タフロウトからアイト・マンスール渓谷へ行きました。
アイト・マンスールは、タフロウトから南へ約30kmの場所。
ここに向かったのは、アメルン渓谷でランチしたchez amaliyaの従業員に勧められたからのがきっかけです。
渓谷では、「グダルト(Gdourt)」という村に泊まりました。
廃村ですが、その中に唯一住み続けている家族がいて、民宿をやっているのです。
宿の名は「シェ・ラシード・オーベルジュ(Chez Rachid auberge)」。
タフロウとから1時間ほどでアイト・マンスール渓谷に到着。
さらに、15分ほどでグダルト村に着きました。
あらかじめ宿に電話を入れておいたため、バスの到着に合わせて主人ラシードさんが迎えに来てくれていました。
予約しておいて、よかったです。というのも廃村の中は道が入り組み、とても自力では宿が見つけ出せなかっただろうから。
このラシードさんは、なかなか個性強い人物で(他人の事は言えません)、彼との滞在はとても思い出深いものになりました。
目次
アイト・マンスール渓谷の宿:シェ・ラシード・オーベルジュ(Chez Rachid auberge)
「これがわしの家じゃよ」。
ラシードさんが1軒の家の前で止まりました。
なんのことはない、オーベルジュは「彼の家」でした。つまり民宿です。
2階の広いリビングに通されました。
滞在中はこのリビングに寝泊りしました。(角にラシードさんが布団をしいてくれました)。
まず、ラシードさんが用意してくれたお茶で喉をうるおします。
モロッコ人は誰でもポットを高い位置にかかげ、上からお茶を注ぎます。
よくこぼれなませんねえ。おみごと。とてもマネできません。
オーベルジュ・ラシードのランチ
お腹すいてる?とラシードさん。
うんと答えると、「じゃ、これからお昼の用意をしますね」と、どこかへ姿を消しました。
20分くらい1人で待たされます。
上でミシミシと歩く音がします。どうやら上で食事の用意をしているらしい。
やがてラシードさんが食事を持って現れました。
ランチは牛肉のタジン。にんじん、じゃがいも、ズッキーニ、オリーブなど野菜がたっぷり。
パンは奥さんの手作り。サラダは控えめな味つけでした。
オリーブも塩気が少なく、マイルドな味。
写真には写っていませんが、自家製ニンジンジュースもいただきました。
ラシードさんはマラケシュ生まれ。
お父さんがこの村の出身で、16年前にここに移り住んだそうです。
今は畑でとれた野菜やナツメヤシを売ったりして生計を立てていらっしゃるとのこと。
「自然の生活が好きだから」とラシードさん。
「それに、ここはとても静かだし」。
食べ終わると、家の中を案内してもらいました。
3階はテラスと上の部屋、テラスの奥に台所があります。
台所仕事を担当するのは主に奥さんですが、ラシードさんも始終、かいがいしく手伝います。
かなりマメな男性。
奥さんはティズニットの近くの村の出身です。
「ここに暮らしていてハッピーですか?」と聞いたら、「とってもハッピーよ」。
2人のなれそめは、彼がナツメヤシを売っている時に、お客として買いに来た奥さんに一目惚れ。
その場でプロポーズしたそうです。
この「会ってすぐにプロポーズ」、モロッコ(に限らず中東)ではよく聞きます。
異性との接触が限られているイスラム社会では、ピンときた出会いを逃すと、いつまた出会いがあるかわからない。
だから「いいな」と思ったら、すぐにプロポーズするのでしょう。
「後で散歩しよう。今は暑いから、昼寝でもしてて」とラシードさん。
食事をいただいた広いリビングにシーツをしいてくれました。外は40度近い暑さです。
遠くでアザーン(モスクの礼拝の呼び声)が聞こえます。
アイト・マンスールのハイキング(1日目)
日がやや西に傾く頃、ラシードさんと渓谷のハイキングへ。
片道1時間半ほどの行程です。
モロッコの「グランドキャニオン」と呼ばれるアイトマンスール。
途中の景色はグランドキャニオン風の谷間があったり、木々が生い茂るオアシスがあったりと、かなり見応えありました。
これは泉の水だそうです。私もおそるおそる飲んでみましたが、なるほど美味しい。
ちなみに飲んだ後もお腹の調子は大丈夫でした。
行かれた方は、ぜひモロッコの泉の水の味を堪能してください!
