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読書

『小泉今日子書評集』*読めば必ずその本が読みたくなる

ページをめくるたびに涙腺がうるんでしまう本。人に会う前に読むのは要注意です。
「小泉今日子書評集

2005年~2013年までの10年間、読売新聞に掲載された書評を集めたもの。

小説をメインに写真集、詩集、ノンフィクションなど97冊の本が紹介されています。

本屋で何気なく手に取り、数ページめくって美しい言葉が詰まったこの本を読まずにいられない衝動にかられました。

「この本は特別だ!」

その本が読みたくなる書評

読売新聞に書評を書くきっかけは、長年親交があった久世光彦さん(テレビドラマの演出家)の紹介だったそう。

最初の書評が載った日、久世さんから彼女にファックスが届いたときのことが、まえがきに書かれています。

「書評読みました。うまくて、いい。感心しました。kyonがだんだん遠くなるようで、嬉しいけれど寂しい。あなたの書評を読むと、その本が読みたくなるというところが、何よりすばらしい。それが書評ということなのです

 ロマンティスト久世さんらしいとてもきれいな直筆の文字を噛み締めるように読みながら私は泣いた。それから数年後、先に遠くへいってしまったのは久世さんの方だった。ある朝、突然逝ってしまった。久世さんからのファックスはもう届くはずないのに日曜日に書評が載ると電話機をつい確かめてみたくなる。天国にもファックスがあればいいのに
 その本を読みたくなるような書評をめざして十年間、たくさんの本に出会った。読み返すとその時時の悩みや不安や関心を露呈していまっているようで、少し恥ずかしい。でも、生きることは恥ずかしいことなのだ。私は今日も元気に生きている。」

(太字は私です)

以下は私が個人的に興味をひかれた本です。

『オバハン流旅のつくり方』

吉永みち子さんといえば、競馬のノンフィクションを書いた人だけど、こんな本も書くんだ! と興味をひかれた。

オバハン流は、人間ドックに行くのに、一人じゃ怖いからと仲間を誘い、「二泊三日桃源郷の旅」と銘打って山梨県の石和温泉病院ツアーを組んだりする。

おもしろい!

「年齢的にはオバハンの入り口あたりに立っている私だが、真のオバハンを目指して、次の休みには箱根の温泉あたりに出掛けてみいようかと思う。おいおい、その前に人間ドックに行け!と自分にツッコミ」
「オバハン流 旅のつくり方」

こんな感じで、彼女のその時々の思いのようなものも綴られていて、ほぼ同年代の私は、思わず引きこまれてしまったりします。

『昭和二十年夏、僕は兵士だった』

水木しげるや三國連太郎など、戦後に各分野で活躍を続けてきた5人の戦争体験を聞き書きしたノンフィクション。

毎日のように穴を掘って遺体を埋める、川でワニに襲われる、武器も食料もないい島で飢え死にする・・・。

兵士の多くは、死に際に「お母さん」とつぶやくような若い若者たちでした。

「仲間たちの死を心に抱えてこの人たちは長い時間を生きてきた。大正時代に生まれ、昭和を丸ごと体験し、平成もすでに二十一年。けれど彼らの回想は鮮明で、昨日のことのように詳細に語る。(途中略)戦争を体験した人の多くが、仲間の死を無駄にしないように、時が流れても忘れ去られてしまわないように、戦争で見た全てを自分の一部として生きていたのだろう。忘れないということが、静かな怒りのように私には思えた
「昭和二十年夏、僕は兵士だった」

戦争がいまにも始まりそうな気配の日本で、より多くの人に読んでほしい本です。

『頭のうちどころが悪かった熊の話』

動物を主人公にした寓話集。

どちらかといえば子供向けの本で、この本を読まなければ、きっと読まずに人生を終えたはず、と思うと出会えたことに感謝。

「大人になって、寂しいと感じるのは人に叱られなくなることかもしれない。出来が悪い子供だった私は、親や先生にうんざりするほど叱られていた。でも、そのお陰でいろんなことに気付かされたように思う。叱られながら守られていたのだと今になって感謝する。今でも時々誰かに叱られたいと思う。そんな時、私は本を読む。こんな風にこっそり何かに気づかせてくれる一冊にちゃんと出会えるからだ。」
「頭のうちどころが悪かった熊の話」

『愛のバルコニー』

「センチメンタルな旅」、「愛しのチロ」などで知られる天才写真家アラーキーが30年間撮り続けた自宅のバルコニーの記録です。

マンション自体が取り壊され、このバルコニーはもうなくなってしまいまいました。

「パラソルの下で食事すれば食卓に、水着でチェアーに座れば砂浜に、チロちゃんが走ればジャングルに、変幻自在に変化する楽園。愛ってなんなのだろう?いくら考えても答えに辿り着かないのだが、荒木さんの写真を見ているとわかりかけたような気持ちになる。こんな風に誰かに見つめられたいなあと思う。陽子さんが去り、チロちゃんが去り、恐竜や動物の玩具で埋め尽くされたバルコニーからはこの世の終わりのような始まりのような不気味な静寂を感じて切なくなった
「愛のバルコニー」

写真を撮る私は、この人はこういうふうに写真、写真集というものを見るんだなと思って興味深かったです。

おわりに

私は電車の中で、端の方に立って本を一心に読んでいる男性を見ると、なんとなく思わず見とれてしまうのですが、それは小泉さんも同じだそうです。

「電車の中とかでも、若いお嬢さんが文庫本とかを読んでいると、すっごいステキに見える。スマホをいじっているよりも断然! おじさまとかでも読書している人はいいなって思うし。」

彼女も電車の中でやっぱりスマホより本を読んでいるのかな。

いや、そもそも電車なんて乗らないのだろうか? などと想像して、ちょっと楽しくなりました。

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