今も内戦状態が続くシリア。この国の魅力は、なんといっても「人」でした。
「世界一心温かな人たち」。
それは決して誇張ではありません。
私がシリアを訪れたのは、1990年代と2011年の2回だけです。
それでも、シリア人の心の温かさは今でも心に焼き付いています。
シリア人の心の温かさ
ダマスカスのパン屋で。
カメラを持って乱入して勝手にバシバシ写真を撮っている私に、イヤな顔ひとつせず、淡々とパンを焼いていたお兄さん。
ダマスカスの旧市街でアイスクリームを食べながら歩いていた若い女性たち。
小学生の頃から一緒に学んだメンバーと、定年後はこうして毎日トランプをして暮らす日々だそう。
シリアが教えてくれた人生で大切なこと
シリア難民の支援活動をしている方にお話を伺いました。
彼は隣国ヨルダンに暮らしながら、シリアの紛争から逃れてきた難民を支援しています。
彼がシリアで会ったある村長の話が印象的でした。
そこは決して豊かとはいえない、でも素朴で緑がとても豊かな村。
村長は、彼を前に胸を張ってこう言ったそうです。
「この村には、何でもあるだろう!」
彼は内心笑ったそうです。
(田畑と動物以外、何もないじゃないか)
日本のように映画館もなければデパートも本屋も、ゲームセンターも、およそ娯楽とよべるようなものは、なんにもない。。。
しかし村長は言うそうです。
「ここには家族がみんないる。土地もある、ヒツジも牛もいる。。。」
それを聞いて、彼ははっと目の覚めるような思いがしたそうです。
何もないように見えた素朴な村の持つ、とてつもない豊かさ。
「シリア人にとっては、生きる事の中心に宗教としてのイスラムがあり、家族があり、その片手間くらいに仕事がある」と思ったそうです。
私もシリアで同じような経験をしました。
「ハマ」という町の近くの村に行った時、村長さんの家に招かれました。
彼は突然の訪問者である外人の私に食事やコーヒーや飼っている羊のミルクを振るまってくれた上、「この家に一ヶ月いたら、君もわしらの言葉がペラペラになるさ」とまで言うのです。
ヨソ者である私を、まるで家族のように温かく迎えるシリア人の温かさは衝撃的でした。
その村にも、緑と羊と大家族の団欒の時間しかありませんでした。
でも、それがあれば十分では?
家族と身の回りの豊かな自然。人生にとって一番大切なものは、おそらく、そういったものでしょう。
娯楽や仕事は、いってみれば人生の「おまけ」。
でも今日本では、この「おまけ」のほうが大事にされている。
そんなことを思いました。
早く平和が訪れることを心から祈っています。
シリアの話は、こちらの本に詳しく書いています。シリア、オマーン、チュニジア、モロッコなどイスラム圏を女性一人で旅した旅行記です。