オマーン ニズワ

イスラム

イスラムは女性に厳しい宗教?男性優位社会や地域の慣習との関係

アフガニスタンのタリバンが女子教育を禁じたり、サウジアラビアで女性が車を運転することを禁止したり。

はたまた女子割礼、名誉殺人など女性差別的な事件が、イスラムと関連づけられて報道されたり。

そのため「イスラムは女性差別の宗教」とイメージされる方も多いことでしょう。

これら女性差別的な事例はイスラムに起因するものなのでしょうか?

イスラムでは女性を嫌悪しているのか?

そんな疑問に答えます。

男性優位的な社会の反映

コーランは男女平等・人種差別の禁止を説いており、女性蔑視の宗教というわけではありません。

アフガニスタンやパキスタンなどの女性差別的な制度も、それらは男性優位社会に起因すると、現地に長く暮らす日本人は指摘します。

「イスラムの教が諸悪の根源というわけでもない。女性の地位向上のために実際に活動している女性たちや、学問的にこの問題を扱っている知識人たちのほとんどが首を横に振る。そして「宗教と因習は別のものです」と言い切るのである。」

(『女性の見えない国 パキスタン頼り』)

「アフガニスタンでは長く封建制が続いてきた。地主や保守的なムラー(イスラム僧)が力を持ち、人々は教育を受けることもなかった。
いまだに農村では、女性は男性の付属物とみなす人や、「女性は結婚して家に入るのだから、教育はいらない」と考える人も多い。
マスードは、「女性差別があると思うかもしれないが、それはイスラムが言っていることではなく、封建的慣習がそうさせているのです。」という。
彼は高すぎる結納金を下げ、コーランに保証された男女の教育の機会均等を進めている。」

(『フォトジャーナリストの目』)

女性を貶めている因習であっても、為政者が「イスラムではそう教えている」といえば信者は納得しやすいもの。

またタリバンが女性の教育を禁止したのは、国内が内戦状態が続き、女性の教育政策への優先順位が低かったことも背景にあります。

タリバン自体があまりに孤立し閉鎖的性格を持っているため、社会に対する柔軟な対応ができなかったからだと指摘する研究者もいます。(「なぜイスラームと衝突するのか」)

男性に都合の良いコーラン解釈

コーラン解釈は長年、男性の手で行われれてきました。そのため歴史的に男性に都合よく解釈されてきた事実もあるようです。

『クルアーン』は頑ななまでにひたすら信徒間の平等を訴えており、男女間についても一切の差別を禁じていたからである。
けれども『クルアーン』の男女平等主義は歴史の中で徐々に浸食されていく。
伝統的なイスラーム法学が成立したアッバース朝期、『クルアーン』やその他の聖典は、女奴隷で溢れた巨大ハーレムに暮らす上流階級男子の思想的影響を受けて解釈されることになった
しかるにそこでは、女は売買可能なモノに過ぎず、男女平等の教えが尊重されるいわれなどなかったのである。
結果としてイスラーム法学は『クルアーン』の男女平等主義を棚上げし、一夫多妻や安易な離婚を戒める章句は個人の良心にのみ関わる問題として、法規定から排除していく。
以後、イスラーム法学者の多くは、女性を能力的にも劣る存在として見下すようになっていった。」

(『「イスラム原理主義」とは何か』)

そもそもコーランの解釈には幅があります。

イスラム研究の第一人者・井筒俊彦氏も「(コーランの)テクストは同じでも、その理解の仕方、解釈は人によって様々。どう読むかは各人の自由」(「イスラーム文化」)と書いています。

それゆえ、男性に都合よく解釈することもあり得るのです。

「サウジアラビアで女性が車を運転できないのは、コーランにそんなことが書かれているわけではなく、政治が都合よくコーランの字句を拡大解釈しているのだ。
本当のコーランは、史上初めて、女性に相続を認め、他宗教の尊重をうたう、多元主義を内包したものだ。」

(『コーランには本当は何が書かれているのか?』)

「コーランの原本はアラビア語であるし、それを翻訳、解釈していく宗教学者や法学者はほぼ男性である。
そしてこれを政治的に利用してきた国の指導者層も男達であり、何もりよ末端の農村で人々に絶大な影響力を持つムッラ(村の宗教指導者)の大半が、コーランを実際に読んだこともない文盲の男達である。
つまり彼らが「コーランの教え」として説教していることは、彼ら自身がコーランを読み、解釈したことではなく、
彼らが生まれ育ってきた男性優位社会で、歴史的に「社会規範・通念」とされてきたことに他ならない。

(『知られざる素顔のパキスタン』)

イスラム社会は男性優位の社会であり、19世紀までコーランハディースは男性に都合が良いように解釈されてきました。

20世紀に入り、ようやく女性がその解釈に参加するようになり、「新たな社会の中で解釈し直す必要がある」と主張されるようになってきました。

名誉殺人や割礼はイスラムとは無関係

また古くからの女性差別的な慣習が、イスラムの教えと混同されて続けられている事例もあります。女子割礼や名誉の殺人がそうです。

未婚の女性が男性と関係を持ったために、親族の男性から殺される名誉殺人。

パキスタン、ヨルダンなどイスラム圏でのことが話題にされがちですが、南ヨーロッパ地域、インド、エクアドル、ブラジルなどでも起こっています。

2005年にはヨルダン西岸都市ラマラで、キリスト教とのパレスチナ人がムスリム男性との結婚を望んだため、父親によって殺害されています。

名誉殺人は男尊女卑的な社会が生み出したもので、イスラムとは無関係。

にもかかわらず、家父長制の強い社会では、指導者にその知識がなかったり、部族の伝統の方を重んじるため、犠牲になる女性が出ることになります。(←「名誉殺人はイスラムと関係がある?パキスタンや中東だけの犯罪?

女子割礼も同様です。これもイスラムとは関係ありません。(←「「女子割礼」とは?イスラムの教えなのか?」)

しかし民衆の誰もが正しくイスラムを理解しているわけではなく、多くの人は「イスラムの義務」と信じているためです。

女性はむりやり結婚させられる?

パキスタンなどでは親が決めた相手と顔も見ずに結婚するケースもありますが、これは地域の慣習であり、宗教とは関係ありません。

イスラム世界では見合い結婚が少なくありませんが、結婚までに何度か会うのが普通。

婚約破棄もしばしば起こります(女性側からが多いです)。

女性の同意は、スンニ派ではイスラム法上の結婚の成立要件ではありませんが、社会慣習上は必須とされています。

 

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