サウジアラビアはどんな国?*自然・暮らし・食事・観光

南部のジザン地方にあるワディ・ラジャブ。地元の人のピクニックスポットになっている
サウジアラビアの自然と気候
サウジアラビアはアラビア半島の大部分を占める大きな国 。面積は日本の5.6倍あります。
北側でクウェート、イラク、ヨルダンと、南側でイエメン、オマーン、アラブ首長国連邦、カタールと国境を接し、東はペルシア湾、西は紅海に面しています。

リヤド近郊のルブアルハリ砂漠。ルブアルハリはアラビア語で「空白の地域」を意味する。国土の4分の1を占め、隣国のオマーン、アラブ首長国連邦、イエメンにまで広がっている。
内陸部のほとんどは砂漠で、北部にはネフド(ナフード)砂漠、南部にはルブアルハリ砂漠が広がっています。
気候は一般的に気温が高く乾燥しています。内陸部の砂漠は気温差が大きく、夏の日中は40℃を超えることがあり、冬の夜は0℃以下になることもあります。

紅海に近いイエメン国境まで続く山岳地域はアシール地方とよばれ、標高1000m~3000mの山やまがつらなる。サウジアラビアでもっとも雨が多く、肥沃な地域で、農民たちは産地には段々畑をつくって耕作している。
一方、紅海やペルシャ湾岸地域は湿度が高く、多量の雨が降ることもあります。特にアシール地方(紅海沿いの南部)は降雨量が多く、緑が豊かで農業が盛んで、避暑地としても人気があります。

ジェッダの海岸沿い。夕暮れ時の涼しい時間帯になると、ピクニックする人びとでにぎわう。
旅行に適しているのは、過ごしやすい3〜4月、10〜11月です。ただし国土が広いため、どこに行きたいかによっても違ってきます。紅海沿岸のジェッダで過ごしやすいのは2〜3月と11月〜12月、内陸部のリヤドなら3〜4月、10月後半〜11月です。
イスラムの2大聖地*メッカとメディナ
サウジアラビアにはイスラムの2大聖地メッカとマディナがあります。イスラムには3つの聖地があり、そのうちの2つがメッカとマディナです。

カーバ神殿。カーバは、高さ15メートルほどの石造りの立方体。聖モスク(ハラームモスク)と呼ばれる巨大なモスクの中央におかれている。メッカへの巡礼では、ここでムスリムたちは、神殿を左回りに7周するなどの儀礼を行う。
メッカはイスラムの創始者である預言者ムハンマドが生まれ、最初に神からの言葉をさずかった場所です。メッカでもっとも重要なのは、カーバという神殿(上写真)です。
イスラム教徒は毎日5回礼拝をしますが、必ずカーバ神殿の方向に向いて礼拝します。メッカは全世界のイスラム教徒にとって、もっとも神聖な場所であり、イスラム世界の中心です。
メディナは預言者ムハンマドが亡くなった場所で、メッカから北におよそ500メートル離れたところにあります。

メディナの預言者のモスク。メッカを巡礼したイスラム教徒のほとんどが、メディナにも訪れるため、ここも世界中からの巡礼客が絶えることがない。モスクの緑色のドームの下に預言者ムハンマドの墓廟がある。
聖典コーランには、健康で十分な旅費を有する信者は、一生に一度はメッカに巡礼することも決められています。メッカを巡礼したムスリムのほとんどがメディナも訪れます。

ハッジでもウムラでも、カーバ神殿の周りを7回左回りに回る「タワーフ」の儀礼を行う。男性はイフラームという白い布を体に巻いた服装で参加する。
そのため毎年の巡礼月には200万人の国内外のムスリムがメッカを訪れます。年間では600万人の巡礼者が聖地を訪れています。
イスラムとは?
西暦7世紀にアラビア半島のメッカにくらすムハンマドという男が、神から啓示をうけたことで誕生した宗教。その教えは「この世の終わりの日に人びとは神の前で審判を受け、良い行いをした人は天国へ、悪い行いをした人は地獄へ行く」というもの。良い行いをするために、日常生活に関する様々なことが決められている。1日5回の礼拝もその1つ。コーランとは?
イスラム教の聖典で、神様の言葉を集めたもの。天国や地獄のこと、最後の審判のこと、人間への命令などが書かれている。その言葉を預かって伝えたのが預言者ムハンマドで、イスラム教の創始者とされる。
首都リヤド*石油の富による近代化

