ウラマー&イマーム|違いや共通すること
イスラムにウラマーという人がいるそうですが、偉い人ですか?
どんな役目をしているんですか?
イマームとウラマーの違いは何ですか?
そんな疑問にわかりやすく答えます。
ウラマーとは?
ウラマーとはイスラム学者のこと。
具体的にはイスラム法学者、神学者、コーラン解釈の専門家、ハディース学者などです。
現在は宗教系の大学や学部を卒業している人が多いです。
他の宗教でいえば「聖職者」に近い存在。
ただしイスラム教には聖職者階級はないので、僧侶や神父、牧師などとは違います。
偉いか?といえば、イスラムの知識をたくさん持ってはいますが、身分的に偉いわけではありません。
ウラマーで一番多いのが法学者です。8割くらいを占めています。
だからウラマーといえば、一般的には「イスラム法学者」のことを指します。
シーア派の場合、ウラマーのことを「モッラー」といいます。
イマームとは?
スンニ派ではモスクの礼拝導師のことです。礼拝を先導したり、モスクの管理、金曜日の説教にあたります。
ウラマーがイマームを兼ねていることもあります。
シーア派では、ムハンマドの従兄弟で女婿であったアリーの直系子孫から選ばれる指導者のことです。
つまりトップに当たる人のこと。
イスラム革命の指導者だった故ホメイニ師も、イマームと呼ばれていました。
つまりイマームの意味するところは、スンニ派とシーア派で大きく違うのです。
ウラマーの役割
ウラマーとは一般的に「イスラム法学者」のことを指すと書きましたが、その役割を具体的に言うと?
「人々のよろず相談所」がイメージに近いでしょう。
人々が日常生活で判断に迷った時、ウラマーにたずねるのです。
「インターネットでエッチな画像を見ることはイスラム的に良いか悪いか?」などです。
自分の行いがイスラム的に正しいかどうか、イスラム教徒の人たちはいつも気にしています。
その答えはコーランやハディース(預言者ムハンマドの言行録)に書かれていますが、書かれていないこともある。
コーランやハディースがが書かれたのは7~8世紀です。
当然、現代はその時になかった状況も生まれています。
そういったとき判断に迷って、人々はウラマーに答えを求めるのです。
ウラマーはコーランやハディースを参照したり、過去の学者の意見を参考にしながらアドバイスをします。
「鼻の形が気に入らないけど、整形しても良いか?」
「主人が家にお金を入れてくれない。どうしたらいいでしょうか?」
「女の子がいるが、割礼した方がよいでしょうか?」
「私は妻も子供もいるが、最近職場の若い女性が気になってしまいます。私は悪いムスリムでしょうか?」
こんな質問が寄せられます。
いわば日本の新聞やラジオの人生相コーナーのよう。
ところで、ウラマーは「イスラム法学者」と書きましたが、つまり「イスラム法(シャリーア)」を扱う学者のことです。
イスラム法は、日本の法律よりかなり広範囲です。(参考:シャリーアとは?)
宗教のことだけでなく、結婚、相続、商売、取引、社会関係、衣服や挨拶の仕方など人間生活のほとんど全てを扱います。
もちろん今はどの国でも近代法が導入されていて、全ての領域でシャリーアを適用するわけではありません。
しかし結婚、離婚、遺産相続など私的な領域はシャリーアを適用します。その判断を下すのが、イスラム法学者です。
シャリーアは日常生活のかなり広範囲にわたる。だから社会的需要も多く、そのためにイスラム法学者がたくさん必要とされるのです。
ウラマーに質問する
ウラマーはモスクや自宅で人々の相談にのります。
素晴らしいのは、その相談は「無料」だということ。
今なら電話やインターネットで相談を受け付けているウラマーもいます。
かくいう私も、ウラマーにイスラムについて質問したことがあります。
その時の様子を、少し長いのですが引用します。
話はエジプトです。エジプトではウラマーのことをシャイフということがあります。
シャディアの家から歩いて10分ほどの住宅街の中にあった。隣には彼が毎週金曜日に説教を行うモスクが建っている。
私はさっそく、自分のノートに記した質問事項の一つ目からシャイフ(ウラマーのこと)に聞いた。
「イスラム教徒の女性は、夫が外出するなと言ったら外出しないそうですが、イスラムでは、なぜそう教えているのですか?」
シャイフはゆっくりと、よく通る大きな声で話し始めた。
「女性は金のようなものです。高価なものを持っていたら、家において大切にしますね。むやみやたらに外に出さない。夫が妻のことを愛し、大切にしていたら、同じような扱いをします。イスラムは、妻を宝物のように大事にしなさいと教えています。男は外出します。なぜなら家族のためにお金を稼がなければならないからです」
「でも女性も働くことはできるのですか?」
「夫婦で話し合って合意すれば、できます。イスラムは、女性が働くことを禁止してはいません。イスラムでは、家庭生活の金銭的負担は、すべて男性が受け持ちます。女性は働いても働かなくても自由です。家にお金を入れる必要がありません。だから相続権は男性の半分なのです」
「ここでは、男女が結婚前に2人だけで会うのは難しいですね。それはなぜですか?」
「女性は宝石のようなものです。結婚もしないのに男と外出するのは心配です。男女が結婚前に一緒に寝て、女性が妊娠し、男が逃げてしまうこともあります」
「質問は変わりまして、シャイフ、なぜ女性は、生理中に礼拝してはいけないのでしょう? 生理中の女性の体は汚いのですか?」
「腹痛があるし、疲れているからです。正常な状態でない。女性の体を気遣う教えです」
「でも生理の血は汚いのでしょうか?」
「良くない成分も含まれているから、外に出されるのです。でも体の中を流れている血液は汚くはありません」
「結婚したら、女性は体中の毛を剃りますね。これはイスラムの教えですか?」
「違います。でも毛を剃った方が美しいし、香りも良くなる。美しくきれいになりたいと思う女性はやります。ただハディースには、陰部と腋毛は剃るべきだと書いてあります(11)。ここに毛があると雑菌が入りやすく、良くない香りが生まれやすくなります」
シャイフからは流れるようによどみない返事が返ってくる。
「イスラム教徒の女性は、出産の時に男性の医者に行ってはいけないと聞きましたが、本当ですか?」
「男でも女でも問題ありません。ただ、イスラム教徒の方が好ましいとされています。イスラム教徒の女性への接し方をよくわかっているからです。また生まれた赤ん坊の耳元でコーランを唱えれば、バラカ(神の祝福)があり、良いイスラム教徒になると信じられています。イスラム教徒の医者がいなければ、キリスト教徒でもかまいません」
「妊娠している女性が、お腹の赤ん坊の性別を知るのは、ハラームになりますか?」
「ハラームではありません。ただ、男女の産み分けを人為的に操作するのはハラームです。神の意志に反するからです」
「ところで、イスラムでは男性は4人妻を持って良いとされていますが、それは預言者ムハンマドの時代の社会状況を反映したもので、今の社会には合わないのではないですか?」
私は次々と話の流れを無視して質問し、内心、彼の気を悪くしないか冷や冷やする。
(『女ノマド、一人砂漠に生きる』)
といった具合に、ウラマーは私の質問にスラスラと答えてくれたのでした。
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