ブログの記事を無断転載され、弁護士を通じて損害賠償を払ってもらった方法

自身がネット上にアップした写真や文章を勝手に使われて、くやしい思いをした人は多いでしょう。

めんどくさいからとそのままにしてしまったり、裁判を起こすにもお金がかかるから泣き寝入り、というケースも少なくないと思います。

私が記事を無断で転載された際に、弁護士を通じて損害賠償金を払ってもらいました。

法律の専門家を通すことで良い方向に解決することもあります。

同様の体験をされた方の参考になればと、経緯をご紹介します。

無断転載を発見

今年4月、なにげなくネットを見ていたら、ある記事が目にとまりました(今は消されています)。

なんと自分の記事。

日本人が知らない「イスラム圏の性事情・男女付き合い」について(1)

(2/13)

(5/13)

●コピー元の記事

イスラム圏にセックスレスがない理由

婚前交渉が禁止されたイスラムは「禁欲的」なのか?

この2記事を1記事に合体したもの。写真だけ差し替えて。

相手のサイトを少し見ると、次々に無断転載記事が出てきました。

運営元は旅の情報商材を売る会社(T社)。各記事に商材のリンクが貼ってあります。

苦労して書いた記事が、勝手に他人の商売の道具に使われるとは!!!

しかも「イスラム 性」などで検索すると、相手の方が上位に表示される。

投稿日が書いてないから、まるで私が無断転載したように見えてしまいます。

友人知人に話したところ、弁護士に相談した方が良いと言われ、思い切ってそうすることに。 

弁護士を探す方法

といっても、普通の人が弁護士に依頼するというのはハードルが高いでしょう。

私もそうです。

弁護士ドットコムというサイトがあり、そこでインターネット問題に詳しい弁護士を調べました。

メール相談だけなら無料という方も多い。
とりあえず何人かにメールを送って相談します。

弁護士の方々からの答えを総合すると、内容証明で削除と損害賠償請求を要求するのが得策のようでした。

削除だけでは、相手が「何かあれば削除すればいい」と思うことになってしまうからです。

告訴」という手もありますが、受理される可能性が低いとのこと。

インターネット問題に詳しい弁護士を

一番わかりやすい返事をくれた弁護士と、後日面談することに。

その方はインターネット関連の相談は無料。

ところで、先に書いたように、相手の記事には投稿日が書かれていません。

ある弁護士が、「これでは、常見さんと相手サイトのどちらが先に書いたか、証明がむずかしいですよね」
とおっしゃいました。

投稿日はHTMLソースを見ればわかります。

弁護士の方は文系が多く、これを知らない方もいます(私も知りませんでした)。

できればITに詳しい方が安心です。

 

著作権侵害による損害賠償額の算定

損害賠償額に明確な基準はなく、弁護士と相談して決めることになります。

ただ第三者が納得する金額であることは必要。

写真ならレンタルフォトの金額を参考にすることもあります。

私の場合、上の2記事は、これまで20年以上にわたるイスラム圏への取材で書かれたものということで、1記事についての経費が100万円。
これが損害賠償額とされたました。

2記事で200万円です。

法外な額に思えますが、出版関係者や過去弁護士に依頼したことのある知人らは、おおむね妥当という意見でした。

「こういう時は自分の欲しい額の4~5倍を要求するのが普通」だそうです。

大切なのは「著作権侵害は重大な違法行為」と相手にわからせること。
そのための金額です。

自分の苦痛がどれほどかを相手に分からせる意味もあります。

相手が払うかどうかは、また別。
以降は交渉です。

ただ金額によっては交渉が難航することも考えられ、状況の見極めが必要になります。

また仮に裁判になった場合、確実に勝訴できる金額を請求することもあるそうです。

「私の写真や記事には何百万円もの価値なんてない」
そう思われる方も多いでしょう。

どこかに出かけて書いた記事がパクられた。
それには交通費や宿泊費がかかっています。

「これは自分にしか撮れない写真だ」と思うものもあります。

勝手に使われた悔しさが100万円に相当すると思えば、慰謝料100万円請求すれば良いでしょう。

以後は交渉です。

私は記事と写真で収入を得ていますが、著作物を勝手に使われた精神的苦痛は、プロ・アマは関係ありません。

慰謝料

損害賠償額に加えて、「慰謝料」を請求するため、その算定をしました。

慰謝料は、過去の判例などから数十万円くらいが平均だそうです。
欧米などに比べれば、かなり低い金額。

日本では「知的財産権」(著作権や特許権など、知的活動から生まれる創造物に関する権利)は軽く扱われているからです

著作権には「財産権」と「著作者人格権」があります

私のケースでは、2記事を勝手に1記事に合体されたので、著作者人格権のうち「同一性保持権(自分の著作物を勝手に改変されない権利)」も侵害されたことになります。

これについての慰謝料50万円を請求することになりました。
(参考:著作者人格権侵害に基づく損害の額の算定

損害賠償額と慰謝料合わせて、トータル250万円を請求する文面などを書いて、内容証明を発送してもらいました。

内容証明は送る前に見せてもらえるし、見て気に入らなければ訂正も可能です。

弁護士に内容証明を送ってもらう費用は5万円ほどです。

 