首都リヤド。石油がもたらした富のおかげで、ゆったりとした広い道路と、近代的な鉄とガラスでできたビルが大半を占める。町の中心を通るオライヤ通り沿いには、キングダムタワー、ファイサリーやタワーのような近代的なビルが建ち、それぞれのビルには一流ホテルやショッピングモールが併設されている。
サウジアラビアは石油の埋蔵量、産出量ともに世界でもトップクラスの産油国で、国の収入の約80%が石油にかかわるものです。
1930年代後半に石油が発見されて以来、石油収入の増加により近代化が進みました。都市の建設ラッシュが始まり、都市の中心部から砂漠に至るまで、高速で車が走ることができる舗装道路が張りめぐらされました。現在サウジアラビアの人口の80%以上が都市に暮らしています。

サウジアラビア第2の都市ジェッダ。紅海に面した町で、商業の中心地となっている。聖地メッカを目指して外国から来る巡礼者の9割が、ジェッダからサウジアラビアに入国する。
伝統と近代の共存

リヤド北部にあるシャクラの旧市街。家のてっぺんの白い形は、雨を防ぐためのもの。壁全体を白く塗らないのは、茶色と白のデザインが美しいから。
国土のほとんどが砂漠であるサウジアラビアでは、伝統的に砂漠の砂を用いた日干しレンガの家がつくられてきました。日干しレンガの弱点である雨の心配がなく、暑くて乾燥した気候がレンガをかわかすのに適していたからです。

砂漠の伝統的な住居は窓は小さくもうける。強い日差しや砂嵐による砂の舞い込みを防ぐため。
日干しレンガの家は、外壁や屋根を分厚くします。こうして外側の熱はゆっくりと内側に伝わり、気温が下がる夜に放出されます。

日干しレンガは泥にわらをまぜてつくられる。

リジャール・アルマア。近年、観光地として脚光をあびている。
山岳部では伝統的に、石を用いた塔のように背の高い住居をつくってきました(上の写真)。部族間の争いが激しい地域だったため、住まいが監視塔の役割を担っていたからです。家族が増えるたびに、新しい階を追加していました。
サウジアラビアでは多くの人が都市のコンクリートの家にくらすようになりましたが、最近では伝統建築が見直されつつあります。
イスラムにそった暮らし

ジェッダの夜の街。中央に見えるのがモスクのミナレット。マイクから、礼拝の時間を知らせるアザーンが1日5回流される。
2大聖地のあるサウジアラビアでは、人々はイスラムの教えを大切にまもって暮らしています。イスラムはよりよく生きるための教えで、日常生活でやるべきことが決められています。1日5回の礼拝もその1つです。
町中にはいたるところにモスクがあります。礼拝の時刻が近づくと、モスクからアザーン(礼拝の時間を知らせる呼びかけ)が流されます。礼拝の時間には商店も営業を一時中断します。

海岸沿いで礼拝する人たち。礼拝はモスク以外の場所でも、メッカの方角がわかり、清潔であれば、どこでも行うことができる。
礼拝の時は神様をたたえて感謝をします。1日5回の礼拝は、イスラム教徒にとって喜びで、神様に生かされているという感謝の気持ちを感じ、心穏やかに暮らすことができます。
<リヤドでの礼拝時間の目安> 夏季 冬季
礼拝時間 暁月の礼拝(ファジュル)3:30~ 5:00~
正午の礼拝(ズフル) 12:00~ 11:35~
午後の礼拝(アスル) 15:00~ 14:30~
日没の礼拝(マグリブ) 18:40~ 17:00~
夜の礼拝(イシャー) 20:00~ 18:30~
男女の距離

ファーストフード店のカウンターは男女で分かれている。
イスラムは慎みを大切にする宗教のため、男女の間に適度な距離をとることを理想とします。人間を弱いものと認め、男女が必要以上に近い場所にいると、誘惑に惑わされやすいとの考えからです。
公共の場では男女は別の席にいることが決められ、レストランには男性だけの部屋と、女性や子供も入れる家族用の部屋が分けられています。
家庭も男女別のつくりになっています。玄関や応接間も男女別。そして男性用の玄関は男性用の応接間に、女性用の玄関は女性の応接間に通じています。つまり玄関から応接間まで、いっさい異性と顔を合わせなくてすむようになっているのです。
夫婦で家庭を訪問すると、夫は男性用の応接間で主人とくつろぎ、妻は女性の応接間で家の奥様とおしゃべりします。
男女の服装

サウジアラビア男女の服装。女性はアバヤとニカブ。男性はトーブ(ソーブ)というくるぶしまでの長さのワンピースを着用。
イスラムでは慎みを大切にするため、服装も肌を露出しないものが基本です。
・女性=外ではアバヤという黒いコートを着て、ニカブを着けるのが一般的です。家でくつろぐ時はロングドレス姿です。
・男性=「トーブ(ソーブ)」というくるぶしまでの長さのワンピースを着用。頭には千鳥格子のスカーフをかぶることが多く、この名前は「シュマッグ」です。
*トーブ、カンドゥーラ、ディスターシャ、アラブ男性の民族衣装とイスラム教男性の服装ルール
家庭料理
主食はパン
主食はパンです。家庭で手作りして食べることが多いです。
国民食*カブサ

