イスラム女性のメイク術＊華麗なる湾岸女子のメイクライフ

日本でも知られるようになったアラビアンメイク。現地のアラブ女子も、いつもそんなバッチリメイクをしているのでしょうか？アラブ＆イスラム女性のメイクの基本は？アラブ女性のメイク術をたっぷりご紹介します。

たったひとりのために口紅をひく＊アラブメイクの基本

「口紅をつけるのは、家にいて夫と２人きりの時だけ」。これがイスラム女性の化粧の基本です。「美しいところは人に見せぬよう」とコーランに書いてあります。女性の美しさは自分の夫だけに見せるもの。「バッチリ化粧してして、セクシーなランジェリー着て夫の帰りを待つの」。これがアラブの妻たちなのです。

（＊黒いアバヤの下にイスラム女性が着ているものは？）

預言者の妻も愛したコホル

とはいっても、外でもおしゃれを楽しみたいのは女性の心理です。若いアラブ女性の中には、念入りに化粧している人もたくさんいます。

古来からアラブ女性たちは化粧を楽しんできたといいます。「預言者ムハンマドの奥さんなどは、コホルというメーキャップ用品をつけていたのよ」と現地の女性たちはいいます。

コホルは、アンチモンという鉱物からできた黒い粉で、これを細い棒に粉をまぶし、アイライナーやマスカラとして使います。

アイ・メイクがポイント

女性たちがメイクで気合を入れるのが「目」です。くっきりアイラインをひき、アイシャドーやマスカラもばっちりと。もともと彼女たちは目が大きい上に、濃いアイメイクをするので、クレオパトラみたいになります。ふだんあまり化粧しないという女性も、マスカラだけはつけていたりします。

眉も大事です。毛深いアラブ女性は、ほっておくとまゆと眉がくっついてしまう。イスラム女性はむだ毛にはとても敏感なのです。

アラブの国別メイク事情

メイクに最も熱心なのは、私の経験上アブダビやドバイなどUAE（アラブ首長国連邦）とイラン女性たちです。エジプトやチュニジアなど北アフリカの女性たちは、この点やや控えめに感じます。

これには資金力も関係しているかもしれません。クオリティの良いメイク用品をそろえるには、そこそこお金がかかります。資金力ではサウジアラビア女性も負けてはいませんが、そこはやはり聖地メッカのおひざもと。あまり派手なお化粧は、はばかられるのかもしれません。（そもそもニカブで顔を隠しているため、化粧しても外には見えません）。

イランや湾岸女子がメイクに熱心な理由

イランや湾岸女性は外出時、黒のチャドルやアバヤ（ロングコート）で身をつつみます。出ているのは顔と手だけ。そこで、出ている部分を美しく見せることに熱心なのかもしれません。サウジアラビア女性はニカブで顔を隠していますが、UAE女性はそうでない方が多い。メイクのしがいがありそうです。

華麗なる湾岸女子のメイクライフ

では実際のアラブ女性のメイクライフはどんな感じなのか？

アブダビで女子大に通うファトマさんに話を聞きました。待ち合わせしたのは高級ショッピングモール内のスターバックスです。

メイクは自分のため

「お化粧には、毎日少なくとも30分はかけるわ。１時間かけることもある」とファトマさんはいいます。

ふだん彼女が出かけるのは学校やショピングモール、友人の家など。学校は女子大ですし、友人の家でも男性家族と顔を合わせることはありません。

女性ばかりの場でメイクして楽しいのかしら？
アラブ女子にとって、メイクは純粋に自分が楽しむためのものなのです。

お手本はユーチューバー

「夜中の12時でも、突然新しいメークのやり方をためしたくなったら化粧してみたりするの」という彼女のお手本は、有名なユーチューバーや、化粧が上手なインスタグラマー。「ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーのメイクも好きだわ」

そのメイクの傾向は、目が大きく見えるように、肌が抜けるように白く、口元はマットで上品に仕上げること。口は男性を誘惑する場所なので、あまり派手な色はよろしくないそうです。やはり「目」がポイントなのですね。

月々のメイク代は？

月々のお小遣いは６万円。そのうち７割が化粧品代に消えるそう。メイク用品を買うのは、もっぱらインターネットです。

「お店でいろいろ試してみて、気に入ったものがあったらネットで買うことが多いわ。その方が安いもの」と、しっかりしています。SEPHORA、Tarteなどが定番サイト。（ちなみにSEPHORAのいちばんのお得意様はドバイ女性だそう）

「香水も大好き。香水なしには外出しないわ」という彼女は、12個くらい香水を持っています。香水を買うのは、もっぱらnoon。化粧品だけでなく衣類、雑貨、アウトドア用品など、品ぞろえが豊富です。

進化するネイル

礼拝の時はちゃんとメイクを落とします。その都度化粧を落とすのは大変じゃない？と思いますが、また１から化粧するのが楽しいのだそう。

でもネイルはイスラム的によろしくないのでは？礼拝前の浄めを行うとき、マニキュアなどがあると水が浸透しないため、浄めを行なったことにならないからです。敬虔な女性は礼拝のたびにマニキュアを落とします。

「これは水が浸透する素材を使ったもの。だから落とさなくてもはハラーム（イスラムで許されないこと）ではないのよ」とファトマさん。最近は落しやすいネイル用品も出回っているそうです。

「香水だって、ハディースを読めば、預言者ムハンマド様はその使用をすすめているとわかるわ」。

香水にはアルコールが含まれているものもありますが、彼女曰く「アルコールは飲むのはダメだが、香水や薬に入っているのを身につけるのは許される」。（＊イスラムで酒を禁じる理由＊アルコール消毒は？）

お化粧を楽しみつつ、イスラムの教えともしっかり折り合いをつけているのでした。

＊イスラム女性の化粧はハラーム（禁止）？

 

★『イスラーム ヴェールの向こう』

イスラム女性たちのリアルな日常を紹介。モロッコ、チュニジア、エジプト、イラン、パキスタン、モルディブ‥‥。歌あり踊りありデートあり。「抑圧」などメディアによって作られたイメージと違う、生き生きした女性たちの実像を紹介します。