ムスリム(イスラム教徒)と結婚するには改宗が必要なのでしょうか?
もし改宗したら生活はどうなるのか?
そんな疑問にわかりやすくお答えします。
イスラム教徒との結婚には改宗が必要
イスラム教徒と結婚する場合、基本的に改宗が必要です。
コーランで異教徒との結婚を禁じているからです。(2章221節、60章10節)
ただしイスラム教徒の男性は、キリスト教、ユダヤ教の女性とも結婚できます。しかし改宗した方がベターです。
将来的に生活や子供の教育などで意見が食い違うこともあり、実際、改宗するケースがほとんどです。
またイスラム教徒の女性と結婚したい場合、異教徒の男性はイスラムに改宗する必要があります。
イスラム女性はイスラム教徒の男性としか結婚できないからです。
相手がイスラム教徒をやめることはできる?
日本人は宗教になじみのない人が多く、「改宗」と聞くと、どうしてもハードルが高く感じてしまう。
できれば相手がイスラム教徒をやめてくれたらいいのに‥と思われるかもしれません。
しかしそれは難しいと思います。
イスラム教では棄教が認められていないこと、また宗教は人生の大切な一部、生きる指針だからです。
改宗しない結婚はあり?
実際には、改宗しない結婚もあります。
イスラム教徒といっても信仰心や宗派も様々です。お相手が日本での生活が長かったり信仰心が強くない場合、話し合った上で改宗しない場合もあります。
ただ結婚後に生活に問題が生じることもあります。
たとえば食べ物。イスラム教では食べてはいけないものがあります。豚肉に加え、豚エキスを使ったものなども厳密には禁止です。
「ハラール食品」という宗教で認められたものでなければ、食べることは基本できません。
宗教が違えば食べるものが違うことになり、食事のたびに別々の食事を用意することになる。かなり面倒です。
最初は気にならなくても、年月が積み重なればストレスになるでしょう。
もし相手の母国で暮らすのなら、さほど問題にはなりません。売られている食材はすべてハラール食品だからです。
ただし周りは全てイスラム教徒ですから、彼らの生活習慣に合わせることになります(下記に説明あり)
改宗しないメリット・デメリット
まとめると、こうなります。
<改宗しないメリット・デメリット>
・メリット=これまでの生活を変えずにすむ
・デメリット=結婚後に不便が生じる可能性も。相手の母国に暮らす場合、周囲の家族などに受け入れられにくい。
改宗しないで結婚が上手くいく場合
ずっと日本で暮らす予定で、相手が厳密に戒律を守っていないような場合です。(これはあくまで私の意見です。)
しかし当初は日本に暮らす予定だったのが、気が変わったり、急に宗教に目覚める可能性もあります。
だからムスリムと結婚するなら、最低限イスラム教について勉強する必要があります。
改宗したら生活に支障が出る?
改宗したら生活はどうなるのか?こちらがムスリムの主な義務です。
ムスリムの主な義務
●1日5回の礼拝を行う
1日5回、定められた時間にメッカの方向に向かって礼拝します。
●女性は肌や体の線を露出しない服装をする。
スカーフは厳密には義務ではありません。
●豚肉やハラル食品以外、食べるのは禁止。
(詳細:ハラール食品とイスラム教の食事ルール)
●ラマダン月に断食を行う
日没後は普通に食事できます。
(詳細:イスラム教のラマダンとは?)
●ザカート(喜捨)を行う。
年収のうち、一定の金額を喜捨します。
(詳細:ザカートとサダカ<イスラム教の喜捨>)
どこまで厳密に守るかは相手次第
このような義務はあるものの、どこまで守るかは基本的に相手次第です。戒律の守り方は人それぞれ。
中には豚肉を食べ、酒を飲む人もいます。そういう相手と結婚すれば、ほとんど生活は変わらないでしょう。
食べる物にしても、日本で全てハラール食品をそろえようとすれば、かなり食費もかさみます。そのため「豚肉だけは食べない」でよしとする人もいます。(→日本のハラールショップリスト)
服装もムスリムたちが集まる場所に行く時だけ肌を隠してスカーフをかぶり、普段は日本人と変わらない服装をしている人もいます。
相手の母国に行く時だけ、宗教に沿った服装をするという人もいます。
最初からルールの全てを知る必要も、守る必要もありません。
生まれながらのムスリムも成長しながら学んでいく。それと一緒です。
改宗の手順(結婚のための改宗の場合)
「改宗(入信)→結婚式をモスクで行う」が通常の流れです。
日本のモスクの場所は、だいたい都道府県に1つはあります。
①入信
男性2人の証人が立ち合いのもと、信仰告白します。だいたいは時間は30分以内です。
この際、入信証明書に貼る写真が必要です。
詳しくはモスクに聞いてみてください。
②結婚
モスクで結婚式(nikah ニカー)を行い、結婚証明書を作成します。
(ニカについて詳しくは「【永久保存版】イスラム教の結婚ルールとは?」をご覧ください)
(詳細:モスクでのご結婚手続き)
改宗に迷ったら
宗教を持つ習慣のない日本人にとって、「改宗」と聞くと、どうしてもハードルが高く感じてしまうもの。
さらにイスラム教と聞くと、テロや過激派が連想され、「厳しい」「危ない宗教」とイメージするかもしれません。
だからまずはイスラムについて学んでみて、どうしても嫌だと思ったら、結婚をやめた方が良いでしょう。結婚は一生のことです。
でもそこまででもないとしたら、とりあえず結婚のために改宗し、その後少しずつ学んでいけばいいと思います。
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もし改宗に抵抗があるとしたら、こう考えてみてはどうでしょう?
どうして愛する彼女・彼氏はイスラムを信じているのか?
危ない・厳しい宗教だとしたら、信者で居続けるのはどうしてなのか?
いくら棄教できないといっても、本当に嫌ならやめることもできるでしょう。それをしないのはなぜ?
ムスリムの人口増加率は高く、22世紀には世界最多となることが予測されています。
危ない・厳しい宗教だとしたら、こんなスピードで信者が増えるでしょうか?
ムスリムに恋したことで、別の世界や文化の扉を開くきっかけになるかもしれません。
イスラムの概略が知りたいという方は、一般向けのやさしい本がおすすめです。
また、こちらはイスラム教徒の人々がより身近に感じられる本です。
また、モスクで勉強会も行っています。
ムスリムとの結婚を相談できる場所
イスラム教徒との結婚や改宗などについて相談できる機関です。
イスラム教徒との結婚を考えている方の参考になれば幸いです。
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20年間にわたり取材したイスラム女性たちのリアルな日常を紹介。モロッコ、チュニジア、エジプト、イラン、パキスタン、モルディブ‥‥。恋愛、結婚、歌と踊り、デート。「抑圧」などメディアによって作られたイメージと違う、生き生きした女性たちの実像を紹介します。