女性の生きる選択肢という点では、日本は非常に恵まれています。「結婚はしてもしなくてもいい」「結婚はいつしてもいい」「子供は産んでも産まなくてもいい」。
かつての「結婚したら家庭に入る」「子供を産んで一人前」が当たり前だった時代に比べ、ずいぶん自由で豊かになりました。
その結果、人々の幸福度は上がったのでしょうか?
「幸せ」と「生きる選択肢」について考えてみたいと思います。
選択肢が多いゆえの悩み
選択肢が多いのは、たしかに自由で素晴らしいことです。
しかし「良いことだ」とは一概に言えないかもしれません。
選択肢が多すぎると逆に選べないということにもなるからです。
そして選択した後も悩むことになる。「結婚しないで仕事を続けていたら‥」「あのとき結婚していれば‥」と。
トレンドに乗せられる
選択肢が多いと、社会がつくったトレンドに流されやすくもなります。
日本では女性の「理想」の生き方がくるくる変わります。バブル以後、『これからは女性も仕事をもって社会で活躍する時代』などと声高に言われたかと思えば、少子高齢化が騒がれると『仕事よりも女性は結婚して』と。
その時々で(社会の都合の良いように)トレンドが変わり、確固がる軸が自分にないと、ブームに乗せられ振り回される。
そして「自分にとっての理想の生き方」より「社会が望む生き方」を選択しがちです。本来の自分の希望ではない生き方を、「これが自分の理想の生き方」と錯覚してしまうことにも。
『これからは女性も仕事をもって社会で活躍する時代』と言われたら、社会に出るより家庭に入りたい女性も、(そうか、やっぱり働こうかな)となる。
選択肢が多いと不幸になる
「選択肢が多いと不幸になる」という研究結果があります。
決断した後も「他の選択もあったのでは」と後々まで悩むからです。
一つ選択したら、他を捨てたことを後悔する。これが今の若い日本女性が置かれている状況です。
本当は選択肢が少ない方が、楽に生きられるのです。
もちろん生き方の選択肢が広がるのは良いことですが、一方でたくさんの理想の生き方を示され「どれを選んでもいいのよ」と言われると、どれを選ぶこともできない。1つ選んで後悔するのが怖い。今の日本は、そんな状況ではないでしょうか?
選択肢が多いと不幸になる
イスラム女性は日本女性に比べて人生の自由度という点では非常に限られています。年頃になれば、周囲のプレッシャーですぐに結婚させられる。結婚して2、3ヶ月のうちに「子供はまだか、まだか」が始まる。
子どもを産まない女性への風当たりは非常に強い。
もちろん社会で働く女性はたくさんいるし、高いポストについてバリバリ働く女性もいる。しかしだから結婚しない、とはなりません。結婚が宗教で推奨されているからです。結婚は神の命令。「結婚か仕事か」などと迷っている暇はありません。
独身の女性もいるが、結婚しない人生を歩むには、ある種の覚悟と強い精神力が必要とされる。
女性が自由気ままに一人で生きていくことは、社会が許しません。
これが私の居場所
しかし彼女たちを見ていて、私はこうも感じるのです。「生きる上での迷いがない」。
「女にとっての生き方とは、家族のために尽くし、次の世代を育てること」という揺るぎない価値観がしっかり存在している。
だから専業主婦でも「社会から孤立している」、「外にもっと楽しい世界があるかも」など焦ったりはしません。
私は決して「結婚して子供を産むのが正しい生き方だ」と言っているのではありません。
「自分の中でブレがない」ことが羨ましいと感じるのです。
「自分の居場所はここ」「自分はここで必要とされている存在」という確信があること。それが心の安定と幸せにつながるのではないかと。
本当の意味で自由になるには
だから時々立ち止まり、自分の心に聞いてみる必要があります。
自分は本当に働くことが好きなのか?
それとも家庭に入って子育てしたいのか?
家事も仕事も両方バランスを取ってやっていきたいのか?
「これは望む生き方ではない」と感じたら、1つ1つを捨て去っていく。
こうして徐々に選択肢を狭めていくことで、本当の意味での自由を得ることができると思います。
今の日本では、どんな生き方を選ぶことも可能なのですから。
【参考図書】
20年間の取材によるイスラム女性たちのリアルな日常を紹介。モロッコ、チュニジア、エジプト、イラン、パキスタン、モルディブ‥‥。歌あり踊りありデートあり。「抑圧」などメディアによって作られたイメージと違う、生き生きした女性たちの実像を紹介します。
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