
アブダビ女性の手に描かれたヘナ模様。黒のアバヤ(ロングコート)の袖からのぞいたこの手に、思わず目が釘付けに。ヘナはおしゃれであったり、結婚式などおめでたい時に描く。
イスラム女性はいつも真っ黒な服を着て、おしゃれと無縁なように見えます。
おしゃれしなくて楽しいのでしょうか?
おしゃれするとしたら、どんなおしゃれをしますか?
そんな疑問に答えます。
彼女たちのおしゃれの1つが「ヘナ」です。
真っ黒なアバヤからのぞく手に、綺麗なヘナ模様が描かれていることも多く、思わずドキッとさせられます。
この記事では、ヘナを利用した美容法、おしゃれとしてのヘナ・アートをご紹介します。
目次
ヘナとはどんなもの?
ヘナは東はバングラデシュから西はモロッコまで広い地域で見られます。発祥はインドではないか?と私は想像。インドのキチュリ(おかゆ)がメッカ巡礼を通じてエジプトのコシャリになったように、ヘナもインドの巡礼者がサウジに持ちこみ、広まったのでは?アラブ世界のヘナはほとんどがインド製です。 https://t.co/nj5jxp6tjR pic.twitter.com/vHh2N5beGI
— 常見藤代 @『イランの家めし、いただきます!』他 (@fujiyotsunemi) October 13, 2020
ヘナは植物の葉からつくる染料で、抹茶のような緑色をしています。
この葉を乾燥させてすりつぶして粉末にしたものがヘナです。水を加えてペースト状にし、皮膚や髪につけます。
しばらくして乾いたヘナをぼろぼろとこすり落とすと、付けた部分がオレンジ色に染まります。
ヘナはミソハギ科シコウカ属の植物で、原産地は北アフリカか西南アジアだとのこと。
古代エジプトの時代には、女性の手足を彩る飾りや魔除として使われていたそうです。
というわけで私のインド発祥説は正しくないかもしれません。
ただ、今イスラム世界で売られているヘナは、ほとんどがインド製です。
ヘナのおしゃれ①美容&健康効果
ヘナのおしゃれ①は、その美容効果を利用するものです。
ヘナは植物が原料ですから、ナチュラルで体に良く、デトックス効果もあります。
ハマム(公衆浴場)にはヘナを持参し、アカスリする前にヘナを塗ります。
(ハマムでは、もっぱらアカスリをします)
ヘナのデトックス効果で、アカがじわじわと肌の中から出てきます。
そしてアカスリを終えたら、再度肌にヘナを塗る。トリートメントです。
髪にもヘナを塗ります。ヘナによる染色効果に加え、髪がしっとりつややかに。
最近は日本でもヘナがナチュラルな白髪染めとして注目されていますが、それはアラブイスラーム圏でも同じ。
私も使っていますが、ヘナをした後は髪がしっとりします。
頭皮や肌にヘナをつけると成分が身体に吸収され、毒素が排出されて体調がよくなる人もいるそうです。
ヘナのおしゃれ②アートとしてのおしゃれ
おしゃれ②は、手や足にヘナで模様を描くものです。
アラブの女性たちは美しいヘナ模様への憧れがとても強く、腕の良いヘナアーティストは、どこでもひっぱりだこ。
良いアーティストを見つけるのは、これまで口コミが頼りでしたが、最近はもっぱらSNSです。
チュニジアでヘナ・アーティストとして活躍するリームさんにお会いしました。
こちらが彼女の仕事ぶり↓
リームさんの仕事場である自宅は、住宅街のかなり奥まった場所にあります。表に看板はありません。
それでも、お客がひっきりなしにやってきます。忙しい日は20人くらいに描くこともあるという。
彼女はヘナの仕事を始めてたったの1年ですが、これまで描いてきた人数は「数え切れいないくらい」とのこと。
もともとヘナが好きで、見様見真似で描いていたそうです。
それを遊びでフェイスブックやインスタグラムにアップしていたところ、見た人が「ぜひ描いてもらいたい」と連絡してくるように。
やがて彼女の評判が口コミで広まり、あっという間に人気アーティストになったというのです。
さらにリームさんとご主人の出会いもヘナ。
夫のお姉さんが彼女のお客だったのです。
リームさんが独身だと知ったお姉さんは、「うちに独身の弟がいるけど、どうかしら?」と、すかさず持ちかけました。
家にいながら稼げるヘナ・アーティストは花嫁としても望ましい存在です。
イスラム圏の男性の中には、女性が外で他の男性と同じ職場で働くのを嫌がる人もいますから(最近はごく少数ですが)。
リームさんはただいま25歳。4歳と1歳のお子さんがいて、もちろん家庭は円満です。
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