「女ノマド、一人砂漠に生きる」(集英社) 

「女ノマド、一人砂漠に生きる」書影

【出版社】集英社

【定価】 本体760円+税

【初版年月】 2012年12月14日

【ISBN】 978-408720672

帯のコピー》0001


どこに行って何をしようと自由さ

《表紙裏》

息子はね、母親のオッパイすってるうちは母親のことを思ってるけど、大きくなると忘れてしまう。

いい年して独身より、妻のいる男とでも結婚する方がマシ

 

夫や子どもたちと離れ、たったひとりでラクダを連れてエジプトの砂漠で暮らす女遊牧民サイーダ。私は彼女と遊牧生活をともにするなかで、これまで自身で思い描いていた、素朴で自由な“ノマド”像とのギャップに困惑しながらも、彼女のたくましい生命力に惹かれていきます。

結婚するまでお互いの顔をほとんど見ないという「恋愛」事情や一夫多妻のリアルな内実など、急速に変容するイスラム社会にあっても、日本とはまったく異なる価値観で力強く生きる一族の女たちを鮮やかに描いた渾身のノンフィクションです。

砂漠に生きる遊牧民女性

目次


<第1部 ひとりの砂漠>
第1章 もうばあさんだから、男はいらない
第2章 だからオトコをつれて来いと言ったのに……
第3章 なぜ1回につき30分も祈るのか?
第4章 雨で人も物も流される
第5章 お客様あつかいの頃をすぎて

<第2部 うつりかわり>
第6章 集まって暮らす憂鬱
第7章 記憶のかなたの砂漠
第8章 砂漠の民VS町の民
第9章 愛は結婚後

<第3部 男と女>
第10章 白いハンカチと赤い口紅
第11章 結婚は人生の半分
第12章 妻はふたり
第13章 嫉妬と中傷

エピローグ 未来への変化                 

各誌書評

朝日新聞 読売新聞 日刊ゲンダイ  読売新聞コラム 週刊現代 アラブ
j-castコラム「イスラムの日常」今こそ知りたい コーラも好きな「普通の」人々

内容紹介・感想

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砂漠に生きる遊牧民女性

詳しい内容

エジプトの砂漠に遊牧民のホシュマン族が暮らしている。10年以上続く干魃のため、ほとんどの人が砂漠を去り、観光業で働くようになった。今でも遊牧を続けているのはわずか数家族にすぎない。そのうちの一人、サイーダ(女性・60代)は、ラクダを連れて一人で砂漠に暮らしている。泉で水を汲み、月明かりで食事をし、砂の上で寝る―自然と密接に関わる暮らしに加え、彼女のたぐいまれな茶目っ気やユーモア、何より遊牧民として生きることへの確固たる自信と誇りにあふれた姿に私は強く惹きつけ

られた。そして砂漠に残された彼女の足跡をたどって会いに行く旅は7年におよんだ。

90年代以降、ほとんどの遊牧民達は古くからの生活様式を捨て、定住地で観光業に就くことで、経済効率優先の社会に取り込まれていく。そして、長く守り続けてきた文化と近代的西洋的な価値観との狭間での心の葛藤に翻弄され、遊牧民同士の軋轢に心を悩ませる。その一方、人間や動物の足跡を見分け、砂漠の薬草で病気を治すなど彼らの優れた知恵は失われつつあった。

この地球上から消えようとしている遊牧民の暮らしを深く知り、記録しておきたいという気持ちにかられた私は、定住地や町に暮らす遊牧民達を訪ね歩き、彼らの記憶の中に生き続ける生活、文化、伝承などに耳を傾けた。時代の移り変わりを見つめる彼らの言葉には、現代社会に対する鋭い洞察と批判に富んでいた。たとえば、ある女性は言う。「昔私たちは皆一人で砂漠で出産した。農薬を使っていない食べ物を食べていたから産むのは楽だった。農薬は食べ物を必要以上に大きくする。だから今の農薬を使った食べ物を食べるとお腹の子が大きくなって難産になる」。その言葉は、便利さや経済効率を追い求める中で忘れてしまった人間本来の生きる力や知恵を思い起こさせ、人としていかに生きるべきかを私に気づかせてくれた。

  取材を続ける中で、次第に私の中に「女として生きること」への新たな関心が生まれていった。なぜなら遊牧民社会・イスラム社会は男女の世界が鮮明に隔てられた社会だからである。最終部では主に女性達の生の姿にスポットを当て、彼ら特有の「恥」の概念とイスラムの2つを手がかりに「遊牧民社会で女として生きることはどういうことか」を掘り下げていく。女性にしか知り得ない遊牧民女性たちの内面に入り込み、彼女達の生の心情や喜怒哀楽を生き生きと描き出すことで、日本でイメージされがちな抑圧された中東女性像・画一化されたイスラム女性の姿とは一線を画した姿を浮き彫りにする。