イスラム暦|西暦との違いや年間行事
イスラム圏の国々では、2つの暦が使われています。私たちが使う西暦とイスラム暦です。後者イスラム暦について、わかりやすくご紹介します。
イスラム暦とは?
イスラム暦は月の運行に合わせた太陰暦で、正式には「ヒジュラ暦」と言います。1年は12月、1ヶ月は29日または30日です。
預言者ムハンマドがメッカからメディナへ「ヒジュラ(聖遷)」した西暦622年を第一年とします。
ヒジュラ暦を使うようになった背景
ムハンマドがイスラム教を興した当時、アラビア半島は多神教徒がほとんどでした。ムハンマドは唯一神への信仰を強く訴え、多神教を否定したため人々に迫害されます。
そこでムハンマドと信者たちはマディーナに移住(ヒジュラ/聖遷)し、最初のイスラム共同体を築きます。これを記念して、ヒジュラ暦を使うようになりました。
太陰暦そのものは、イスラム以前からアラビア半島で使われていました。ただ当時は3年おきに閏(うるう)月を入れて、1年が13ヶ月の年を設けていました。太陰暦は1年がほぼ354日で、毎年11日ずつ太陽暦とずれてしまうので、それを調節するためです。
これに対して神からの啓示「本当にアッラーの御許で、(1年の)月数は12ヶ月である」(9章36節)が下り、現在のように12月になりました。
西暦との使い分け
建国記念日、学校教育、国際取引などは西暦を使います。ラマダンやメッカ巡礼などの宗教行事は、ヒジュラ暦にそって行います。新聞やカレンダーには、両方の暦が記されています。
ヒジュラ暦の月の名前
ヒジュラ暦は全部で12月。以下が各月の名前です。
第1月 ムハッラム Muharram
(行事)10日アーシュラー(フサイン殉教の日)
第2月 サファル Safar
第3月 ラビー・アルアウワル Rabi al-Awwal
(行事)12日マウリド・アンナビー(預言者ムハンマドの生誕祭)
第4月 ラビー・アッサーニー Rabi al-Thani
第5月 ジュマーダ・アルウーラー Jamada al-Ula
第6月 ジュマーダ・アルアーヒラ Jamada al-Akhira
第7月 ラジャブ Rajab
第8月 シャーバーン Shaban
第9月 ラマダーンRamadan
第10月 シャウワール Shawwal
(行事)1-3日イード・アルフィトル(断食明け祭り)
第11月 ズー・アルカーダ Dhu al-Qada
第12月 ズー・アルヒッジャ Dhu al-Hijja
(行事)10-13日イード・アルアドハー(犠牲祭)
新月を目で確認
ヒジュラ暦は、日没後の新月を人の目で確認し、新しい月がスタートします。その確認は各地域ごとに行われるため、国によって日にちがずれることもあります。ただ30日が過ぎれば自動的に次の月になります。
太陽暦より11日ほど短いため、毎年11日ずつ西暦(太陽暦)とずれます。そしてほぼ33年で太陽暦の季節を1巡します。
ヒジュラ暦カレンダー
こちらがヒジュラ暦のカレンダーです。
https://erico.jp/calendar/image2020/
安息日・休日は?
1週間は土曜日から始まり、金曜日に終わります。キリスト教のような安息日はありません。
イスラムの祭り
イスラムの主な祭りはラマダン明けの祭りと犠牲際。それぞれ3日間くらい続きます。
イード・アルアドハー(犠牲祭)
メッカ巡礼が行われる巡礼月(イスラム暦第12月)の10日に実施されます。
犠牲祭はイスラム教徒の大先祖アブラハム(イブラヒーム)が、一人息子のイシュマエルを神の命令にしたがって犠牲に捧げようとした、という故事にもとづいています。
この故事は旧約聖書にもあり、アブラハムとその嫡子イサクの物語として創世記に記されています。
コーランでは、この話がアブラハムの側室だったハガルとの間に生まれた長子イシュマエルの物語となっています。
アブラハムは人類最初の一神教徒して、ユダヤ教徒、キリスト教徒、ムスリム共通の祖先となりました。
その長子イシュマエルはアラブ族の先祖に、正妻サラに生まれたイサクはイエスラエル族の祖先となったとされます。
このためコーランでは、息子を犠牲に捧げるというアブラハムの故事が、イサクではなくイシュマエルに替わっているのです。
この故事はユダヤ教、キリスト教にも共通していますが、犠牲際を祝うのはイスラム教だけです。
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人々は犠牲祭の1、2週間前から動物を買ってきて、庭などで飼育しておきます。
アパート住まいで庭のない人は肉屋に予約しておき、当日正しい方法で屠った肉を自宅へ運んでもらいます。
イード・アルフィトル(断食明け祭り)
ラマダン明けの祭りの時は、イスラム圏どこでも結婚ラッシュです。
ラマダン期間中、テレビ・コマーシャルにはウェディングドレスや結婚披露宴の宣伝が、これでもかと流される。
さいごに
イスラムの礼拝は太陽の動きと合わせ、断食と巡礼は月の動きに合わせて行います。イスラムの行いにそって生活していると、自分が大自然の営みの中にいることを実感させてくれます。
以前は月の満ち欠けなどほとんど気にしたこともなく、満月がきれいに見えると「きれいだなあ」と眺めるくらいでした。今は新月を見て「ああ、新しい月が始まった」、かけていく月を見ては「ああ、もう1ヶ月が過ぎてしまった」と感慨にふけります。
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