サウジアラビアの家庭でいただいた昼食のカブサ。サウジ人は毎日のようにカブサを食べる。
サウジアラビアの定番料理といえば「カブサ」。ほぼ毎日カブサを食べる家庭もあります。
サウジ風野菜のグリル
野菜をオーブンで焼いたものです。
朝ごはん①ムサビーブ
朝ごはんにムサビーブというパンケーキを食べることもあります。材料は全粒粉と粉ミルク、膨らし粉、塩です。多めの水でゆるゆるな状態にして焼きます。
お菓子*クナーファ
クナーファはアラブ世界でポピュラーなお菓子。もちろんサウジの家庭でも作ります。
飲み物*コーヒー

手前がコーヒー。その上はナッツとデーツ。
家庭での飲み物はコーヒーが一般的です。お客様も必ずデーツ(ナツメヤシの実)とアラビックコーヒーでもてなします。
コーヒーは薄い黄緑色です。軽くいったコーヒー豆を叩いて砕いたものに、香料のカルダモンを入れてわかしたもの。砂糖は入れずに飲みます。味は普通のコーヒーのような苦味はなく、さっぱりしています。
おちょこのような大きさの陶製コーヒーカップに注がれます。紅茶も飲みますが、これには砂糖をたっぷり入れます。お酒は、イスラムの国なので基本的に飲めません。
交通*高速鉄道やバス・タクシー

ハラマイン高速鉄道のホーム。聖地メッカ―メディナ間450kmを2時間20分で結ぶ。途中にジェッダ、ジェッダ・キングアブドゥルアジーズ国際空港、新開発地域であるキング・アブドゥラ経済都市の3駅がある。
巡礼者たちの利便性をはかるため、2018年10月にメッカとジェッダ国際空港、メディナ間を高速でむすぶハラマイン高速鉄道が開通しました。

車両はスペインの製で最高時速は300km。
公共の交通機関はSTAPOという国営のバス会社があります。ただ本数は多くありません。

STAPOのバス。
サウジアラビアで最も理想的な交通手段はレンタカーです。
娯楽*ピクニックやショッピングモール

リヤドのワディ・ハーニファでピクニックを楽しむ家族。
サウジアラビアの休日は金曜日と土曜日で、週末の木・金曜日は親戚の家に集まって食事したり、ショッピングモールやレストランに出かけたり、郊外の砂漠や海岸でピクニックを楽しんだりします。

リヤドの動物マーケット。ペットとして犬や鳥を飼うことが人気がある。
長期の休暇に余裕があれば、避暑地で人気のタイフの山やアシール地方、海外へ旅行に出かける人もいます。
物価

サウジで庶民的な食堂といえばインド料理となります。ミールスという定食で300~500円。
他の湾岸諸国などに比べて安いです。ホテルは都市部では、ベーシックなホテルで4千円くらい〜あります。「ベーシック」とは、清潔でセキュリティがしっかりしていて、女性1人で泊まっても問題ないということです。もちろんこれ以上豪華なホテルもあります。外食は庶民的な食堂で300~500リアル、レストランで千円くらいです。
治安と女性一人旅の注意
治安は総じて良く、女性一人旅も問題ありません。1人でもホテルに泊まれます。ただ夜間の人通りが少ない場所の1人歩きは避けるべきです。
また貧富の差が激しく、貧困層が暮らす地域もあり、そういった場所へは女性1人で行かない方が良いでしょう。
また村落部では女性は一人歩きに気を使った方が良いです。地方の村でホームステイしていたとき、1人で歩いていると時々声をかけられました。「どうしたんだ?なぜこんな所で1人で歩いてるんだ?」と。それくらい女性(しかも外国人)の一人歩きは珍しいのです。
年中行事と祝日

サウジアラビア・ジェッダの旧市街。ラマダン中の夜は町がライトアップされる。
サウジアラビアでは、ふだんの生活や仕事では西暦が使われていますが、宗教上の祝祭日はヒジュラ暦というイスラム暦で決められています。これは月の満ち欠けをもとにした太陰暦なので、祭りの日は毎年変わります。
写真撮影
遺跡や観光地の写真は大丈夫。人物も風景の中に小さく写り込むくらいは問題ありません。政府関係の建物はNGです。知らずに写りこんでしまう場合もあるので要注意です。
女性の写真は許可を撮ってから撮影した方が良いです。
ATM
アブハーの銀行のATMで現金を引き出そうとしたところ、カードが飲み込まれてしまいました。銀行の営業時間外だったため、翌日銀行へ行って返してもらいました。混んでいたため30分ほど待たされました。
こういうケースもあるので、ATMの使用は営業時間内に利用した方が良いです。他の町に移動する直前などは避けた方が良いでしょう。