イスラムは日本人にとってなじみの薄い宗教であるため、知られていない面も多々あります。
ここでは「イスラムの日本人に知られていない点」にスポットを当て、わかりやすくご紹介します。
この記事を書いている私は、これまで20年以上イスラム圏を取材し、「イスラム流幸せな生き方」など多数の本を出版しています。
イスラムは生きるルール
日本人にとって生きる上で指針となるのは法律や道徳です。
イスラム教徒の場合は「イスラム」であり、「コーラン」です。それが暮らしの中心です。
(*コーランについては、「コーランとは?日本人が知らない真実」をお読みください。)
そもそもイスラムの意味は「神に全面的に従う」です。つまりイスラム教徒とは「神に従う人々」のこと。
その神の意思は、コーランに書いてあります。そのため人々はコーランに書かれていることに無条件で従います。
コーランには宗教儀礼だけでなく礼拝、断食、豚肉禁止など食物規定、結婚や相続、商売まで日常の細々としたルールが書かれています。
つまりイスラムは「生きるルール」。私たちがイメージする「宗教」とはだいぶ違うものです。
(→イスラムはどんな宗教?)
コーランの著者は神
よく誤解される事ですが、コーランの著者は神です。人間が書き記した物ではありません。
そして偉大なる「神の言葉」は人間が勝手に書き換えることができません。
法律は人間がつくったものですから、時代によって善悪の判断基準も変わり、それに沿って変えていく必要があります。
しかし神の言葉は絶対、変更は許されません。コーランに書かれたことは信者にとって永久の真理です。
(参考:コーランとは?日本人が知らない真実)
預言者ムハンマドが生きる手本
信者が従うのはコーランだけではありません。預言者ムハンマドの言行録「ハディース」もそうです。
コーランにはアバウトな記載が多く、ハディースがいわば「コーランの細則」の役割を果たすのです。
たとえばコーランには「礼拝せよ」とありますが、具体的な回数や方法は書いてありません。
貧しい人に喜捨せよとあるが、その具体的な額も書いてありません。詳しいことは全てハディースに書いてあるのです。
そのハディースが書かれたのも日本の万葉集の時代。それが今でも信者の生きる手本となっているのです
(参考:ハディースとは?コーランに次ぐ第2の聖典)
厳しい戒律?
日本では一般的に「イスラム=厳しい戒律」というイメージがあります。
婚外の男女関係は厳しく禁じられ、女性は肌を隠さなければいけない。豚肉は食べてはダメ、ラマダン中は日中は飲み食いが禁止される‥‥。
だから私たちは「なんて禁欲的な宗教なんだろう」と思います。
実はイスラムはかなり柔軟な宗教です。
たとえば「豚肉を食べてはいけない」とありますが、他に食べるものがなかったりと餓死しそうな場合には食べても良いとされている。
また豚と知らずに食べてしまっても罪にはなりません。
1ヶ月のラマダンはさぞかし辛そうです。(ラマダンは「イスラム暦の9番目の月」のこと。「断食」のことではありません)。
しかし断食は日中だけ。日が沈んだら飲み食いOKです。そして毎日食卓にはご馳走が並びます。
実はラマダンはお祭りであり、イスラム教徒は誰もが楽しみにしているのです。また病人や老人など体の弱い人は断食を免除されています。
(参考:イスラム教のラマダンとは?【お祭りです】)
イスラムでは婚外交渉はタブーであり、結婚前の男女関係は禁じられています。
それは家族に価値が置かれているからです。結婚前は確かに禁欲を強いられますが、夫婦の性生活は善行とされ大いに奨励されています。
イスラムは女性差別?
イスラム女性がテレビに登場する際には、きまってブルカで顔を隠したり、真っ黒なアバヤで全身を隠した女性が登場します。(ヒジャブ、ブルカ、二カブ、チャドル‥‥イスラム女性の服装を解説)
しかし実際にはほとんどの女性は顔を出していますし、黒づくめの服装もごく一部の女性だけです。
たしかにコーランでは肌や体の線などを隠すよう命じています。これは男性の性的欲望を刺激しないため。そして女性を守るためです。
女性たちは外では黒づくめでも、家の中では夫の前では着飾る。それが向こうの女性のおしゃれなのです。
イスラム社会では男女隔離が原則ですが、これがかえって女性の活躍の場を広げている側面があります。男性は女性の肌を見ない方が良いとされるため女医が求められますし、女性のタクシー運転手もたくさんいます。
そもそもイスラムでは男女平等が理念。 コーランには、男女平等を教える章句が多くあります。
アフガニスタンのタリバンが女子教育を禁じましたが、イスラムではそもそも女子教育を禁じておらず、最近はパキスタンでもイランでも大学への進学率は女子の方が上回っています。
(参考:イスラム教では女性をどう扱っている?<コーランの中の女性>)
女性保護も重要な柱の1つです。
たとえば生活費は夫の義務です。相続権は男性の半分という規定がありますが、これは男性が生活費を負担するのが原則だから。
また夜の夫婦生活でも自分ばかり満足するのでなく、妻の満足にも気を配るようにと定めている。
一夫多妻はハーレムなどと男性が複数の女性と好き勝手に戯れるイメージがありますが、そもそも寡婦や孤児を保護するために一夫多妻を認めたのがきっかけ。女性保護が規定の源となっています。
(参考:イスラム教の一夫多妻とは?女性たちはどう思っている?)
なぜイスラム人口が増えるのか?
各種の予測によれば2050年には世界の3人に1人はイスラム教徒になると言われています。
結婚を奨励しているのも一因でしょう。
結婚する人が増えれば、当然子供も増えます。
結婚が半ば義務のため、年頃になると周囲の人がどんどん見合いの話をもってきます。
(参考:【永久保存版】イスラムの結婚ルールとは?)
人口が増える遠因としては、自殺者が少ないことも挙げられるでしょう。これはコーランで自殺を禁じていることや「死後は天国へ行ける」安心感なども心の安定につながっているからです。
(参考:イスラム教徒はなぜ自殺しないのか?)
またイスラムには人々を引きつける魅力がある。それはなぜか?
1つには全ての人が神の前に平等だという教えです。男女も平等です。
弱者救済も徹底しています。貧しい人への喜捨は、信者の義務です。
さらに弱い者(病人や妊婦、旅人など)には配慮し、断食は免除されています。
(参考:ザカートとサダカ<イスラム教の喜捨>)
イスラムには人が生きるのを楽にする要素もあります。
冒頭で書いたように「全てを神に委ねる」が基本理念です。世界のすべての物事は神が決めることになっています。
だから失敗しても「神がそう望んだから」とあきらめがつくのです。自分を必要以上に責めることがありません。
日本人なら「努力が足りなかった」と自分を責めがちですが、イスラム教徒にとっては神が救いになっている。
病気になっても、「これもアッラーのおぼしめしだ」と考える。「なぜ病気になったんだろう?」と必要以上に悩みません。
生きていれば人間の思い通りにならないことはたくさんあります。そうであっても、「神が望んだこと」と自分を納得させる。
神のせいにするのは都合の良い考え方だと感じられるかもしれません。
そこには、生きる上で誰もが直面する悲しみや苦しみを少しでも和らげようとする人の知恵があるように思います。
(参考:イスラムにおける定命とインシャーアッラー)
イスラムについて興味がある方の参考になったら嬉しいです。
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