ハディースとは?イスラム第2の聖典
ハディースには何が書かれている?コーランと何が違う? 両方とも聖典?スンナ、シャリーアとの違いは?
そんな疑問にわかりやすくお答えします。(*コーランについては、「コーランとは?日本人が知らない真実」をお読みください。)
ハディースとは?
ハディースとは、以下の書物です。
①イスラム教の創始者・預言者ムハンマドの言行を記録した書物。
②『コーラン』の次に重要な、第2の聖典。
①ハディースは、預言者ムハンマドと接した人々が、彼の言行を語り継いだもの。
ムハンマドの死後200~250年たった後に、書物にまとめられました。
内容は、宗教上の作法、食事、服装、結婚、健康の管理など日常生活全般です。
(参考:預言者ムハンマドとは?)
ハディースは生き方ルール
ハディースはコーランと同じく、信者の「生きる指針」です。
ムハンマドが生前言ったこと、やったことが、今も信者の手本になっている。
なぜかというと、彼は神から啓示を受けた人物であり、その言行は「神の意思に沿っている」と考えられるのからです。
イスラム男性にはヒゲを生やす人が多いのですが、ハディースに「ムハンマドがヒゲを生やしていた」とあるためです。
男女ともに陰毛を剃りますが、これもハディースにそうすべきと書かれています。
イスラム圏には猫を可愛がる人が多いのですが、ムハンマドが猫を愛したとハディースにあるためです。
コーランとハディースの関係
ハディースはコーランを補足する役割があります。
コーランにはアバウトな記述が多く、詳しい事を知るためにハディースを読む必要があるのです。
たとえば礼拝。コーランには「礼拝をせよ」とだけしかありません。詳しい礼拝の方法や回数は、ハディースに書いてあります。
喜捨についても、コーランには「貧しい人に喜捨せよ」とあるだけで、具体的な額などは書かれていない。そこでハディースを見るのです。
つまりハディースは、「コーランの注釈書」。
実際、信者の行動規範のかなりの部分はハディースによっています。
スンナとハディースの違い
イスラム教徒たちは、何か行動を起こすとき、「それはスンナだから」とよく言います。
スンナとは、「預言者ムハンマド様がなさっていたこと」、つまり行動規範で、元はほとんどがハディースです。
スンニ派の場合、ほぼ「スンナ=ハディース」です。
(「スンニ派」は「スンナにそって生きる」という意味です。)
シーア派の場合、ムハンマドとイマームの言行がスンナです。
歴代のイマームの言行も、ムハンマド同様に重視しているためです。
(参考:スンニ派とシーア派の違いは?高校生でもわかるようやさしく解説します。)
シャリーアとハディースの違い
信者が日々従うべきものは、コーラン、ハディース以外に「イジュマー(法学者の見解の一致)」「キヤース(法学者による類推)」があります。
「コーラン」「ハディース」「イジュマー」「キヤース」の4つをまとめて、「シャリーア(イスラム法)」といいます。
「シャリーア(イスラム法)」は基本的に変えることができませんが、法学者が個々の事例を判定するため、時代や社会の変化に合わせて柔軟な適応がされています。
ハディース全文を読むには?
ハディースには膨大な数が残されており、その中で特に信憑性が高いのが次の6書です。
①ブハーリーの「サヒーフ(真正なもの」の意味)」
②ムスリムの「サヒーフ」
③アブー・ダーウードの「スナン(スンナの複数形)」
④ティスミージーの「スナン」
⑤イブン・マージャの「スナン」
通常、ハディースといえば、①と②をさします。
最も信憑性が高いのが①で、7563のハディースが含まれています。
日本語訳は「ハディース〈1~6〉イスラーム伝承集成 (中公文庫)」で全6巻。
(一巻はそれぞれ500ページほどあります。)
[itemlink post_id=”38132″]
イスラム学の大家である小杉泰氏によるハディースの編訳。上記ハディースは文庫で6冊という膨大な数がありますが、本書はその中からな精選したハディースを収録したもの。さらに詳細な注と、年譜や地図など資料もついています。
②には、7422のハディースが納められています。
これはオンラインでも読むことができます。
ハディースの例
「ムスリムのハディース」からいくつか例を紹介しましょう。
『サルマーン(伝承者)はこう伝えている。
彼は(異教徒から)「あなたたちの預言者は、排便関係のことまで全て教えるのですか」と質問 された。
彼はこれに対し「その通りです。預言者は排便、または、排尿の時キブラ(メッカの方角)に面 すること、右手を使うこと、三箇以下の小石や動物の糞、または骨などを使って用便後の処理をすることなどを禁じております」と答えた』
かなり赤裸々な内容なので、おどろきます。
ハディースの中の「食事マナー」
「食事」については、ニンニクを食べることについての記載もあります。
『そして私達はその野菜(ニンニク)に群がった。 なぜならその時人々は腹ぺこだったからです。
それで私達はそれを貪り食った次第です。その後私達はモスクに出向いた。
だがアッラーの使徒(預言者)はその臭を嗅ぎつけてこう言った。
「このいまわしい植物を少しでも食べた者はモスクに決して近づいてはならない」
そこで人々は「(ニンニクが)禁じられた、禁じられた」と口々に叫んだ。
さてそのことが預言者の耳にまで届いたので彼はこういった。
「皆さん、アッラーが許したものを私があなた達に禁じる力はありません。 しかしそれは私がその臭いを嫌う植物です」
他人に迷惑をかけることなくニンニクや玉ネギやニラを たべること自体は勿論禁じられ ていない』
最後に
ハディースにはムハンマドの人間臭さがにじみ出ていて、読み物としても非常に面白いです。
彼が今も人々の敬愛を集め続けるのは、こういった実直で素朴な人柄も1つの理由でしょう。
【関連記事】
★イスラム教徒は?初心者にも100%わかるよう優しく解説します。
イスラム教とはどんな宗教?を簡単にわかりやすく解説【初心者歓迎】
★コーランの著者は神、アラビア語からの翻訳は不可。「日本人が知らない」事実をわかりやすく解説
「コーランとは?日本人が知らない真実」
イスラムの入門書
★「イスラム流幸せな生き方」
中学生でもわかるイスラム入門書。世界でなぜイスラム教徒が増え続けているか?がわかります。
コメントを残す