2022-03-26

イスラムの離婚*2回目と3回目の離婚は何が違う?

インドネシアの結婚式

インドネシアの結婚式で結婚契約書にサインをする花嫁。イスラムでは結婚は「契約」として扱われ、夫婦間で契約書を作成。結婚に際しての様々な条件を記載する。その中には離婚に際して夫から妻に払う金銭の額もある。

イスラムの離婚制度は複雑でユニークです。離婚の形態は国や階層によっても様々。ここではあくまで「一般論」をご紹介します。

コーランの離婚規定

コーランでは離婚について次のように定めています。

「離婚は2回(まで取り消し可能)です。(各離婚後は)適正な待遇で復縁するか、もしくは丁重に別れなさい。」あなた方(元夫)が彼女たちに与えたもの(婚資)を取り戻すことは合法ではありません」(2:229)

「もしかれが(3回目の)離婚(を申し渡)したならば、彼女が他の夫と結婚するまでは、これと再婚することはできない。だが、かれ(第2の夫)が彼女を離婚した後ならば、その場合両人は罪にはならない。再婚しても妨げない」(2:230)

2回目とか3回目とは何でしょう?

夫からの3回の宣言で離婚成立

イスラムでは離婚の権利は夫だけにあり、夫が妻に「お前を離婚する」と3回宣言すれば離婚が成立するとされます。しかし近年は、そうではないという解釈も生まれてきています。

たとえば上の最初の章句では、離婚を言い出させるのは夫だけとは明言されていません。実際には妻からも離婚を言い出すことができます。ただ離婚の「宣言」が、夫しかできないとされます。

つまり妻から離婚を言い出す場合、夫がそれに同意し、「お前を離婚する」と宣言することで、離婚が成立するということです。夫婦喧嘩で妻が「あなたなんて離婚よ!」と言っても、それは無効で、代わりに「あなた、今すぐ離婚だ!って言ってよ!」と言うそうです。

後払いのマフルで離婚抑止

こういう事情から、イスラム社会では夫に安易に離婚させないため、結婚の時「後払いのマフル」をかなり高く設定します。

いざ離婚の際、マフルが高すぎて夫が支払えないということも考えられますが、これは同義的にも法律的にも認められず、裁判となれば必ず夫が負けるそうです。

離婚の主な形態

夫と妻のどちらから離婚を言い出すかによって、離婚の形態が分かれます。
夫から言い出すのが①「タラーク」、妻から言い出すのが②「フルウ」です。

①「タラーク
最も一般的な離婚。夫が3回「離婚する」と宣言すれば成立夫は後払いのマフルを支払う必要があります。
(「タラーク」は少し複雑なので、後に詳しく説明します)

②「フルウ
妻が離婚を望み、夫が同意して「お前を離婚(フルウ)する」と宣言すれば成立。一般的に妻はマフルの一部または全部を夫に返します。

このように「離婚宣言」は基本的に夫しかできないことになっています。

「タラーク」離婚とは?

夫が3回離婚宣言することで成立する「タラーク」離婚。これがなかなか複雑です。詳しくご紹介します。

1・2回目の離婚宣言

1回、2回の離婚宣言は、復縁が可能です(上記2:229)。復縁するには、妻の「待婚期間(*イッダと言い、通常3ヶ月)」中に仲直りすれば良いのです。「イッダ」とは離婚された女性が3回の月経を見る期間のこと。この間に元の夫の子供を妊娠していないかを確認するためです。

離婚された女性はイッダの期間、他の男と再婚することはできません。 男はイッダ期間中も、彼女の生活費を支払う義務があります。また夫と死別した未亡人の場合、イッダは4ヶ月と10日です。

3ヶ月を過ぎて復縁したい場合は、新たに結婚契約とマフル(婚資)を整える必要があります

つまりまとめると、こういうことです。
・1回目・2回目の離婚は、3ヶ月以内ならタダでヨリを戻すことが可能。
・3ヶ月以降は、マフルを払えばヨリを戻すことが可能。

そして復縁したら結婚は持続しますが、「1回の離婚が成立した」ことになります。そして1回の離婚で復縁した夫婦は「離婚を1回した夫婦」、2回の離婚宣言で復縁した夫婦は「離婚を2回した夫婦」となります。

3回目の離婚宣言

3回目の離婚宣言の後も、3ヶ月以内なら復縁できます。3ヶ月を過ぎたら正式に離婚が成立。復縁したければ、あらたに結婚の手続きを踏まなければなりません。

その際は、妻が別の男性と正式に結婚し、床入り後に彼と離婚してからでないと復縁できません(上記2:230)。(こんなことは事実上不可能なので、この規定は「軽率な離婚宣言の戒め」と考えられます)。

つまり2回までは「取り消せる離婚」、3回目は「取り消せない離婚」です。3回というのは、夫が考え直すための猶予期間なのです。

夫だけに離婚の権利がありますが、実際には夫婦喧嘩などで怒りにまかせて「離婚だ!」と言ってしまい、冷静になって後悔する男性はたくさんいるようです。

夫の離婚宣言が有効となる条件

3度の離婚宣言が有効とされるには、次の条件があります。

・夫の意識がしっかりしていること。
・酒や麻薬に酔っていないこと
・激昂していないこと
・外部から圧力をかけられていないこと

夫が一度に「離婚だ!離婚だ!離婚だ!」と3回宣言した場合どうなるのか?
通常は3回ではなく1回とみなします。ただこれは学派によっても違い、パキスタンやインドでは3回と数えるのが主流の解釈だそうです。

夫が怒りに任せて「離婚だ!」と叫んだ場合、離婚は成立する?
夫は「怒りに我を忘れていた状態」であったため、多くの場合その離婚宣言は無効とされます。

夫の離婚宣言が「禁止」される期間

妻の生理中や出産直後の離婚は禁止です。このようなとき、夫は性的満足を得られないため、しばしば苛立ち、間違った判断を下しがち、だからだそうです。

また離婚の場合、妻が3回の月経を終了するまで(上記のイッダ期間)、扶養や住居を提供する義務があり、彼女を悪く言ったりすることも禁じられています。

妻からの離婚が認められる場合

妻からの離婚が認められるのは、イスラム法上、次のような場合です。

・妊娠させる能力がない。
・性的不能。
・妻を扶養するのを拒否。
・妻を見捨てた、失踪した。
・長期間投獄されている。
・妻を虐待したり冷遇した。
・不治の病や精神病にかかった。
・結婚契約を結ぶ際に、重要な情報を隠していたことが発覚した、だましていたなどが発覚した

以上のような理由がなく、それでも妻が離婚したい場合、マフルを返せば離婚することができます。

イスラム流幸せな生き方
中学生でもわかるイスラム入門書。なぜ世界中でイスラム教徒が増え続けているか?がわかります。

タグ:
関連記事
error: Content is protected !!