中東ー人と人とのぬくもり

中東の写真を撮っているというと、「危ない目に合わないの?」とよく聞かれます。
「中東=怖い、危険」 おそらく多くの人が描くイメージでしょう。
私も足を踏み入れるまで、そう思っていました。
結論からいえば、中東ほど治安がよく、旅がしやすい場所はないように思います。
凶悪な犯罪は、日本や欧米などよりずっと少ないかもしれません。
今から十年以上前、写真のテーマを求めて、アジアとアフリカを旅しました。
当時会社員をしていた私は、写真の仕事がしたいと思っていましたが、何をテーマに撮ったらいいか、わかりませんでした。やや無鉄砲ながら、海外を歩いて、それを見つけようとおもったのです。若いときに広い世界を見てみたいという気持ちもありました。
タイを起点に西へ、陸路で世界一周するつもりでした。
結局、その旅は10ヶ月後、エジプトにたどり着いた時点で終わってしまいました。
この国に住んでみたい、この国の写真を撮りたいと思ったからです。
知り合えば、気軽に家に呼んでくれ、途を聞けば目的地までつれていってくれるエジプト人たち。首都のカイロは、アフリカ一の大都会ですが、人びとは驚くほど素朴でお好しです。
私はこの国がたちまち好きになり、世界一周するつもりだった旅を放棄し、そのまま一年エジプトに住みついてしまいました。
思えば、人々のそのような人柄は、エジプトにくる前に滞在した他の中東・イスラムの国々も同じでした。バングラデッシュ、イラン、トルコ、シリア、ヨルダン・・どこでも行く先々で、 知り合ったばかりの家に呼ばれ、食事やお茶をもてなされたこと数知れず。

家によばれると、たいていは大家族で、食事時になると、丸い大きなテーブルを部屋の真ん中において、皆がそれを囲んで食事します。
子は親を大事にし、かいがいしく家事の手伝いをする。
どこにも家族を大事にする、平凡だけれど、慎ましく和やかな家庭生活がありました。
路地もたいてい安全で、どこでも子供たちが元気に遊び回っています。日本の都会ではあまり見られなくなった光景です。
一方で誰もが女性一人旅の私を心配してくれ、これから私が向かう場所に知り合いがいるからと連絡先を手渡してくれたり、目的地まで同行してくれたりしました。
心の温かさや人と人とのつながり。中東やイスラムの国を旅して感じるのは、そんなことです。
この人たちの間にいると、なんともいえない安堵感やぬくもりを感じるのです。
そして、それはなぜかと考えたとき、宗教すなわちイスラム教が、しっかりと生活の根底に根付いているからだと思うようになりました(宗教のことは後述します)。
しかし、そういったことは、日本ではほとんど知られていません。中東の現実は、日本で伝えられているイメージとはずいぶん違います。
日本でニュースになることといえば、たいていは紛争や事件のことで、人々の暮らしや人柄といったものがニュースになることはないからです。
ニュースだけではわからない、中東の人々の生の人間くささやぬくもり、イスラムに根付いた心穏やかな暮らし。そんなものを伝えていきたい、当時の私は漠然とそんなことを考えていました。
そしてその思いは、今でも変わっていません。