ラシードさんは、ナチュラリストと自称するだけあり、しばしば立ち止まっては「これがイチジクの木」「これがレモンの木」などと教えてくれます。
時々、道端にある枯れ木などを(他の人が歩きやすいようにか?)杖でわきにどかしたり。
歩き始めて30分。「フェエゲル」という廃村がありました。
他にも人が住まなくなった民家が途中いくつもあり。
ようやく終点に到着し、売店で一休み。
店の前にテーブルと椅子があり、座ってお茶が飲みます。
砂糖がたっぷり入ったミントティーを飲みながら疲れを癒しました。
テーブルの裏は椰子の木林になっていて、葉っぱがゆれる音に耳をすますのも良い気分。
アイト・マンスール渓谷の中には大きく5つの村があります。
このカフェがあるのは「ティウティ」という村。
ティウティ村には30人くらいが暮らしているそう。
他にテムサウト、アグディム、タムルート、ティウリなどの村々があります。
たっぷり運動したので、夜はぐっすり眠れました。
アイト・マンスールのハイキング(2日目)
朝食のあと、またラシードさんとハイキングへ。
前日とは反対方向にある、古い村ファフィル(Fafil)村へと向かいました。
ラシードさん宅での滞在、なかなか盛り沢山です。
グダルトから歩いて30分。ファフィル村が見えて来ました。
古いオリーブの圧縮機がありました。
木の棒を家畜に引かせて、オリーブの実をすりつぶして油をとります。
ちょうど古い家の持ち主(左の若者)が現れたので、今は使われていない彼の家を見せてもらいました。
古い民具が残されていました。まるで博物館みたい。
昔の「バッブーシュ(モロッコの伝統的な靴)は、こんな感じだったのですね。
2階の部屋。天井の装飾の色が綺麗に残っています。
天井の梁にはヤシの木が使われています。
家を出ると、目の前におばあさんが座ってらっしゃいました。
前の家で1人で暮らしているとのこと。
なんと94歳だそう。(この点、ほんとうかなあと思いますが、案内してくれた若者も本人も口をそろえるので、きっと本当なのでしょう)。
ずいぶんお若く見えますね。
かつてはさぞかし美しかったことでしょう。
「1人で暮らして大丈夫なのですか?」ときくと、「毎朝同じ村の人が様子を見にくるからね」。
息子さんがマラケシュに暮らしているけれど、おばあさんはもちろん生まれ育った村の方が好きだそう。
おばあちゃん、いつまでもお元気で。
金曜日のクスクス作り
ハイキングのあとは、お母さんにクスクス作りを教えていただきました。
クスクスは世界最小のパスタ。モロッコ、チュニジアなど北アフリカの人々の国民食です。
作り方については、こちらで詳しく紹介しました。→モロッコの民宿で女将のクスクス作りを見学
「シェ・ラシード・オーベルジュ(Chez Rachid auberge)」の情報
ネットからは予約できないため、直接宿に行くか、電話で予約することになります。
Tel: +212 677-731548
場所がわかりにくいので、迎えにきてもらうのがベターです。
宿代は食事込み1泊250ディルハム(約2700円)(2018年7月)。
食事代、ハイキング代込です。
タフロウトからアイト・マンスールへの行き方
アイト・マンスール、グダルト行きバス乗り場
写真左の黄色いバスです。
タフロウトの町の中心にある「アフリキヤ・ガソリンスタンド」の前から出ます。
出発時刻はおよそ午前11時〜12時。私の時は12時近くに出発しました。
お客の集まり次第などで時間が前後する様子。
便数は確かめませんでしたが、おそらく1日1便のようです。
早めにバス停に行って席を確保し、出発まで近くのカフェなどで時間をつぶすのが得策。
ちなみにタフロウト→アイト・マンスールまで車をチャーターすると300〜350ディルハム(4千円)ほどです。
チャーターしても良かったのですが、地元の人がどんな乗り物に乗るのか興味があったので、バスにしました。
アイトマンスール・グダルト までの道中
タフロウトの町を出てしばらくすると、車は山を登り始めます。
途中の風景はずっとこんな感じです。
アイト・マンスールは、実は海外やモロッコ人のサイクリストが好んで行く場所です。
だからけっこう簡単に行けるのかと思ってましたが、とんだ間違いでした。
アップダウンが激しいし、途中無人の荒野がずーっと続きます。
自転車がパンクなどしたら、この炎天下、なすすべがありません。
景色だけは良いですが。。。。
チャレンジしても良いのは、よほど体力に自信のある方だけです。
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