キリスト教とイスラム|違い:共通点・対立している?
キリスト教とイスラムの違いは?類似点とは?「宗教の違いだけで、中東の人々は対立しているのでしょうか?」
そんな疑問にわかりやすく答えます。
イスラエルとパレスチナの紛争など、中東で起こっている問題が報道される際、よく「イスラムvsキリストの対立」などと言われます。本当に宗教の対立なのでしょうか?
イスラムとキリスト教の共通点
同じ唯一の神を信じる
どちらも「唯一神」を信じる一神教で、信じる神は同じです。
(参考:アッラーとは何か?《1分で解説》)
預言者を信じる
どちらの宗教にも預言者がいます。預言者とは「神の言葉を預かる人」のこと。キリスト教ではイエス、イスラム教ではムハンマドです。
キリスト教ではイエスが神から福音を授かり、キリスト教を創始。イスラムではムハンマドが神から啓示を授かり、イスラム教を開始しました。
*
また両方とも他の預言者も認めています。
旧約聖書に出てくるアブラハム(コーランではイブラヒーム)、モーゼ(ムーサー)などです。
イスラムの聖典「コーラン」には、25人の預言者が登場します。その中で神からの最後で最高のメッセージを預かったのがムハンマドだと解釈しています。
啓典を信じる
それぞれに「啓典」(神の啓示をまとめた書物)があります。キリスト教は「新約聖書」、イスラム教は「コーラン」です。
イスラム教は「旧約聖書」「新約聖書」も啓典として認めています。
イスラムとキリスト教の相違点
三位一体を信じるか・信じないか
これが一番大きな違いです。
・キリスト教=三位一体を主張
・イスラム教=三位一体を否定
「三位一体」とは、「父としての神、子としてのイエス、聖霊の3つが1つ」であるという説。キリスト教は三位一体を主張し、イスラムは「徹底的に」否定します。
コーランでは「神は唯一」「イエスはただの純粋な人間」と繰り返しています。
戒律があるか・ないか
・キリスト教=戒律がない
・イスラム教=戒律がある
キリスト教は精神的な領域だけを重んじ、人間がどのような行動をすべきかを示していません。
イスラムは信者が行動すべき具体的な戒律があり、それらはシャリーア(イスラム法)に定められています。
聖典の違い
・キリスト教=「新約聖書」は人間が書いたもの。
・イスラム教=「コーラン」は神が書いたもの。
新約聖書は人間が書いたものです。イエスの教えは、弟子たちによって複数の「福音書」にまとめられ、このうち4つが後に「新約聖書」とまとめられました。
コーランは全てが神の言葉で、人間が書いた文章は入っていません。
(参考:聖典コーランとは?日本人が知らない真実)
信じる預言者の違い
・キリスト教=イエスまでを預言者と認め、ムハンマドは認めない。
・イスラム教=イエスまでを認め、ムハンマドも預言者と認める。
両者の違いは、「歴代の預言者のうち誰までを信じるか?」です。
歴代の預言者とはアダム、旧約聖書に出てくるアブラハム(イブラヒーム)、モーゼ(ムーサー)、イエス、ムハンマドのことです。
キリスト教は、イエスまでを預言者と認め、ムハンマドは認めません。イスラム教はイエスを預言者の一人と認めた上で、ムハンマドを最後で最大の預言者とします。
聖職者がいるか・いないか
・キリスト教=聖職者がいる。イエスは神の子。
・イスラム教=聖職者はいない。ムハンマドは一般人。
キリスト教では神父や牧師など、信者を神の教えに近づける聖職者がいます。
イスラム教は聖職者など特別な人は存在せず、全ての人は神の前に平等。信者は直接神と繋がれます。
預言者ムハンマドもただの一般人で、人々の尊敬する対象であっても崇拝の対象ではありません。
礼拝堂の違い
・キリスト教=教会は神聖な場所。聖壇や聖水がある。
・イスラム教=モスクは単なる集会所。礼拝と説教が行われるだけ。
クリスチャンはイエスの像を通して神に語りかけます。神はキリスト像の彼方にいるもの。信者と一緒にはいません。
イスラム教では偶像崇拝は禁止されています。そのためモスクの中には神の像やムハンマドの肖像画などはありません。
信者一人一人が直接神とつながっているからです。
禁欲主義か否か
・キリスト教=禁欲を推奨
・イスラム教:禁欲を否定
キリリスト教では聖俗を分け、精神は物質よりも上、聖は俗より上としています。禁欲を推奨し、食べること、お金儲け、性的なことを控えよと説きます。
イスラムでは人間が欲望を持つ存在であることを認め、それらを神が許す範囲で「存分に楽しめ」と教えます。性も後ろめたいものとしません。ただし夫婦の間のみです。
宗教の違いで対立しているのか?
私が長く滞在したエジプトを例にとって説明したいと思います。エジプト人の1割はイスラム教徒。街中には教会がたくさんあります。エジプトには1000万人のキリスト教徒がいるそうです。(「地図で見るアラブ世界ハンドブック」)
そしてムスリムとキリスト教徒は、実際にはとても仲良く暮らしています。
ルクソールに行った時、キリスト教系のホテルに泊まりました。1月7日はちょうどコプト(エジプトのキリスト教徒)の新年で、ホテルでは盛大にパーティが行われました。そこにはコプトだけでなく、ムスリムの人たちも大勢参加していました。
エジプトでは結婚式を含めパーティは夜。おかげで夜遅くまで音楽が鳴り響いてなかなか寝付けませんでしたが、エジプトの人々の暮らしぶりを知ることができました。
コメントを残す