イスラム教徒と結婚するので改宗するつもりだが、イスラム教について何も知りません。
一体どんな宗教なのでしょうか?
豚や酒がダメなのは知ってるけど、厳しい宗教なのかな?
コーランを読んだらわかるでしょうか?
イスラム教が「どんな宗教か」を知りたい方のために、簡潔にご説明します。
この記事を書いている私は、イスラム入門書『イスラム流幸せな生き方』など多数の本を出版しています。
ちなみに突然コーランを読もうとしても、イスラム教がすんなり頭に入る人は少ないでしょう。
(*コーランについては、「コーランとは?日本人が知らない真実」をお読みください。)
かつて私はエジプトに暮らし、エジプト人男性とお付き合いしていました。
ある日彼から「今日からこれ読んで」とコーランを手渡されたのです。
イスラム圏ではお付き合いイコール結婚。結婚にはイスラム教に改宗しなければなりません。
というわけで、さっそくコーランを開いてはみたものの、、、全くちんぴんかんぷんです。
さらにコーランはアラビア語で書かれています。
コーランは日本語訳でも読むのが難解な書物です。筋道だったストーリーがあるわけではありません。
結局彼とは破局になってしまいましたが、帰国後もイスラム教を知りたいと思った私は「イスラム教の基本」のような本を読みあさりました。
しかしどれも教義中心で書かれているためか、「基本」というわりには難しく、さっぱり頭に入ってきません。
こうしてイスラム教というものを理解するまでに、ずいぶんと試行錯誤した体験があります。
そこで入信を考えている人のために、予備知識が全くない人でも理解できる「基本」をお伝えします。
目次
イスラム教とは?
イスラム教は人生のガイドブック
イスラム教は日常のルールを定めています。
宗教のことだけでなく、飲食、商売、政治・経済・法律・社会など生活全体です。
いわば「いかに生きるべきか」を書いた人生のルールブックです。
そのルールが「コーラン」に書かれています。
(詳細:イスラム教とはどんな宗教?を簡単にわかりやすく解説【初心者向け】)
神(アッラー)とは?
イスラムにおいて、アッラー(神)は唯一無二の偉大な存在です。
その神にすべてを委ねるのがイスラム教徒としての生き方です。
「イスラム」とは「神にすべてをまかせる」という意味があります。
(詳細:アッラーとは何か?《1分で解説》)
コーランとは?
イスラム教の聖典。神の言葉がそのまま記されたもので、神が人間に下したルールが書かれています。
アラビア語の発音では「クルアーン」の方が近いとされます。
(詳細:「コーランとは?日本人が知らない真実」)
イスラム教徒の生活ルール
食事
イスラム教では食べて良いもの、悪いものが決められています。
食べて良いものを「ハラール・フード」と言います。
ハラールとは「イスラム法で許された」という意味のアラビア語です。
豚を食べてはいけないのは有名ですね。
豚以外にも、豚由来のポークエキスやラード、コラーゲン、ブタ由来の酵素なども禁止です。
(詳細:ハラール食品とイスラム教の食事ルール)
礼拝
1日5回、決められた時間帯にサウジアラビアのメッカの方向に向かって礼拝します。
断食
イスラム暦の「ラマダン月」の1ヶ月間、日中に飲食を断ちます。日が暮れたら飲食は自由です。
(詳細:イスラム教のラマダンとは?)
女性の服装
肌や体の線を見せない服装をするのがルールです。これは女性が男性から身を守るためです。
なぜ髪の毛を隠すのは厳密には義務ではありません。しかし多くのイスラム教徒の女性はスカーフなどで髪を隠します。
どれだけ守るかは個人次第
イスラム教は個人と神との契約です。他人の信仰について、とやかく言うことは正しくありません。
断食していない人を咎めたり、スカーフを被っていない人に「被らないのか?」と言ったりすることです。
どれだけ守るかは個人次第です。個人がそれで納得していれば、それでよしとされます。
そういう意味でイスラムはきわめて個人主義です。
ルールに従うというと厳しいイメージがありますが、これは正しいのか間違っているのか、その判断を自分で下す必要がなく、神に委ねればいいので楽です。
またイスラムの戒律はゆるやかです。
ラマダンの断食は体調が悪い時まで強制されず、豚肉の禁止も他に食べるものがなければ食べることを許されています。
結婚と夫婦生活
イスラム教の結婚の特徴は、①「契約」②「女性保護」③「男女別姓」④「一夫多妻」です。
①結婚は契約
契約なので、妻と夫の義務と権利があります。
あらかじめ車や家電など財産の分配を取り決めておきます。
互いに合意すれば結婚契約書に署名します。
夫の義務は生活費を負担すること、性行為を行うこと。
妻の義務は家庭内の運営に責任を持つこと、性行為をすること。
イスラム法では夫だけに離婚の権利を与えていますが、夫が義務を怠った場合は妻からも離婚が請求できます。
(詳細:【永久保存版】イスラムの結婚ルールとは?)
②女性保護
イスラムの結婚では男性の責任が非常に重くなっています。
男性はマフルという結納金や貴金属の贈り物などを女性に送ることになっています。
離婚した場合に、夫が妻に払う慰謝料も、あらかじめ決めておきます。
これは「後払いのマフル」といい、アラブ社会では「前払いのマフル」よりかなり高額です。
結婚しても、生活費は原則すべて男性の負担です。
③男女別姓
結婚しても妻は姓が変わりません。
イスラム教徒の名前は、「自分の名前(例:モナ)+父親の名前」です。
もし子供を連れて離婚した場合、子はそのまま「自分の名前+父親の名前」を引継ぎます。
女性や子供の姓が変わることで、社会的な不利益をこうむるのを防ぐためです。
④一夫多妻
夫は4人まで妻を持つことができます。ただし妻たちを平等に扱うことが条件です。
(詳細:イスラム教の一夫多妻とは?女性たちはどう思っている?)
イスラム教の初心者におすすめの入門書
一般向けのイスラム教の本の中では、これが一番わかりやすいです。
「断食はつらいのか?」「ベールで覆われたイスラーム女性は、かわいそうな存在なの?」 などのイスラム教への偏見について、その実際を家族3人の会話スタイルで語るもの。
タイトルからスピリッチュアルな雰囲気もただよいますが、内容は極めて論理的です。
ラマダンの断食、女性のスカーフ、アッラー、礼拝など、イスラムの基本をわかりやすく解説。
これ一冊でイスラム教の基本をひととおりカバーできます。
コーランからの引用も豊富で、コーラン入門書としても最適です。
イスラム教の根底にある思想、価値観を知ることができる本です。
まず1つは人間は弱いものであるということ。
弱いからこそ、病人や貧しい人、高齢者など弱い状態に置かれている人に手を差し伸べることが、イスラムの義務とされます。
これは、人間が強いもので、人間が自然を支配するという近代西欧の考え方と対照的です。
もう1つは「ラーハ」が大切にされているということ。
ラーハとは、日本語に訳すと「しあわせ」「いこい」に近いもの。
家族と共に過ごすこと、祈りを捧げること、旅をすること知識を得ること、詩を歌うこと、瞑想すること、ぼんやりすること、寝っ転がることなどです。
そして、イスラムではこのラーハの時間をたくさん持つことが、人間らしい、いい生き方だとされます。
読了後は、とてもゆったりとした気持ちになれる。そして、なぜイスラムが世界中の人を惹きつけているのかがよくわか流本です。
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