2018-08-30

コーランと聖書の違いとは?

コーラン

エジプトの家庭のリビングに飾られたコーラン。イスラム圏の家庭には必ず1冊はコーランがあり、大切に保管されている。

聖書とは?

キリスト教の聖典。クリスチャンが人生の指針とするべき歴史書です。
聖書は「旧約聖書」と「新約聖書」があり、カトリックもプロテスタントともにこれらを聖典とします。

聖書は全部で3つのパートに分けられます。
①「旧約聖書」=イエス・キリスト以前のこと。
②「新約聖書」前半(福音書)=イエス・キリストの言動。(「マタイ」「マルコ」「ルカ」「ヨハネ」の4つでこれが「福音書」)
③「新約聖書」後半=イエス・キリスト後のこと。

キリスト教の教えとは?

・イエス・キリストとは?
キリストとは「救い主」という意味です。つまり「イエス・キリスト」=「救い主イエス」。
キリスト教では、イエス・キリストを「唯一の救い主」であり、「神」とします。

・キリスト教の教えとは?
大切な点は「三位一体」と「イエスの復活」です。

①三位一体=「神は1つで、その神が父、子、聖霊の3つのあり方をする」概念です。
つまりキリスト教とは、「父なる神、その子イエス、聖霊を自分たちの神として生きる教え」です。
イエスは神であるとともに「神の子」。神でありながら人間なのです。

②「復活」=イエス様は私たちのために十字架にかけられて死に、そのあと復活したと考えます

イスラムとキリスト教の相違点

イスラムでは①を否定します。イスラムの大原則は「神は唯一」「預言者は人間」。そこで「神は3なんておかしい!」「神に子がいるはずない!」「イエスは人間だ。神だなんてトンデモナイ!」
コーランでたびたび主張しています。(参考:キリスト教とイスラムの違いと共通点)

コーラン中の聖書のストーリー

イスラムでは聖書も啓典として認めており、コーランには聖書のストーリーがたくさん出てきます(ほとんどは旧約聖書)。アダムとイブの話、モーセの出エジプトなどです。ですから聖書のストーリーを知ることで、コーランが理解しやすくなります。

アダムとイブの楽園追放

聖書では神が天地をつくり、動植物をつくり、最初の人間アダムをつくりました。そして神は「人が1人じゃ寂しいだろう」と、アダムのあばら骨からイブをつくりました。
2人は仲良く天国の楽園「エデンの園」に暮らしていました。
しかし神に食べるのを禁じられた禁断の実を、悪魔の化身である蛇にそそのかされて食べてしまいます。それが神様に見つかり、エデンの園から追放されてしまいます。
彼らが楽園で犯した罪は「原罪」とされ、そしてアダムには労働の義務を、イブには出産の義務を課した、これが聖書のストーリーです。
コーランは少し違っています。楽園で2人が犯した罪は、地上に降ろされる際、神に許されたことになっています。だからイスラムでは原罪意識はありません。
また聖書では「イブがアダムのあばら骨からつくられた」がストーリーですが、コーランには「何からつくられたか」は書かれていません。

ノアの方舟

アダムとイブの何代かの後、人間が多くなりました。中には罪を犯す人も出てきます。これに神様は怒ってしまいました。
そして地上のあらゆるものを洪水で流し去ってしまうことにしたのです。
ただ、まじめな人間ノアだけは助けてやることにしました。神はノアに言いました。「方舟に君の家族とあらゆる動物のカップルを1組ずつ乗せるように」。
舟ができあがると、神は世界のあらゆる陸地を水の下に沈めてしまいました。

一神教の親:アブラハム

アブラハムはキリスト教、ユダヤ教、イスラムの「信仰の祖」です。
彼が100歳の時、息子イサクが生まれました。そのとき、奥さんのサラは90歳です。神はアブラハムの信仰を確かめるため、「イサクをいけにえにして私に捧げよ」と命令します。
アブラハムは当然心を痛めます。しかし神の命令に従うことにしたのです。イサクに手をかける瞬間、神様からストップがかかります。「君の宗教心はわかった」アブラハムの信仰が確かなことが確信されました。
この後、イサクはユダヤ人の祖に、アブラハムが妾との間に産んだ子イシュマエルがアラブ人の祖となります。
アブラハム(イスラムではイブラヒーム)は純粋の一神教徒であったとされ、この後にユダヤ教、キリスト教が啓示されました。
その後に最後の啓示としてイスラムが与えられた、これがイスラム教の立場です。

モーゼの出エジプト
アダム→ノア→アブラハム→イサク→ヤコブと子孫が生まれ、そのヤコブの11番目の息子がヨセフです。
ヨセフはエジプトに奴隷として売られました。やがてエジプトの総理大臣にも匹敵するほど偉くなります。そしてその子孫はエジプトで繁栄しました。
しかしエジプトの王ファラオに弾圧されるようになります。
その頃生まれたのが、ヤコブの子孫モーセです。映画「十戒」の主人公です。
モーセは人々を率いてエジプトを去る決心をしました。逃げるモーセたちをエジプト軍が海辺まで追い詰めます。「十戒」で有名なシーンです。
海が割れ、モーセたちは割れた海を歩いて渡ります。後からエジプト軍も渡りますが、途中で海が元に戻り、みんな溺れてしまいます。
危機を乗り越えたモーセは、さらに旅を続ける途中、シナイ山で神から十戒(律法)を授かりました。

イエス
やがてアブラハムの息子イサクの系統からイエスが生まれます。
このイエスについては、コーランにもたくさん記述が出てきます。
しかし先にも書いたように、イスラムでは「キリスト教はアブラハムの純粋な一神教から外れてしまった」と考えます。
まずイエスについて。キリスト教ではイエスを神としますが、これでは天にいる父なる神と合わせて2つの神がいることになってしまいます。
さらに三位一体論。父なる神、子イエス、聖霊の3つを唯一神のそれぞれの現れだという。これも「神は唯一」を徹底しているイスラムの立場からは許されざること。
つまりキリスト教の後に興ったイスラムは、「もう一度、純粋なアブラハムの一神教にもどろう」という復帰運動とも見ることができるのです。

【イスラムの基本】記事一覧

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