2025-12-26

カナダ北極圏の先住民の村トゥクトヤクトゥク

カナダの北極圏に行ってきました。トゥクトヤクトゥク(Tuktoyaktuk)という北極海に面した小さな村です。人口は900人ほどで、9割が先住民イヌビアルイトの人びとです。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

イヌビアルイトはイヌイット系の人びとで、カナダ北極圏のうち北西部のノースウェスト準州などにくらしています。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

村は1年のうち半分が雪におおわれていて、寒いときの気温はマイナス40℃にもなります。私が行ったのは11月なかばでしたが、毎日雪が降りつずいていました。気温はマイナス10度くらい。

ちなみに北極圏とは、北緯66度33分より北にある地域のことです。1年のうち1日以上太陽が沈まない日と、1日以上太陽がのぼらない日があります。そして、その日数は北極に近づくほど多くなります。

私が滞在したときは太陽が顔を見せてはくれましたが、午前10時くらいまで日がのぼらず、夕方は4時に暗くなってしまいます。行動時間が限られてしまって、なんだか損したきぶんです。

村はずれにある巨大なタンク。年に1回、村全体が使用する1年分の重油がタンカーで運ばれ、ここに貯蔵されます。

北極圏の家

寒いのはとても苦手ですが、室内に閉じこもってばかりもいられません。防寒具を着こんで意を決して外に出ます。すると、こんな素敵な光景が。

男の子はしっかりつなぎの防寒服を着こんでいるのに、その上には毛布がかけられていて、お父さんのやさしさを感じます。

左後ろにある家のように、ここの家はほとんどが高床式です。ほとんど1年中土が凍っているので、床が地面についていると室内の熱が凍った土をとかしてしまい、土台が不安定になるからです。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

家のわきに燃料を入れるタンクがあります。日本の北の地方でよく見かけるものを、少し大きくした感じです。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

家におじゃましてみると、室内はこんなふうに現代的でした。レンジは電気式です。写真には写っていませんが、右手には冷蔵庫もありました。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

上水・下水は車で配給、処理されます。地面が凍っているので、地下に水道管があると水が凍ってしまいます。写真は下水を集める車。こうして定期的に家々を回っり、下水を処理しています。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

北極海を見下ろす場所に墓地がありました。村の人はほとんどがクリスチャンです。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

マイナス10℃の屋外でも、こどもたちは元気で、雪山をすべって遊んでいます。私が滞在した3日間、この子たちは毎日同じ場所で遊んでいました。厚着をしているとはいえ、雪の上をすべるって、お尻が冷たくないのかしら。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

氷にあなをあけて海の魚を釣る子どもたちも。右手の女の子は、動物の毛でつくった手袋を身につけています。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

釣った魚を見せてくれました。意外に釣れるものですね。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

釣れた魚は食べたりはしないそうです。昔は子どもたちは暗い中でも外で遊んでいたそうですが、今は室内でゲームなどで遊ぶ子どもたちも増えているそう。昔は何もやることがなかったからですが、今では真冬でもトラックでどこかに行ったり、テレビを見たり、ゲームをしたりと、することがたくさんあります。

古い住居ソッドハウス

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

村にはソッドハウスという古い住居が残っています。これが見事に極寒の地に適応するつくりでした。家は流木でつくられていますが、上部は土と雪でおおわれ、しっかり断熱されていました。

さらに出入りは玄関下の1.5mくらいの深さにほられたトンネルを通っておこなっていて、ドアを開け閉めしても、外の冷気が家の中に入ってこないようになっています。

中のようすです。かつては1つのソッドハウスの中に3、4家族がくらしていたそうです。

今はここで、週2回イヌビアルイト語の勉強会をおこなっています。中高年の人たちは幼いころ、政府とキリスト教団体が運営する寄宿学校に入れられ、英語や西洋教育を強制されていたため、イヌビアルイト語を忘れてしまった人が多いのです。

自分たちの言語を守り伝えていこうという意思のもと、村の長老でイヌビアルイト語を話せる人が、村の人たちに言葉を教えています。

北の果ての助け合い

村には2、3軒のスーパーがあり、一応ひととおいの食品はそろっています。しか食品のほとんどが南部から輸送されてくるため、価格は割高です。とくに野菜や果物などは、新鮮なものが手に入りにくい。かといって、家庭菜園で野菜がよく育つような環境ではありません。

このようなきびしい環境なので、人びとの助けあいが生きています。狩りや漁で得た食料は、家族や親戚、近隣の人と分けあってきました。クジラがとれたら、村の皆に声をかけ、集まってきた人は肉を持って帰るそうです。村の人びとは家族のような関係だといいます。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

近年はIRC(イヌビアルイト地域公社)が地域で採れた動物や果物を集め、イヌビアルイトの家庭に分配するしくみもあります。写真は村の共同冷蔵庫。村の猟師がとった動物や野鳥などの一部はここに集められたのち、イヌビクのIRCに送られます。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥクのカリブー

冷蔵庫の中には、捕獲されたカリブー(北アメリカに生息するシカ科トナカイ属の一種)、川や海でとれた魚などが保存されていました。

イヌイット(イヌビアルイト)の食

南部からの西洋風な食事の割合が増えているとはいえ、村の人は今もシロイルカやクジラをとって食料としています。肉・内臓・脂皮、骨など、ほぼすべてての部位を利用します。

カナダ北極圏イヌイットの食事

これは「マッタック」というイヌイットの珍味。シロイルカやクジラの脂肪がついた皮の部分。冷凍してあったものを、電子レンジで解凍したものです。食感はゴムをかんでいるような、硬く弾力のある感じです。

イヌイットやイヌビアルイトの人びとは、基本的に肉は生で食べ、食べきれないものは干すか冷凍しておきます。

カナダ北極圏イヌイットの食事

こちらは「オクソク」というクジラの油にひたしたアザラシやカリブーの肉です。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク スノーモービル

冬はスノーモービルが村民たちの足となります。しかし、時にハプニングが。

カナダ北極圏Tuktoyaktuk トゥクトヤクトゥク

海面をスノーモービルで渡ろうとしたところ、氷が薄いことに気づかず、海に落ちてしまった人がいるのです。写真落ちたスノーモービルを探す人たち。

例年ならこの時期、厚い氷がはっているのですが、温暖化で薄い氷しかはっていませんでした。雪の下で氷が薄いことに気づかなかったのです。さいわい乗っていた人は助けられました。本当によかったです。

*Tuktoyaktukの情報
https://tuktoyaktuk.ca/

 

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