「国際協力」女ひとり、砂漠の荒野で生きる

「国際協力:女ひとり、砂漠の荒野で生きる 「国際協力」女ひとり、砂漠の荒野で生きる(2)

「国際協力」 2005年4月号

(本文)

エジプトの東方砂漠に暮らす遊牧民女性サイーダ(56)は、紅海沿いの町ハルガダから車で2時間ほど行った砂漠で、移動生活を送っている。飼っているのは、ラクダ7頭とヒツジやヤギを数頭。夫は数年前に足を痛め、砂漠の中の定住地で暮らしている。ハルガダの町などに住む親戚達は皆、サイーダに一緒に暮らそうとすすめるが、彼女は砂漠での生活に固守する。「砂漠では、どこに行って何をしようと自分の勝手。でも町には人や車がいっぱいで、歩き回ることもできない。飛んでいる鳥をながめることもできない」
 砂漠で生まれ、いつも動物を連れて移動する生活をしてきた。「だから家なんかなかったよ」。7、8歳からヒツジをつれてひとりで遊牧に出ていた。もし、よからぬ考えを持った男が近づいてきたら、どうしたのかと聞くと、「“何か用?用がないならさっさと行っておくれ”って言えば、それまでさ」とケロッとして言う。
 毎日の食事はパンとトマトなど少しの野菜だけだ。「町の人間のように、食べたいだけ食べて、家の中でじっとしてばかりいると、ブクブク太って足腰が弱ってしまうよ。それに妊娠中にたくさん食べると、お腹の子どもが太ってしまって難産になるんだ。でも私はいつも少ししか食べないから、子どもは皆、スルッと産まれてしまって、とても楽だった」
 砂漠の暮らしを心の底から楽しんでいるサイーダは、きっと体が動かなくなるまで遊牧生活を続けることだろう。

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