イスラムでは男性は四人まで妻を持てる。一夫多妻ときくと「ハーレム」などとイメージする人もいるかもしれない。実際には、複数の妻を持つ男性はそれほど多くはない。イスラムでは家計の負担は基本的にすべて男性にある。妻が二人いようと三人いようと関係ない。だからよほどのお金持ちしか、奥さんを複数持てない。
意外なことに一夫多妻によって救われる女性もいたりする。私が三十代の終わりまで結婚したくてもできなかった頃のこと。夫が他の女性とも結婚しているエジプト女性に「どうして妻のいる男性と結婚したの?」ときくと、彼女はビシッと一喝した。「アンタみたいにいいトシして独り身より、妻のいる男とでも結婚した方がマシなのよ!」。
妻が二人いる男性は言う。「日本じゃ、奥さん以外に好きな女性ができたら、こっそり会ったりするんだろう? それより、ちゃんと結婚したほうがいいさ」。女性にとっては、望まない不倫をズルズルと続けたあげく婚期をのがすより、ちゃんと妻と認めてもらい、生活費も出してもらう。かつ子ども産める。その方が嬉しいという女性もいるかもしれない。
日本では夫が他の女性を好きになった場合、妻と離婚し、子どもと別れなければ二人目と結婚できない。妻子を捨てるか、新たな女性を捨てるかの選択に迫られる。不倫で生まれた子は私生児(非嫡出子)と呼ばれる。それよりは二人と結婚できた方が良い場合もある。身体的に子どもを産めない、性行為ができない女性は、離婚される可能性もあるが、一夫多妻のもとでは夫が他にもう一人妻をめとっても、彼女は妻の座に居つづける。
男性に都合の良い意見として、こういうのもある。「夫は四人妻が持てるから、妻は夫に嫌われないよう尽くす。一人しか持てないと、女は安心して家事をさぼったり外見をかまわなくなったりする。そっちの方が問題だ」。一夫多妻のもとでは妻は夫の気をそらさぬよう尽くし、夜はセクシー下着でがんばる。夫婦のマンネリ化が防げて夫婦仲が良くなる副次効果があるかもしれない。
いい男はすでに結婚している。それなら、経済力、包容力にあふれた男性をわかちあう。いっそのこと日本でも一夫多妻にしたら、結婚できて子どもを産める女性が増え、少子化緩和になるのでは? などとふと思ったりする。