
トウジャン。険しい枯れ谷に、周囲の風景に溶け込むように石を積み上げて建てた家が並んでいる。
マトマタのホテルで車をチャーターし、トウジャンとベニゼルテンをめぐりました。
南部は交通が不便で、この両方の村へも、公共の交通機関はほとんどありません。
旅行会社のツアーに参加するか、ホテルで車をチャーターする必要があります。
トウジャン Toujane

トウジャンの村
マトマタからトウジャンまでは、わりと険しい山道が続きます。
やがて周囲の砂漠と一体化するような土色の家々が密集したトウジャンの村が現れるのですが(一番上の写真)、なんとも言えず感動します。
トウジャンは標高が高い場所にあるため、9月というのに肌寒かったです。
ここにはマトマタにあるような穴居住宅がありました。
村ではキリムを作って売っている女性が多く、何人かの女性から勧められました。
家の外でのんびりとお茶を飲んでいる人がよく目に着きます。
家の中より外の方が気持ち良いのでしょう。
一人の女性と目があって、お茶に呼ばれました。

お茶は炭火でいれる。洋なしとブドウと桃などの果物も出してくださった。
飲んでいるのは緑茶でなく紅茶。モロッコやチュニジアでは緑茶の方が多いのですが、彼女は紅茶の方が好きだそう。
庭に生えているミントをつんできて、ミントティーを作ってくれました。

ミントの葉をコップに入れて、上からお茶を注ぐ。
砂糖の量は日本人的にはかなり多いのですが、お茶の苦みと砂糖の甘さが絶妙にマッチングして、とても美味しい。
なにげなく「ご主人はどこ?」と聞くと、亡くなったと言います。
子どもが5人。彼女の両親もいないそうです。
失礼ながら、どうやって暮らしているのかと思わずたずねてしまいました。
彼女はおだやかに微笑みながら「ロッベナ(神様が助けてくれている)」。
彼女と過ごすお茶の時間は、なんだかとても静かで心和む時間でした。
ベニゼルテン Beni Zelten

ベニゼルテンの村
トウジャンからベニゼルテンの村へ。30分ほどの道のりです。
ここは山の斜面にそって旧市街があります。
旧市街に暮らしているのは3家族のみ。
他はメインストリートの反対側の平野部に新たな家を建てて暮らしています。
トウジャンよりさらに訪れる観光客が少ないため、村は静かでとても素朴です。
山の頂上の古いモスクをのぞいてみました。
山の上からの旧市街の眺めはすばらしい。
近くにはオリーブオイルの工房もありました。

オリーブの圧搾機。
山から降りてくる途中で一軒の家に呼ばれ、クスクス とお茶をいただいてしまいました。
(なんだか、いただいてばっかりです)
お母さんと娘さんがいました。
クスクスは大きく切ったジャガイモとニンジンが入っていました。
ネコが寄ってきてクスクス を食べようとするため、お母さんが自分の靴を猫にぶつけて追い払います。
ネコは懲りずにすぐに戻ってくるのです。
お母さんに、「肉をあげてもいい?」と了解をとって、肉をネコにあげました。それを嬉しそうに見つめるお母さん。
飲料水は雨水を再利用して使っています。
娘さんに「なぜ他の人たちは新しい家に住むの?」ときくと、「古い家は生活がたいへん」。
それでも彼女たちは家を改装しながら暮らしています。
住所交換して、さよならをします。
おかあさんは静かに微笑みながら「私たちは友だちね」。
急いで車に戻る途中、お母さんが上から私を呼びました。
娘さんが何かを手にして、私の方に走ってきます。手には赤いものが。
彼女は息を切らして、手作りの布製のお皿を手渡しながら、私に言いました。「ジクラ(思い出)」。
チュニジアの一人旅、旅行情報について知りたい方は、こちらの本をどうぞ。