イスラム教における女性と男女関係のルールをコーランをもとに解説します。

イスラム教の男女関係・男女平等

エジプトのカイロ中心部で、仲良く手をつないで歩くカップル。

イスラム教では女性についてどんなルールがありますか?

何か女性だからできないことは?

女性は男性に比べて差別されている?

女性の地位が低く、社会的に弱い立場?

そんな疑問にわかりやすくお答えします。

この記事を書いている著者は、イスラム入門書『イスラム流幸せな生き方』など多数の本を出版しています。
 
ここでは、イスラム教における男女関係、女性の扱い、男女平等か不平等か?などを、コーランをもとに解説します。

イスラム世界では原則としてあらゆることがコーランに従って動いているからです。

(参考:「コーランとは?日本人が知らない真実」

 

コーランにおける女性の地位

一般的にはイスラム以前の時代に比べて女性の地位を上げたと理解されています。

 ①人減らしの慣習だった女児殺しを禁じた。

中東では女の子がうまれたらすぐに生き埋めにするという悪習がありましたが、それが禁止されました。

 ②結婚において女性の権利を認めた。

  ・マフルを女性自身が得る権利を与えた

  ・結婚を所有関係から契約関係に変えた

  ・結婚後も女性が自分の所有物を管理し続ける権利を与えた

  ・旧姓を使うことができるようにした

  ・夫から生活費を受け取れるようにした

  ・夫が好き勝手に離婚できないようにした

(参考:【永久保存版】イスラム教の結婚ルールとは?

③女性に相続権を認める。(ただし男の半分:この理由は以下に。)

イスラム誕生以前の社会では、女性には全く相続権がありませんでした。

コーランの男女平等

コーランでは男女平等を定めています。

・「男も女もわけへだてはしない。もともと(男女は)お互い同士じゃ。」(3章195節)

・「男も自分の稼ぎから分け前をいただき、女も自分の稼ぎから分け前をいただく」(4章32節)

・「男であれ女であれ、信仰者で善行を行う者は、天国に入るであろう。そして彼らは、いかなる不正を蒙ることもない。」(4章124節)

・「男の信者と女の信者とは、お互い同士よい仲間。みな、善事を勧め、悪事を抑え、礼拝の務めは果たし、喜捨は出し、アッラーと使徒の言いつけはよく守る。こういう人たちにはアッラーもさぞお恵みを垂れ給うことであろう。アッラーは信徒の男にも女にも、せんせんと河川流れる楽園に永遠に住まわせてやろうと約束し給う。」(9章71~72節)

男女不平等または女性差別とされる規定は?

これも後で紹介します。

男女は違うもの

男女は平等だが「違う」もの。これがイスラム教の考え方です。

女性には生理・出産があるが、男性にはない。身長や体重など体のつくりも違います。

男女が生物学的に違うのは明らかです。

男女差別は「区別」

男女の違いから、コーランの規定にも男女の違いが生じます。

主に以下の3つです。

女性が免除されていること

女性は男性に義務づけられている様々なことが免除されています。

男性は家族の生活費を稼ぐ「義務」があるが、女性にはない。
 女性のお金はすべて好きなように使える。

②男性は毎週金曜の合同礼拝に参加する義務があるが、女性はない。

③女性は生理中、ラマダン月の断食と礼拝の義務を免除される。

③は女性の身体への思いやりです。

男性は一日も礼拝を休めず、金曜日は必ずモスクに行かねばならず、家族を扶養する義務があります。

一方で「月経血は不浄」という考えもあり、そのため月経中の女性はコーランに触れたりモスクに入るのは禁止されています。

これは女性が不浄だからではなく、「血液が不浄」とされるためです。

生理が終わればグスルという全身の浄めをし、もとの清浄な状態に戻ります。

男女の服装の違い

女性は男性より性的魅力があり、男性がその誘惑に弱いとされるため、女性が身体を隠す部分は男性より多くなっています。

これを「男女差別だ」と言う方もいるかもしれませんが、痴漢やレイプなど性犯罪の被害者はきまって女性です。その逆はありません。

男性が隠すのは、通常へそからひざまで。

女性は顔面と手をのぞく部分、です。

「外部にでている部分はしかたがないが、そのほかの美しいところは人に見せぬよう。胸には覆いをかぶせるよう」

(24章31節)

(→イスラム女性の服装ルールを完全版【Q&A】

また女性は金や絹を身につけるのを許されるが、男性は禁じられています。(ムスリムのハディース)

「貞淑さ」は男女両方の義務

ただし貞淑さが求められるのは男性もです。(24章30節)

