(いつまでも若々しい人は、やりたいことをやっている人たちかも。)
そう思ったのは、80代の素敵なご夫婦に会ったから。どう見ても60代くらいにしか見えない。
場所は東京の檜原村。森の中に一軒の可愛らしい郵便局風の建物がありました。雑貨屋です。
もしかしてこれは本当に郵便局だったのかな?
そう思って、レジの奥さまに声をかけると、「これは移築してきたんです」
そして、「2階がもっと素敵なんですよ。ご覧になります?」
店内にお客さんがいるにもかかわらず、私を2階に案内してくれました。(ふだんはクローズドになっています)
ほんとだ!
思わず(ほーっ)と声を出してしまいました。
高い天井と渋い風合いの床。
「ここでコンサートやったり展覧会をやったりするんですけど、最近はコロナの影響もあって、やってないんですよ」
それはもったいない。
*
移築したのは26年前。
↑移築前の郵便局の姿。
村の中心にあった郵便局が取り壊されることになり、惜しくてたまらなくなったご主人は、自分が引き取ることを決意。
大工でもないのに自分で解体し、ここに移築したのです。
お住まいは府中ですが、それ以前から檜原村が好きで、よく通ってきていたそう。
当時57歳。会社を退職し、1年間木工の学校に通い、その後移築にとりかかりました。
その時は親戚中が大反対したそうです。
「主人は言っても聞かない人だから」と奥さんは、しぶしぶ黙認。
↑当時、郵便局内で使われていた電話機。
郵便局はそれまで局長さんの家の物置になっていて、2階はヘビやハクビシンの巣になっていたそう。
いやはや、それを一人で片付けたとは。
壊すのも一人。どの木がどこに使われていたか、材木に印をつけて、わかるようにしないといけません。
それをしないと、移築後にうまく再建できない。その作業は複数より、一人でやった方が良いのです。
そして材木を運ぶのですが、山の中は車が通らないので、電動の車(これがどういうものか?はちょっとわかりません)に乗せて運んだそう。
さすがに建てるのは地元の大工さんに手伝ってもらったそうですが。
↑2階の窓から外を見下ろしたところ。右の赤いジャンバーがご主人。
*
「今はやってよかったと思っています。人生2度生きている感じ」と奥さん。
彼女の生き生きとした問わず語りに、ただ聞き続けていた私は、てっきり60代くらいかなと思っていました。
が、「娘はもう50代ですけど、この店を継ぐつもりはないんですよね」
「主人はもう80才なんです」
そんな言葉を聞いて、ようやく80才くらいだと知ったのです。ほんと、びっくり。
やりたいことをやりたいようにやっている方は、きっといつまでもお若いのだろうなあ。
我が道を貫き通したご主人は、まるでやんちゃ坊主がそのまま大人になったような表情をしていました。
【お店の情報】
森のささやき