2018-07-21

黒いアバヤの下にイスラム女性が着ているものは?

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バスで一緒になった女子大生たち。パキスタンに行けば誰でも映画スターになれることの見本。*パキスタン・ラルカナ

イスラム女性というと、ブルカアバヤを着て、全身黒づくめの姿を思い浮かべる方も多いかもしれません。

おしゃれと無縁で生きているのでしょうか?家の中でも全身黒づくめの格好?

いえいえ、そんなことはありません。イスラム女性の「黒いアバヤの下に隠された派手な世界」をご紹介します。

アバヤの下の派手な世界

女性たちは、外出から戻るとガウンをさっと脱ぎ捨てます。その下に着ているのは、ジーパンやTシャツ、ミニスカート。暑い時期はタンクトップに短パン姿です。時には胸の谷間が見えるカットソーなども。

私がお世話になったイランの家庭の奥様などは、お尻の真ん中にぱっかり穴が空いたホットパンツをはいていました。こういうのを見ることができるのは、ご主人様だけなのです。

イスラム女性にとって、おしゃれは家の中でするもの自分を愛し、大事にしてくれるだんな様だけに見せるものなのです。

マダムの方がおしゃれ

だから未婚の女子より既婚女性の方がおしゃれです。未婚女子はいくら頑張っておしゃれしても、自分が満足するだけです。その点マダムには美しさを見てくれる相手がいる。

クローゼットを開ければ、フリルがふんだんに施されたドレス、シースルーのネグリジェがずらりと並んでいます。

ベッドの中ではセクシーランジェリー

そのおしゃれに一段と熱が入るのが、夜です。夜こそ艶やかな服装で着飾り、自分を愛してくれるだんな様のために尽くすのです。

アラブ社会には「パジャマ」はありません。寝る時は「セクシーランジェリー」と決まっているからです。

それらの夜の服を、アラブのマダムたちは、仲良くなると嬉しそうに披露してくれるのです。

子供が4人いるエジプトのマダムは、「夜はしっかり化粧して、スリップみたいな丈が短くて色っぽい下着をつけて夫の帰りを待つの。昼間結わえていた髪を下ろして」。

そして奥の部屋からわざわざお気に入りのランジェリーを出してくるのです。スケスケのピンクのネグリジェ、シースルーの深紅のナイトガウン、ブルーの下着……。こういうのを買うのは、新婚の時だけに限りません。たとえ子どもが4人いようと同じなのです。

結婚後が「勝負」

こういったマダムたちの需要を満たすべく、アラブの町中には至るところにセクシー下着ショップがあります。

ショーウィンドーには、ピンクのシースルーのベビー・ドールやフリルレースがついた真っ赤なパンティ、ヒョウ柄ビキニや黒のガーターベルト四点セットなどが、堂々とつるされている。日本ならポルノの世界でしか見られないような品々。

その前でしっかり手を繋いで見入っていたりする熟年カップル。私は便宜上「セクシー下着」と書きましたが、現地の女性たちにとっては、ごく普通の下着です。

下着を選ぶのはふたりで

エジプト・カイロの中心部にある1軒のランジェリーショップで、若い女性店員に話を聞きました。

マダムたちは、たいていご主人と一緒に来店し、2人で相談して買っていくそうです。

ー普通のマダムは、こういう下着をどのくらい持ってるのか?と彼女にたずねると「最低でも50は持ってるわ」「じゃ、あなたもこういう格好するの?」と聞くと、彼女は「結婚したらね」うふふ‥‥。

結婚をひかえたアラブ女子たちは、未来の夫のためにセクシー下着をどっさり買いあさります。セクシー下着は結婚する女性のマストアイテムアラブ・イスラム圏では結婚後が「勝負」なのです。

たった一人のためにおしゃれする

日本では「釣った魚に餌をやらない」の言葉のごとく、結婚後まもなくすると、次第にお洒落とは無縁になっていきます(私でもそうですが)。

イスラム女性はその反対。化粧も香水も家の中だけです。

ある友人のマダムは「赤い口紅を一本だけ持っているわ。夜、夫と一緒の時だけつけるの。夜だったら誰も訪ねて来ないし、子どもはみんな寝てるから」

日本は不特定多数に向けた「分散型」おしゃれ。アラブ・イスラム圏の女性のおしゃれは、愛する夫だけに向けた「一極集中型」のおしゃれ。どちらが良いかは、一概には言えません。

イスラム女性には、外で着飾る自由はあまりありません。その点では不自由です。着飾るエネルギーと楽しみを愛するたった1人の人のためにとっておき、夫のためだけにおしゃれをする。不特定多数の男性のためでなく。

妻は宝石

オマーンを旅行中、山中でとある家族と出会いました。ご主人は30歳という若さで、6人のお子さんがいます。

家族の写真を撮ろうとしたら、ご主人がさっと奥さんの前に立ちはだかりました。

「彼女の写真はダメ。女性は宝石だからね

こういう奥さんへの執着・嫉妬心の強さは、自分のためだけに着飾る妻の愛情への裏返し、かもしれません。

イスラム圏では見合い結婚が多く、結婚までろくに会ったこともない夫婦もいます。でも結婚後は、なぜかラブラブ。

イスラム式「一極集中」のおしゃれは、「分散型」よりリターンが大きそうです。

【参考図書】

【写真集】「イスラーム ヴェールの向こう」

20年間の取材によるイスラム女性たちのリアルな日常を紹介。モロッコ、チュニジア、エジプト、イラン、パキスタン、モルディブ‥‥。歌あり踊りありデートあり。「抑圧」などメディアによって作られたイメージと違う、生き生きした女性たちの実像を紹介します。

イスラム流幸せな生き方
中学生でもわかるイスラム入門書。世界でなぜイスラム教徒が増え続けているか?がわかります。

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