男女の役割分担

男女の差異から「男は外で働き、女は内で働く」という役割分担が導き出されます。

身体的に強い男性が家族を養い、重い荷物を運ぶ。

これがイスラムの原則的な男女の役割分担です。

女性が働くことを禁止しているわけではありません。実際、都市部では多くの女性が働きに出て、家計にも貢献しています。

その収入を家に入れる義務は本来ありません。

エステに行ったり金を買ったり、自分のためだけに使える。

(参考:投資銀行最高経営責任者 <パキスタンの働く女性インタビュー(3)>

イスラム世界では男女隔離が原則なので、医師、教師などで働く女性も多数います。

社会進出しながらも、結婚も子育てもしながら社会の重要な地位についています。

トルコ、パキスタン、バングラデシュは、これまで女性の首相が出ています。

日本はまだ女性の首相はおらず、アメリカ大統領も女性は出ていません。

イスラムだから女性の社会進出を認めない、ということはないのです。

男女の役割分担の章句

男女の役割分担を示す章句は、こちらです。

「「アッラーはもともと男と(女)の間には優劣をおつけになったのだし、また(生活に必要な)金は男が出すのだから、この点で男の方が女の上に立つべきもの。

‥だから貞淑な女は(男にたいして)ひたすら従順に、‥反抗的になりそうな心配のある女はよく諭し、(それでも駄目なら)寝床に追いやって(それでも効かない場合は)打擲(ちょうちゃく)を加えるもよい。

(4章34節)

この章句は、女性差別ではないか?とよく引き合いに出されるものです。

「上に立つ」が男性優位ではないか?と。

これについて現代の研究者は、「男性の女性に対する社会経済的な責任に基づいている」と考えます。

この章句は伝統的に男性優位の意味にとる傾向があるが、現代では批判されている。

この章句そのものは、男女の機能分化(男性の役割としての防衛・戦闘、家族の扶養など)を前提としたもので、異性間の優劣として解釈する必要はない

(「岩波イスラーム辞典」)

★「貞淑な女は(男にたいして)ひたすら従順に

←もちろん間違ったことにまで従う必要はありません。

これはいわば夫婦円満のテクニックです。

お金を入れてくれる夫を立てることで、家庭内の物事がスムーズに進みます。

実際には家庭の中で妻、母の立場は非常に強いです。

子供の教育や結婚に関しては、母親が圧倒的に主導権を握っています。

★「打擲(ちょうちゃく)を加えるもよい

←これは「叩く」と訳されることもありますが、その意味は「あくまで訓戒であり、身体的苦痛を味わせることではない」(「聖クルアーン日亜対訳注解」)です。

遺産相続:女子は男性の半分

遺産相続分は、女子は男子の「2分の1」(4章11節)と決まっています。

これは上記のとおり、男性が家族を養うためです。

もし父親が亡くなったら息子が働いて姉妹や母親を、結婚したら妻子を養わなければなりません。

女性は働いても、給料はすべて自分のもの。

女性は相続分が少なくても、結果的に得をするようになっているそうです。

証言:女性の証言は男性の半分

「男が2人、証人として立ち会うこと。男2人でないときは、男1人に女2人。女のどちらか1人がもし間違ったりしたら、もう1人が注意してやれ」(2章282節)。

長い間、男性の研究者は、「女性の証言は男性の半分しかない」と解釈してきました。

これに対して現代の研究者は、「これは取引書類や契約書や訴訟などの事柄に関係する証言に特定されたもの」と主張しています。

コーランが下された時代、ほとんどの女性は商取引などにたずさわっていなかったからです。

一夫多妻は男尊女卑?

イスラム教では男性は4人まで妻が持てます。(4章2~7節)

これは未亡人と孤児たちの救済が目的です。

預言者ムハンマドの時代にイスラムを広める過程で各地で戦乱が続き、夫を亡くした妻が続出しました。

彼女たちと孤児たちの生活を救うために一夫多妻を許可したというのが通説です。

また複数の妻がいたら、妻たちを平等に扱うのが条件です。

イスラムでは家計の負担は男性の義務ですから、妻が4人いたら4家族養うことになります。

奥さんを複数持てるのは、かなりのお金持ちだけです。

実際には一夫多妻はそれほど多くはありません。

チュニジアとトルコは法律で一夫多妻を禁止しています。

魅力的で財力のある男性が2人、3人もの女性と結婚すれば、当然結婚できない男性がたくさん出てきます。

一夫多妻は女性蔑視のように思われるかもしれませんが、実際には男性には酷な制度です。

(参照:イスラム教の一夫多妻とは?女性たちはどう思っている?

「性差の上の平等」がイスラムの男女平等

以上のように、イスラムの男女平等は「性差を認めた上での平等」です。

男女は違っていて、それぞれに合った役割があるとします。

子を産むことは女性にしかできないから、継続的に働ける男性が大いに働き、家族を養うべき。

それを除けば、男女は平等です。

本来「平等」とは、様々な人間の違いを踏まえてこそ成り立つもの。

何もかも同じでは、本当の平等とは言えません。

1200年ほど前の仏教の教えで、こういうものがあるそうです。

「人間は1人1人違うから、フラットな平等は本当に正しいこととは言えない。それより1人1人の個性を大事にすべき」

イスラムの男女平等の考えも、これと変わりません。

人間は男女で違います。その違いを大事にした上での平等こそ、本当に人にやさしい平等だと言えます。

 

イスラム教の男女関係について知りたい方の参考になれば嬉しいです。

 

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