し切れ目を入れるのですが、こちらは会陰を保護するように、ゆっくりゆっくり出してくれんです。

パキスタンは女性が暮らしにくいのでは?

パキスタンの方が楽ですよ。生活費さえキープできればですが。使用人を雇えるので家事をしなくてすみます。

ある意味、すごくレディーファーストですし。銀行でも並ばなくてすみますし、生活のいろんなシーンで女性を優先してくれます。

店で買い物しても、お金を払うとお店の人が車まで荷物を運んでくれたりするので、とても楽です。だから日本に帰国して1、2日は、レジでお金払ってそのまま置いてきちゃうことがあるんです。パキスタンでは自分で荷物を運ばないので。

あと日本で一番困るのが食べ物ですね。食べるものを全てハラールフードでそろえようとすると大変です。

レディーファーストというのはイスラムから来ているんですか?

イスラムには女性を大切にしなさいという教えがあるんです。

他にも日本の道徳に通じる部分がすごくあるんです。小さなことに感謝しなさい、人に親切にしなさい、貧しい人を助けなさい、嘘をついてはいけない、親を大事にしなさい、自分のことを大事にして、自分を自分で幸せにしなさい、皆で助け合いなさい‥イスラムは人生のガイドブックみたいなものです。

将来は日本で暮らす予定ですか?それともパキスタン?

子どもたちは日本に住みたい子と他の国に住みたい子で分かれていますね。末娘は日本の大学に行きたいと言っていて、そうしたら息子も日本で就職したいと考えているようです。

私は基本的には子どもがいるところに住むと思います。パキスタンじゃなきゃダメとか日本でなきゃというのはありません。でも先ほど言ったように、パキスタンの方が住むのは楽です。

パキスタン男性と結婚を考える人へのアドバイス

パキスタンに暮らす日本人妻

イスラマバードの中心部にある商店街にて。

パキスタン人男性との結婚を考えている人へのアドバイスはありますか?

実際にパキスタンに来て、相手の家族に会ってみることも大事ですが、一番大切なのはイスラムを理解することですね。宗教は生活についてまわりますから。

パキスタン男性は、奥さんはイスラム教に厳格じゃなくていいけど、子どもにはイスラム教のことをちゃんとわかって欲しいという人が多いのです。ハラールフードを食べて欲しい、できればパキスタンで育てたい、と。

実際に、パキスタン人のご主人が日本で子どもを育てたくないので、奥さんに内緒で子ども達をパキスタンに連れてきてしまったケースがありました。子どもさん3人です。

そこでお母さんが子どもたちを取り返すためにパキスタンにやってきて、子どもたちを連れ出しましした。そしたらご主人が警察に「子どもが誘拐された」と届け出たため、奥さんたちが指名手配されてしまったんです。

そこで在留邦人たちが母子たちをかくまってカラチまで送り、カラチから出国させたんです。

こういうこともあるので、その時になって「話が違う」ということにならないように、イスラムをよく理解した上で結婚した方が良いです。

イスラム教では一夫多妻が認められていて、パキスタンに奥さんがいながら日本女性とケースもあるとか?相手が結婚しているか確かめる方法はありますか?

本当の意味で確かめる方法は、ないと思います。彼の家族に会ったりして確かめるにしても、隠そうとすれば隠せるし。独身証明書もありますが、偽装もできます。最近は厳しくなってはいますが。

実際私も知ってます。パキスタンに奥さんがいて、日本の奥さんが知らないとか。

もし相手に奥さんがいるのを知らずに結婚してしまったら、どうするのでしょう?

結婚を続けるかどうかは、本人次第ですね。奥さんがいても、この人と生きていきたいと思うかどうか。

イスラムを知る以前なら、私も「ひどいわ。だまして」と思っただろうけど、今はそう言えるかな?「私と結婚したんだから、彼女と離婚してよ」と言えるかな?と思います。

本国に奥さんがいても、日本で長く働いていると、当然日本女性と出会って好きになってしまうこともあります。結婚したいと思うのは自然のことです。でも一方で、パキスタンの奥さんを捨てることはできない。ちゃんと養う義務がある。だから彼女とも結婚を続ける。これもムスリム男性として責任をちゃんと果たしていることになります。

パキスタン人の奥さんと離婚してしまえば簡単だけど、離婚しないでちゃんと彼女の生活をめんどうをみるというのは、ある意味ムスリムとして責任感のある良い男性じゃないですか。

前妻を捨ててしまう無責任な男性より、ちゃんと結婚を続けて夫としての責任を果たしている方が敬虔な良いムスリムで信頼できるとも言えます。

そういう意味でも、ちゃんとイスラムを理解してから結婚してほしいです。

彼がムスリムとしても素敵で、自分も自然に「ムスリムになりたいな」と思えるような相手ならいいですよね。

日常の小さなことにも感謝し、親や家族を大切にし、人に親切にするそれらがイスラムの教えから来ているのを理解できて、彼女も自然にイスラム教に興味を持ち、入信するようなら良いですね。

イスラム教は強制するものではなく、自分が良い行いをしているのを他の人が見て「私もムスリムになりたい」と思えるような状況が理想とされています。

だから素敵なムスリム男性に出会って、「ああ、これはイスラムから来てるんだな」と理解して、自分も自然にイスラム教徒になりたいと思えたら結婚してください、とアドバイスしたいです。

パキスタン男性と結婚した場合の国籍やビザについて

 

<①パキスタン男性と結婚した場合の日本女性の国籍>

パキスタン人男性と結婚した日本女性は、日本とパキスタンの国籍どちらかを選択できる

パキスタンの国籍を取得する届出をした場合、日本国籍は自動的に失われ、届出をしなければ日本国籍のままとなる。

子どもは生まれた時点で二重国籍を取得。ただパキスタンで出産した場合、日本国籍を取得するために手続きが必要。

 

<②パキスタンで暮らす場合のビザや滞在許可>

パキスタン人と結婚している者は、POCPakistan Origin Cardを取得できる。

このカードの有効期間内(子供は7年、配偶者5年)で何度でもパキスタンに出入国が可能。

自分名義での不動産を売買したり、銀行口座を開設したり、外国籍を持ちながら、パキスタン人と同じような生活ができる。