イスラムは戒律が厳しい宗教ですよね?豚肉はダメ、酒はダメだとか。
1日5回も礼拝しなきゃいけない。ラマダンは1ヶ月の断食。
こんなに厳しい決まりに縛られて、ムスリムたちは楽しいのでしょうか?
どうしてそんな決まりに従っているのでしょうか?
そんな疑問にわかりやすくお答えします。
「生活宗教」と言われるように、イスラムには日常生活における様々なルールがあります。
(それらはコーランや、ハディースから導き出されたシャリーアに明示されています。)
では、人々は厳しい戒律をいやいや守っているのでしょうか?
ルールに縛られ、窮屈な生活をしているのでしょうか?
イスラムの戒律は厳しいのか?
ルールには抜け道も
ルール(戒律)というと厳しそうなイメージがありますが、実はそうではありません。抜け道もあります。
たとえば豚肉。食べることを禁じられていますが、「他に食べるものがなければ、食べても良い」とされています。
豚と知らずに食べてしまった場合も許されます。豚骨ラーメンを、それと知らずに食べてしまった場合などです。
そもそも多くのムスリムは生まれた時から豚肉を食べたことがないので、食べられなくても苦になりません。
ラマダン月の断食も病人や老人、10歳以下の子供、妊婦など体力的に弱い人は免除されます。旅行者もです。
ただし老人や子供以外は、後で埋め合わせします。だから免除というよりは「猶予」に近いです。
酒も自分の体を守るものが酒以外にない場合、栄養源として飲んでも良いとされています。
このようにルールはゆるく、強制というより「努力目標」に近いのです。
「われは誰にも、その能力以上の重荷を負わせない。」(23:62)
悪い行いは良い行いで挽回
イスラムでは神が定めたルールを守ることで天国に行き、そうでなければ地獄へ行くとされています。
では悪いことをしてしまったら、即地獄行きでしょうか?
その場合でも「良い行い」で挽回すれば良いとされます。
お酒を飲んでしまったら、そのぶん真面目に礼拝すればいい。
礼拝をさぼってしまったら、貧しい人に施しをすればよい‥‥。
コーランには「~してしまったら、~せよ(挽回せよ)」という記述が多数あります。
「断食することができるのにしなかった場合は、貧者に食物を施すことで償いをすること」(2:179)
また善行によっては、それまでの悪行がすべて帳消しになることもあります。
「(施しを)そっと隠して貧乏人にくれてやるならもっと自分の身のためになり、その功徳で(前に犯した)悪事まですっかり帳消しになる」(2:273)
つまり、誰もが天国へ行けるようなシステムになっているのです。
「だからイスラムって、ぜんぜん厳しくないの」と、結婚を機に入信した日本女性は言います。
こういった「ゆるさ」が、世界中でムスリムが増え続ける理由の1つでもあるでしょう。
(参考:世界でイスラム教徒が増える理由)
イスラムの決まりは合理性がある
ルールには、守るだけの合理的な理由があります。
●<礼拝>
←決まった時間に礼拝することで、規則正しい生活ができる。立ったり座ったりしながら神に感謝することで、心を整え、体のコンディションも整えることができる。礼拝前に身を清めるから、衛生的。
●<ラマダン月の断食>
←断食することで肉体の状態を健康にし、肉体のクリーニングを行うことができる。食欲を抑えることで、自己抑制と精神力が鍛えられる。「飢え」を知ることで、貧しい人に思いをはせることができる。
(参考:イスラム教のラマダンとは?【お祭りです】)
●<喜捨>
←貧しい人を救うことができる。
(参考:ザカートとサダカ<イスラム教の喜捨>)
●<巡礼>
←一生に一度広い世界を見て、イスラム教徒同士の団結心を強める。
● <豚肉を食べない>
←冷蔵技術が無い時代、豚肉は寄生虫が発生しやすく危なかった。
(参考:イスラム教徒が豚を食べない理由とは?)
●<決まった作法で殺した動物以外は禁止>
←食べ物に対する痛みの気持ちを表し、神に願う。頸動脈を切って殺すのが、動物にとって最も苦痛が少ないと言われている。
(参考:ハラール食品とイスラム教の食事ルール)
●<飲酒禁止>
←酔って他人に迷惑をかけたり、アルコール依存症になったり、トラブルに巻き込まれる可能性があるから。
●<婚外交渉の禁止>
←女性の望まない妊娠などを防ぐため。
●<肌の露出禁止>
←痴漢やレイプ、職場におけるセクハラの防止。
● <利子の禁止>
←利子で儲けるのは金持ちの搾取になるため。
戒律を守るのは楽しいことでもある
「貧しい人には分け与えるべきだ」「飲み過ぎてはいけない」など頭ではわかっていても、なかなか実行できません。
人間は弱いものです。
そこでイスラムでは、そういったルールを「神様の命令」としてしまったのです。
そして、これらのルールを守って善行に励めば、死後に天国へ行ける。
偉大な神アッラーが喜んでくださる。
そういうわけで、中には嫌々従っている人もいるかもしれませんが、大方の信者は喜んでルールに従っているのです。
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