ハディースには何が書かれているのか?
コーランとどう違う? 両方とも聖典?
スンナ、シャリーアとの違いは?
そんな疑問にわかりやすくお答えします。
(*コーランについては、「コーランとは?日本人が知らない真実」をお読みください。)
目次
ハディースとは?
イスラム教の創始者・預言者ムハンマドの言行を記録した書物。
『コーラン』の次に重要な、第2の聖典。
ハディースは、ムハンマドと接した人々が彼の言行を語り継ぎ、彼の死後200~250年ほど後に書物としてまとめられました。
内容はコーラン同様、宗教上の作法や食事、服装、結婚、健康の管理など日常生活全般にわたります。
(参考:預言者ムハンマドとは?)
ハディースができたのは8~10世紀で、「万葉集」や「源氏物語」の時代です。
それが今でも信者の「生きる指針」となっているのです。
イスラム男性にはヒゲを生やす人が多いのですが、ハディースに「ムハンマドがヒゲを生やしていた」とあるためです。
男女ともに陰毛を剃りますが、これもハディースにそうすべきと書かれているから。
イスラム圏には猫を可愛がる人が多いのですが、ムハンマドが猫を愛したとハディースにあるためです。
ムハンマドは神から啓示を受けた人物であり、その言行は「神の意思に沿っている」と考えられるのです。
コーランとハディースの関係
このように信者の生きる指針となっているハディースですが、これはコーランも同じです。
コーランには守るべき行動規範が「商売」「結婚、離婚」など生活全般にわたって書かれています。
(参考:コーランとは?日本人が知らない真実)
ハディースはコーランを補足する役割があります。
というのも、コーランにはアバウトな記述が多く、詳しい事を知るためにハディースを読む必要があるのです。
たとえば礼拝。コーランには「礼拝をせよ」とだけしかありません。詳しい礼拝の方法や回数は、ハディースに書いてあります。
喜捨についても、コーランには「貧しい人に喜捨せよ」とあるだけで、具体的な額などはハディースに書かれています。
つまりハディースは、「コーランの注釈書」です。
実際、信者の行動規範のかなりの部分はハディースによっています。
スンナとハディースの違い
イスラム教徒たちは、何か行動を起こすとき、「それはスンナだから」とよく言います。「預言者ムハンマド様がなさっていたことだから」という意味です。
スンナは行動規範のことで、元はほとんどがハディースです。
スンニ派の場合、概ねスンナ=ハディースです。(スンニ派はスンナにそって生きるという意味です。)
シーア派は歴代のイマームのもムハンマドと同じくらい重視し、その言行にも従うため、ムハンマドとイマームの両方の言行がスンナになります。
(参考:スンニ派とシーア派の違いは?高校生でもわかるようやさしく解説します。)
シャリーアとハディースの違い
信者が日々従うべきものの代表がコーラン、ハディースですが、それ以外にも「イジュマー(法学者の見解の一致)」と「キヤース(法学者による類推)」があり、この4つをまとめてシャリーア(イスラム法)といいます。
イスラム法は基本的に変えることができませんが、法学者が個々の事例を判定するため、時代や社会の変化に合わせて柔軟な適応がされています。
ハディースの全文を読むには?
膨大な数のハディースが残されましたが、特に信憑性が高いのが次の6書です。
①ブハーリーの「サヒーフ(真正なもの」の意味)」
②ムスリムの「サヒーフ」
③アブー・ダーウードの「スナン(スンナの複数形)」
④ティスミージーの「スナン」
⑤イブン・マージャの「スナン」
冒頭に「ハディースは第2の聖典」と書きましたが、この場合、通常①と②をさします。
最も信憑性が高いのが①で、7563のハディースが含まれています。
日本語訳は「ハディース〈1~6〉イスラーム伝承集成 (中公文庫)」で全6巻。
一巻はそれぞれ500ページほどあります。
イスラム学の大家である小杉泰氏によるハディースの編訳。上記ハディースは文庫で6冊という膨大な数がありますが、本書はその中からな精選したハディースを収録したもの。さらに詳細な注と、年譜や地図など資料もついています。
②ムスリムのハディースには7422のハディースが納められています。これはオンラインでも読むことができます。
ハディースの一例
「ムスリムのハディース」からいくつか例を紹介しましょう。
ハディースには、なんと排便の作法まで書かれているのです。
『サルマーン(伝承者)はこう伝えている。
彼は(異教徒から)「あなたたちの預言者は、排便関係のことまで全て教えるのですか」と質問 された。
彼はこれに対し「その通りです。預言者は排便、または、排尿の時キブラ(メッカの方角)に面 すること、右手を使うこと、三箇以下の小石や動物の糞、または骨などを使って用便後の処理をすることなどを禁じております」と答えた』
「食事」については、ニンニクを食べることについてのハディースもあります。
『そして私達はその野菜(ニンニク)に群がった。 なぜならその時人々は腹ぺこだったからです。
それで私達はそれを貪り食った次第です。その後私達はモスクに出向いた。
だがアッラーの使徒(預言者)はその臭を嗅ぎつけてこう言った。
「このいまわしい植物を少しでも食べた者はモスクに決して近づいてはならない」
そこで人々は「(ニンニクが)禁じられた、禁じられた」と口々に叫んだ。
さてそのことが預言者の耳にまで届いたので彼はこういった。
「皆さん、アッラーが許したものを私があなた達に禁じる力はありません。 しかしそれは私がその臭いを嫌う植物です」
他人に迷惑をかけることなくニンニクや玉ネギやニラを たべること自体は勿論禁じられ ていない』
最後に
ハディースにはムハンマドの人間臭さがにじみ出ていて、読み物としても非常に面白い。
彼が今も人々の敬愛を集め続けるのは、こういった実直で素朴な人柄も1つの理由でしょう。
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