2021-10-05

子どもがいないのは不幸?老後が心配?

青森県の稲刈り

「子どもがいないと将来寂しいよ」「年とったとき、困るよ」などと、よく言われますね。

これは「めんどうを見てくれる人がいなくて困る、心配」という理由からだと思います。本当にそうでしょうか?

地方の元気な一人暮らしの高齢者

これは必ずしも当たらないと、最近、田舎で多くのご老人たちと話をして思うようになりました。

地方の田舎には、実に元気な一人暮らしのお年寄りが多いのです。80歳代、90歳代、特に女性たちです。

子どもはいても、都会に出て行ったきり帰ってこない。子どもたちは都会で結婚し、家を持ち、都会の学校に通っている。そこで年老いた親は地方の田舎で一人で暮らしとなる。

だから今は子どもがいてもいなくても老後の暮らしはそれほど変わらないとも言えます。

では、そんな年老いたご老人たちは、田舎で一人で暮らして困っているのか?全くそんなことはないのです。かえって子ども夫婦と都会で暮らすより、田舎で一人ぐらしの方が良いらしい。

まず、住みなれた広い家で暮らせます。息子夫婦といっしょでは、色々と気を使うことも多い。嫁にいびられるかもしれません。それより一人暮らしの方がよっぽど気楽なのです。

こうして80歳、90歳になっても、自分で料理をし、洗濯をする。もしかしたら一人暮らしで、何でも自分でやるから、かえって元気なのかもしれません。

新潟に住む84歳の女性(ご主人と2人暮らし)が言っていました。「お母さんから台所仕事とりあげちゃ、だめよ。早くボケるから」。彼女のいとこの女性は、息子夫婦が心配して台所仕事をやらせなかったために、早くボケてしまったそうです。

田舎で一人暮らしは不便?

老人が田舎で一人暮らしでは買い物に困るのではないか?これも杞憂です。

近所の人と車に乗りあって町のスーパーに買い物に行きます。村に食材を売りにくる人もいます。週1回とか2回が多いようですが、時には毎日ということも。また今なら通販やネットもあります。

病院通も、巡回バスで送り迎えしてくれる病院もあります。こうして、いよいよ身の回りのことができなくなれば、施設に入るのです。

温泉仲間と「いっしょの施設に入ろうね」

青森県で一人暮らしをしている85歳のAさんの日常は、とても楽しそうです。大きな2階建の家に一人暮らし。昼間は庭に植えた野菜の手入れなどをし、夕方になると、近所の共同浴場(温泉)へいきます。そこには友人たちがたくさんいて、世間話に花を咲かせる。嫁の悪口なんかが出ることもあるそうです。

時には友達と温泉の部屋を丸一日貸し切ることもあるそう。(この温泉は、宿もやっています)。そこで、日がな一日おしゃべりし、気が向いたら風呂に入り、お腹が空いたら食堂からそばを持ってきてもらう。疲れたらゴロンと横になり、また温泉に入り‥。

温泉仲間とは「いっしょの施設に入ろうね」と話し合っているそうです。「だから元気なうちに施設に入ろうね」と。「ボケてしまうと、自分で選択ができなくなるから」だそうです。

都会の狭い家で、息子夫婦と暮らすより、ずっと楽しいのではないかと想像します。彼女には息子や娘がいますが、彼らのお世話になろうとは思っていないそうです。

親の面倒を見ない子どもは親不孝?

では都会に出て行ったきり田舎に帰らず、老親のめんどうを見ない息子は親不孝なのでしょうか?

一概にそうともいえません。「育ててもらった親の面倒を見るべきだ」という考えはもちろんあるものの、子どもは頼んで生まれてきたわけではありません。産んだのは親の都合です。産んだからには、ちゃんと独り立ちするまで育てる。それで責任完了。

その後、子が親の面倒を見るか見ないかは、また別の問題です。親も大人ですから、自分が年をとった時のことは自分で責任を持つ必要があります。子どもだから自分の面倒を見るべきだ、と期待するのは間違いではないか?とも思います。

もちろん子が親の面倒を見られれば理想的ですが、今の日本ではそうできない現状があります。第一次産業が主流の時代は、地方の産業も活気があって、地方で生計を立てていく道がありました。今は仕事といえば会社勤めが主。会社は都会に集中していますから、仕事のために都会に出る必要があります。こうして働き世代の子どもと老親は、離れて暮らさざるをえない状況となります。

子どもがいてもいなくても

一人暮らしが長い私から言わせると、一人暮らしほど気楽なものはありません。
「それはお前がまだ元気だからだろう?年とったらどうするのだ?」と言われるかもしれませんね。

しかし、そんな先のことは、その時になって考えるしかありません。それに東京では、とっくの昔に、「高齢者世帯の半分が一人暮らし」という統計もあります。

もちろん子がいるからこそできる幸せな体験もあるでしょう。年老いた時、子どもがそばにいてくれたら心強いのも確かです。

一方で子がいてもグレてしまったり、引きこもりになったり、ということもありますから、必ずしも「子がいたら幸福」ではない。子がいないからこそ、できることもある。趣味や好きなことにもより多くの時間やお金を使えます。

いちばんのタブーは「自分は子供がいないから不幸だ」、「老後が心配だ」と悩むこと。将来などどうなるかわかりません。その年まで生きるかどうかも。

ようは現実をどうとらえるか?です。子供をいないことを、ただ不幸と思うのか、将来が不安だと思うのか。老後なんてどうにかなる、一人の方が気楽、と思うのか。

自分の考え方次第で、目の前の現実はどうにでも変わるのです。

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