2024-02-05

オアシスの暮らし*時計はもたず、自分の年は知らない

エジプトのダフラ・オアシス Dakhla Oasis

エジプトのナイル川の西にある西方砂漠。この砂漠にオアシスの村々が点在しています。そのうち最も美しいと言われるのがダハラ・オアシス。首都カイロからバスで11時間あまりかかります。

ダハラ・オアシスには16の村々が点在しています。その村々は中世の時代にできた旧市街と、近年にできた新市街から成っています。

エジプトのオアシス

ヤシのカゴづくり

エジプトのダフラ・オアシス Dakhla Oasis

オアシスのおもな産業は、ナツメヤシやオリーブ、果物、小麦など。またヤシの葉で編んだカゴや壺づくりの産地としても有名です。

車が通らず、静かな旧市街の昼下がり、 家々の前では女性たちがカゴ作りに精を出しています。たいていは近所同士集まっておしゃべりをしたりお茶を飲んだりしながら、のんびりと手を動かします。

エジプトのダフラ・オアシス Dakhla Oasis

こんな帽子、1つ欲しいな。

土の家はあたたかい

旧市街をふらふら散歩していると、一人のおばあさんに会いました。名前はファトマさん。ファトマさんは1人暮らし。

とても味のあるファトマさんの家。写真では見えないけれど、左上には飛行機の絵が描かれています。メッカ巡礼した時の記念です。エジプトではメッカ巡礼した人の家には、記念に絵を描くのです。エジプト全体で見られる習慣。

ファトマさんは毎朝、家全体をきれいに掃除します。そしてアヒルとニワトリのえさやり。あとは友人の家を訪ねたり、友人がたずねてきたりします。外出のときは鍵はかけません。「ここの人は皆、良い人だからね」。

新市街にもコンクリートの家があって、息子や孫たちはそこに暮らしているそうです。でもファトマさんは一緒に住もうという息子さんの誘いを断っています。

土できた古い家は夏涼しく冬暖かく、とても快適なのだそう。「新しい家は、夏はエアコンがないと過ごせないし、冬は寒くてしもやけができてしまう」。

エジプトの農村部の村の多くは、土からつくった日干しレンガをできています。このような家の中は、夏は涼しく、冬はあたたか。日干しレンガはあたたまりにくく、さめにくい性質があるのです。

時計を持ったことはありません。モスクから流れるアザーン(礼拝への呼びかけ)で時刻がわかるからです。

「自分の年は知らないよ」。生まれた頃、出生届はありませんでした。「べつに60歳 でも70歳でもいいじゃないか。私の年は、アッラー(神様)だけが知っているんだ」と笑います。

昼食は皆で

エジプトのダフラ・オアシス Dakhla Oasis

近所に住むアマルさんも古い土の家に住んでいます。彼女には5人の息子、2人の娘がいて、みんな結婚して外に家を建てて暮らしています。はなれて暮らしていても、毎日のお昼ごはんはアマルさんの家に集まって食べます。

食べ終わると、みんなで昼寝。オアシスでは夏の日中は45℃近くになります。幸い土壁でできたこの家は、冷房がなくともひんやりとすずしい。

夕暮れ時が近づくまで昼寝をし、その後起きて午後の紅茶。ひとしきりおしゃべをしたら、各自の家に帰っていきます。

「昼間ひとつの家に集まって暮らすと家事も分担できるし、子育ても助け合えるし、すごく助かるわ」と息子さんの奥さん。

伝統的な暮らしは、家族のつながりの温かみがあるとともに、女性にやさしい暮らしでもあるのです。

水は冷蔵庫で冷やさない

アマルさんの家では、たくさんの野菜、小麦粉や米も栽培しています。ほとんど自給自足です。朝、畑でとった野菜を、その日のうちに料理するので、冷蔵庫はほとんど使いません。

エジプトのダフラ・オアシス Dakhla Oasis

水は泉で汲んでくる。水道もありますが、泉の水の方がおいしいそう。「タビアイ(自然な)だからね」とアマルさん。

水は素焼きの壺に入れて、風通しの良い場所においておきます。壺の表面をぬらしておくと、気化熱で中の水が冷えるのです。真夏でも水を冷蔵庫で冷やすことはしません。「冷えすぎると、せっかくの水がおいしくないから」。

壺の水をいただいてみましたが、ほどよくひんやりしていて、ちょうどよい飲みごこち。

自分で育てた動物の味

egypt-oasis エジプト・ダフラオアシス ニワトリ

ニワトリは小さいのを買って、自分の家で育てて食べます。ここでも「その方がタビアイ(自然な)だから」とアマルさん。

「鳥や動物も、自分で作ったり育てたものが一番。買ってきたものは、どんなえさを与えているかわからない」

でも育てているうちに愛着がわいてきて、その後でパクッと食べるなんて、できるのでしょうか?

ともかく自然の暮らしはおいしい暮らしですね。

太陽のパン

エジプトのオアシス パンを焼く女性

パンは自分の家の畑でとれた小麦粉で、週1回まとめて焼きます。材料は水と小麦粉と塩、少しのふくらし粉だけです。こねたらパン生地を日なたに干して発酵させます。日向なら30分~1時間で、日陰なら3~4時間で発酵します。

それを自宅のかまで焼きます。パンは直径は20センチほどの大きなもの。焼き上がったパンは、ずっしりと重い!

ジャムもバターも何もつけなくても美味しいし、食べ出したらとまらない。。。。

エジプトの太陽パン*エイシュ・シャムシ-Eish shamsi

変わりゆくオアシスの暮らし

エジプトの砂漠の中のオアシス

かつては村の皆が旧市街に暮らしていました。今は古い家を去って、新市街に家を建てて移り住む人が増えています。コンクリート造りのモダンな家に住みたい、また壁にひびが入るなど、家が古くなってきたことなどが理由です。

オアシスは砂漠の中なので雨はめったに降りませんが、降れば土の古い家はすぐに壊れてしまう。それにかつて古い家には、電気も水道もありませんでした。

古い家がなくなる前に、古い家に暮らす人がいなくなる前に、もっとたくさんの人に会いたいというのが私の願いです。私のオアシス通いは、まだまだ続きそうです。

エジプトはどんな国?*観光の魅力と女性一人旅

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