ヤズドの甘味名物と女性タクシー運転手*『イランの家めし、いただきます!』④
『イランの家めし、いただきます!』③イラン家庭料理ナスのトマト煮&ポテトのおこげ の続きです。
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旧市街にある古い建物バードギール。これは暑く乾燥した地域において、自然の風を利用して建物内部を冷却するための通風塔(換気塔)。
ランチのあと昼寝するというアザデたちを残して、私はヤズド観光に出かけた。向かったのは町のヘソ「べへシティ広場」。そこを南北に貫いて伸びるメインストリートの「イマーム・ホメイニー通り」をぶらぶらする。
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ヤズド中心部にあるべへシティ広場。
初夏のような気候だった。通りに面した店を冷やかしながら歩く。コピー屋、雑貨屋、ケータイショップ、金物屋、八百屋などが並んでいる。両替屋もある。
歩いているのは意外にチャドル姿の女性が多い。「意外に」というのは、イランの都市部はジーパン姿の女性も多いからだ。特に若い女性はそうである。チャドルは一枚布をぐるりと体全体に巻いたもので、手で布をつかんでいないとずり落ちてしまう。そこでチャドルの女性は皆あごの下で布をつかんでいる。始終片方の手がふさがっているのは不便そうだが、慣れればそうでもないのかもしれない。チャドル姿の女性が多いからか、人々の歩く速度もテヘランなどよりゆったりと感じられる。
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チャドルを売る店。
同じ通りに数軒のお菓子屋が並んでいる。売られているのはどこも一緒だ。店頭のガラスケースにクッキー、ケーキなど並んでいる。同じような物を売る店が並んでいて商売になるのだろうかと思うが、イラン人は超がつくほどの甘いもの好きだから、ちゃんと成り立っているのだろう。
シュークリームを見かけたので、買ってみた。クリームの甘さは日本のよりひかえめ、外側のシューはやや固く、クッキーみたいだ。
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ヤズドのお菓子屋。シュークリームやケーキなどが売られている。
しばらく歩くと、ヤズドの名物甘味を発見。「ファルデ」という寒天だ。しらたき状の白い寒天に甘いシロップをかけて食べるもの。店の中でチャドル姿の女性たちが食べていたので、入ってみた。甘いもの好きに女性が多いのは世界共通か。
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ヤズドの名物甘味「ファルデ」という寒天を食べる女性たち。女性が甘い物好きというのは、万国共通?
プラスチックのお椀に砕いた氷、シロップ、寒天、水を入れ、よくかきまぜて食べる。このシロップがとにかく甘い。寒天だけすくって食べたいが、渡されたのはスプーンで、甘いシロップも一緒にすくってしまう。結局甘すぎて全部は食べられなかった。
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イマームザーデ・ファーゼルの中。イマームザーデとは、イマーム(宗教指導者)やその子孫を祀る廟。
さらに歩くと「イマームザーデ・ファーゼル」があった。イマームザーデとは、イマーム(宗教指導者)やその子孫を祀る廟のことだ。
入り口でチャドルを着せられる。白い生地に小さな花柄模様。チャドルは黒ばかりではないのだ。
中は男女の空間に分けられている。内部はきらびやかな総鏡張りだった。イマームザーデの内部はなぜか皆そうである。
中央の棺の周りで、何をすることもなく、ただたたずむ女性がたくさんいる。棺に顔を近づけ、5分間ずっと身動きしないジーパン姿の女子学生の姿もあった。おしゃべりに興じる若い女性たち、横になっている人、数珠のようなものを手に持ち、ずーっと何かぶつぶつつぶやいている人もいる。
1人の女性が豆を配って回っている。女子の2人連れがサンドイッチを広げて食べている。モスクや聖者病の中で物を食べる人はけっこう多いのだ。ここはゴロンと横になろうとものを食べようと、女だけなのですごく気楽だ。
さて、ここまでは新市街。ヤズド市内の観光のハイライトは、なんといっても旧市街である。そこは細い路地が複雑にいりくんだ、まさに迷宮だ。
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ヤズドの旧市街にあるマスジド・ジャーメ(金曜モスク)。
迷いながらマスジド・ジャーメ(金曜モスク)にたどり着いた。ヤズドの中心的なモスクだ。このミナレット(礼拝の呼びかけのための尖塔)はイランで最も高いという。
モスクの中庭は通り道にもなっていて、チャドル姿の女性たちが途切れることなく歩いていく。
帰りは女性タクシー運転手の車に乗った。
イランの町中には流しのタクシーもあるが、近所の店などに頼んでタクシー会社に電話してもらうこともできるし、その方が安心だ。イマーム・ホメイニー通り沿いの一軒の商店に「タクシーを呼んでくれ」と頼むと、向かいにあるタクシー会社の事務所を紹介された。
中で待機しているのは、ほとんどが女性ドライバーだった。この国には女性タクシー運転手が多い。首都テヘランだけでも約500人いるそうだ。男女隔離が徹底しているので、見知らぬ男性の車に乗りたくないという女性も多いのだろう。
「さあ、乗って」
小太りの女性ドライバーが私を車に促した。
アザデの家の住所が書かれた紙をちらりと見ると、すぐに車をスタートさせた。
本当に着けるのかな?
「子どもはいるの?」
いきなり彼女が聞いた。いないというと、「夫は?」。彼女にも同様のことを聞き返す。子供はいないそうだ。結婚しているのかときくと、「別れた」。なぜかと聞くと、英語でうまく説明できないらしく、しばし考えてから照れ笑い。それでも「離婚してせいせいしてるわ」と言いたいのだけは、十分に伝わってきた。
話しているうちにあっという間に家の近くまで来た。スピードを落として、道行く男をつかまえては場所を聞く。「ちょっとそこのあなた、〇〇ってどこ?」といった具合に3、4人の男に道を聞き、すぐにたどり着いた。なかなかお見事であった。
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イランの女性タクシー運転手(右)とその友人たち。
*ヤズドの観光情報
観光地としてのヤズドを際立たせているのが、ゾロアスターという宗教。紀元前からあるイランの宗教で、ヤズドには古くからゾロアスター教徒が多く暮らしている。イランは国民のほとんどがシーア派イスラム教徒だが、ヤズドは人口の約10パーセントがゾロアスター教徒だそう。その関連の観光名所が「沈黙の塔(「ダフネ」)」。死者を鳥に食べさせる「鳥葬」を行なっていた場所で、ヤズドの町のはずれにある。荒涼とした砂漠の中に高さ50メートルほどの丘があり、その頂上に丸いくぼみがある。死体を置いていた場所だ。ゾロアスター教は火、水、土を神聖なものとしていたため、それらを汚す火葬や土葬を嫌った。そのため鳥に食べさせる方法をとったそうだ。その後鳥葬は禁止されたため、今この塔は使われていない。
*『イランの家めし、いただきます!』ノンフィクション写真作家として活躍する著者が、アポなしでイランの一般家庭を泊まり歩いた20日間の旅行記。言葉が通じなくても快く迎え入れてくれる、おせっかいであたたかな人々との出会いと、それぞれの家でご馳走になった“家めし”をめぐる食紀行。食を通してイランのライフスタイルが見えてくる!







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