イスラムの結婚のルールの概略はイスラムの結婚ルールとは?【永久保存版】に書きましたが、実際の結婚事情は国によって様々。
中東アラブの場合、結婚事情は日本とはかなり違い、驚くことも多いです。
どんな特徴があるのでしょうか?
男女のお付き合いという概念がない
イスラムでは基本「お付き合い」という概念はありません。婚外の男女関係は認められず、異性関係は全て結婚前提だからです。
そこで男性は気に入った女性がいたら、まずはプロポーズし、女性の父親のOKをもらって初めて、付き合いがスタートします。
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中にはこんなケースもあります。私のエジプトの友人から聞いた同僚(男性)の話。
その男性と相手の女性との馴れ初めは、かなりの驚きでした。
なんと彼とお母さんが町を歩いている時、路上で見かけた女性をお母さんが「ナンパ」したのです。
「あなた、うちの息子のお嫁さんにどう?」
日本人なら「頭おかしいんじゃない?」と思いますが、こういうのはアラブではありえない話ではない。
実際その女性はナンパに応じ、2人はスムーズに婚約→結婚となったのでした。
スマホにある彼女の写真を見せてもらいましたが、確かにすごい美人。お母さんが思わず声をかけたのも、うなづけます。
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そこで日本人ならこういう疑問がわきます。
彼女の素性はどうなの?
肝心の彼との相性は?
そんなことがわからず、婚約してしまっていいのか?
それらは婚約してから知ればいいというのがアラブの考え方なのです。(婚約破棄はよくあります)
もちろん最近は、じっくり恋愛して結婚というカップルも増えています。その場合も、まずは婚約してから、です。
(だからアラブ人男性と付き合い始めて「結婚」の言葉が出なかったら、遊びである可能性が大きいでしょう)
そして多くの場合、結婚まで処女と童貞です。
→処女・童貞同士で結婚するイスラム教徒は、結婚後に性の不一致で離婚したりしないの?
いとこ同士の結婚
基本的に自由恋愛がタブーなため、中東アラブでは結婚は見合いが主流です。
この場合、伝統的に多いのが「いとこ」との結婚です。
中でも「男性&彼の父方のおじの娘」が理想的な結婚相手とされてきました。
いとこ婚が好まれる理由は、財産が外へ流れないなど様々な理由があります。
そして女性本人にとっても「よく知っている相手だから安心」と意外に好評でもあるようです。
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いとこが相手なんて、恋心なんてあったものじゃない?
それが、そうでもないのです。
これはエジプトのある村の女性のケース。
彼女はいとこの男性と結婚しましたが、2人は長年「同じ家」で暮らした仲。
(村の家は広いので、毎日顔を合わせるという感じではないのです)
そして年頃になってお互い好意を持つように。
彼は18歳でクウェートに出稼ぎに行ってしまいます。それでも文通を続け、めでたく婚約に至りました。
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この「いとこ婚」ですが、最近都市部などで女性の高学歴化が進むにつれて、「遺伝的に問題がある」などの理由で避けられることも多くはなっています。
いとこ婚はアラブ以外のイスラム圏では、それほど一般的ではありません。
持参品が膨大

チュニジアの結婚式をひかえた新婦の家。大きな部屋の隅々まで持参品が並べられている。これを親戚や知人が来て品定めするのが、チュニジアのしきたりとなっている。
アラブの結婚では、結婚前に家具が「全て」揃っていなければいけません。
「結婚してから少しずつ揃えていこう」という発想は皆無です。
そこでエジプトなどでは、娘が思春期を迎える頃から、少しずつ持参品を用意し始めます。
今月はお皿、来月は冷蔵庫‥‥。
ちなみに花嫁が持参した品はすべて彼女の個人財産とされ、離婚した場合は全て実家に持ち帰るそうです。
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そして結婚時にそれらを新居に持ち込むのですが、その持参品の量がものすごい。
結婚をひかえた花嫁の家では、まるまる1室が持参品を保管する部屋になります。
そして結婚式の直前に、「トラックで」新居に運び込みます。
新生活に用意するものの役割分担は、国によって様々です。
エジプトでは女性側が台所用品や調理器具を用意し、男性側は新居と大型家具(応接間のソファ、寝室のベッドなど)を用意します。
ヨルダンなどでは、男性がすべてを用意します。
【参考図書】
★「イスラム流幸せな生き方」
中学生でもわかるイスラム入門書。なぜ世界中でイスラム教徒が増え続けているか?がわかります。
20年間にわたり取材したイスラム女性たちのリアルな日常を紹介。モロッコ、チュニジア、エジプト、イラン、パキスタン、モルディブ‥‥。恋愛、結婚、歌と踊り、デート。「抑圧」などメディアによって作られたイメージと違う、生き生きした女性たちの実像を紹介します。
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