2023-08-19

湖上の家とくらし *インド・カシミール地方シュリーナガル

シュリーナガルの湖上の家  srinagar house

インドの北部カシミール地方にあるシュリーナガルで、湖の湖畔にある家と湖に浮かぶ家におじゃましました。

ダル湖畔のフローティング菜園の家

まずはダル湖の湖畔に暮らす家族の家です。湖畔を散歩していたら、通りかかった若者に「ぼくの家でお茶飲みましょう」と声をかけられました。

左が声をかけてくれた青年。この橋をわたった先に彼の家がありました。

すごい!外国人を見かけた→家にお茶に呼ぶ。どうしてこういう発想になるのでしょう。私など日本で外国人を見かけても、素通りしてしまいます。

2部屋だけの小さな家

橋を渡ってたどりついた家は、2部屋だけのかわいらしい家でした。家は彼とお父さんの2人で建てたそうです。

一方で食べて、一方で寝る。とてもシンプル。でもなぜか全く狭さを感じません。

お母さんがお茶をいれてくれました。カシミール地方で飲まれている、カルダモンなどのスパイスが入った「カワ」というお茶です。

私に声をかけた青年がどこかからお菓子を調達してくれました。そんなに気を使わなくていいのに。

家の近所に店などないので、メインの通りまで歩いて買ってきてくれたのでしょう。頭が下がります。

家には友人や隣人がいて、とてもにぎやか。そのうち近所の女性までもがあがりこんできて、ニヤニヤしながら私を眺めています。外国人が珍しいのでしょうか。動物園の猿になった気分。

隣人とはいえ、女性はスカーフはしていても顔を隠さずによその男性の家に来るのですから、ここはそれほどイスラムの戒律が厳しくないのかもしれませんね。ちなみに家族はイスラムのシーア派です。

チャパティは電気コンロで

お茶をいただいた後、キッチンを拝見させていただきます。食器はすべてステンレス。インドの家庭では、食器はステンレスが多い。軽くて丈夫だからでしょう。

チャパーティーは流しの下の電気コンロで焼きます。その横にある圧力鍋ではダル(豆カレー)を料理しています。

圧力鍋はインドの家庭で本当によく活躍しています。インド製です。

チャパティの表面にはマスタードオイルをさらっと塗ります。写真の左にあるのがマスタードオイルの缶です。

フローティング菜園


彼が近所の湖を船で案内してくれました。湖畔の家はほとんどが小さなボートを所有しています。


周辺の他の家と同様、この家でもフローティング菜園を持っています。

ただこの辺りの菜園はフローティングといっても浮かんでいるのではなく、湖の中に盛り土をして陸をつくり、その上を耕作地にしているものが多いようです。作っているのはきゅうり、豆、かぼちゃ、ほうれんそうなどだそう。

その後私が「ハズラトバルモスクに行きたい」というと、彼がバイクでスモ(乗合カブ)が拾えるところまで送ってくれました。「30ルピー(運賃)持っていますか?」「なければ私が払いますよ」と。本当にどこまで親切なのでしょうか。

ダル湖に浮かぶ家

シュリーナガルの家 インド カシミール地方

次は湖の上に暮らす家族の家です。

家の前を通りかかったところ、中から「カシミールチャイ飲みませんか?」と奥さんが声をかけてくれました。

またしても、どうしてこういう発想になるのか。突然見かけたよそ者を家に招いて不安ではないのでしょうか。

そして私も、この素敵なお誘いを断るという発想はありません。

通されたのはキッチン。キッチンの壁には天井まで食器がきれいに並べられていました。反対側の壁にもガラスのグラスが同様に礼儀正しく並んでいます。

こういう食器を綺麗に並べる習慣は、ラダック地方などインド北部ではごく一般的で、さらにパキスタンは北部だけでなく南部の方でも見られます。いったいどこが発祥なのでしょうか。

唯一言えるのは、それだけ「食べること」「食事に招くこと」を大切にしているのでしょう。

床に座った私に「砂糖のお茶がいい?塩入りがいい?」と奥さん。この地方の人はふだん「ナムキンチャイ」と呼ばれる塩とバター入りのチャイを飲みます。それ以外にインドではおなじみのチャイ(砂糖とミルクが入った甘いチャイ)も飲むようですが、あくまで主流はナムキンチャイ。もちろん私がリクエストしたのは「塩入り」です。

「塩が入っているけど、いいの?」とお母さん。ポットからナムキンチャイを注いでくれます。どの家も朝お茶をつくってポットに入れ、1日に何度もこのチャイを飲みます。

塩のチャイは最初は(えっ)という感じですが、慣れれば美味しいです。疲れた時に飲むと疲れが吹き飛びます。

キッチンには流しがありません。食器はどこで洗っているの?と聞いたら、外でだそうです。山からの水で。これには政府に毎月お金を払っているそうです。

ハウスボートの暮らし


家の裏はちょっとしたジャングルで、目の前は運河。ここでの暮らしはなかなか居心地よさそうです。

お父さんも話に加わります。お父さんは英語が話せました。家族は以前はハウスボートで暮らしていたそうです。今は船で暮らしている人は千家族ほどとのこと。

冬の生活はとても大変だったそうです。ここでは気温はマイナスになり湖の氷が凍ります。だから毎朝氷を叩き割って船を進ませるのです。氷の暑さは1cmくらいなので、叩き割るのはそう大変でもなかったそうですが。

「またシュリーナガルに来たら、ぜひこの家に寄ってくれ」とお父さん。

たとえ社交辞令からの一言であったとしても、ぜひそうさせていただきます。ありがとうございました!

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