無断転載の証拠を保存

パクられたのを見つけた時点で、証拠保存しておくとよいでしょう。

自分でやる場合は、魚拓などで保存します。

私の場合は、弁護士が以下のものを保存してくれた。

①当該ページのHTMLファイルそのものと,ページに引用されている画像等のファイル群

②問題ページをPDFプリントしたもの

③ソースコードをコピーしたテキストファイル

相手からの返答

相手からすぐに返事がありました。

「自分たちも被害者だ。ライターがコピー記事を書いたとは知らなかった。ライターを訴えてくれ」と。

このサイトでは、誰でもライターとしてユーザー登録できるシステムで、ライターがどういう人物か知らなかったとのこと。

ライターの支払先の口座はわかるが、本名や連絡先はわかりません。

さらに弁護士が問い合わせると、次々に新事実が判明しました。

ライターの書いた300記事のすべてが盗作で、それらをほとんどチェックせずに載せていたという。

他人に読ませてお金をとる以上、サイト運営者が事前にチェックするのが道義です。

ただ悪いことをした意識はあるようで、10万円なら払ってもよいと言ってきました。

ライターに責任を丸投げ

T社は著作権ページを変更。
ライターへの責任転嫁を強化する方向に出ました。

「問題があればすぐにライターの個人情報を開示する」
との文言が加えられていました。

このように、運営者だけで十分な閲覧数や広告料を稼ぐのは無理があるため、外部ライターを使って記事を書かせ、広告費や商材を稼ぐキュレーションサイトとよばれるものは多いようです。

何か問題が起これば、ライターに責任転嫁します。

中川淳一郎氏の近著「ネットは基本、クソメディア」には、ウェブライターのヨッピー氏が、「Spotlight」というサイトに記事をパクられた件が紹介されています。

ヨッピー氏は、パクったライターにペナルティを課すのを躊躇することについて、こう述べています。

「「届け出をしてくれればライターの個人情報を渡すからライターを訴えろ」って事なんですよね。ひどくないですかこれ。なんのための編集部なんだっていう話です。

 こういうトラブルが起こった際に書き手であるライターを生贄に差し出すような真似をし、自分たちはきっちり利益の上前をハネておいてその責任は知りませんってそんなひどい話あるか、って思うんですよ。」

(「ネットは基本、クソメディア」137ページ)

 

サイト運営者の責任と「プロバイダ責任制限法」

こういう場合、サイト運営者に責任を負わせる法的根拠はあるのでしょうか?

紙媒体なら、 出版社に掲載記事が他人の権利を侵害していないか調査する義務があり,それを怠れば責任が発生するという原則が確立しています。

これは,インターネットサイトでも同じです。

その判例があります。

「著作物である投稿記事を自社サイトに掲載して発信する者は,その発信行為によって他人の著作権を侵害しないよう,掲載情報のすべてについて著作物該当性,著作権の成否・存続,著作者の氏名,利用可能性等を調査し,著作者が判明した場合には利用条件の交渉等を経て許諾を取り付ける義務があります

いわゆる著作権処理。知財高裁平成19年5月31日判決等参照)」

キュレーションサイトは「場を提供しているだけだから、「プロバイダー責任制限法」により責任は問われない」と言い逃れをします。

(「プロ〜法」は簡単に言えば、権利侵害が起こっても、プロバイダは賠償責任を負わなくて良いという法律です)。

しかしライターを募集し、原稿料を払っているのであれば、メディアであってプロバイダではありません。

請求額を減額

その後、弁護士から相手に以下を連絡しました。

・著作権侵害記事をサイト上に多数掲載し,それらを利用して収益を図っていた行為は,法的にも社会的にも厳しく非難されるべき。

・①サイト運営者の責務として、他人の著作権を侵害する記事が掲載されていないか十分に調査し,その結果を報告すること。

・②①の処置をした上で,当方の請求額250万円のうち60万円を払うこと。

・これらを不服とする場合は、東京地方裁判所に貴社を被告として提訴する。

「60万円」は、「払うには痛いが、しかたなく払う」であろう金額を弁護士から提示されて合意したものです。

裁判をすれば、まず勝てるでしょう。
しかし貴重な時間を使いたくありません。

後日、すんなり支払われました。

 

T社とライターとの間で「コピー記事禁止」などの取り決めがあったとすれば、T社はライターの不法行為を理由に、60万円を損害賠償として請求できます。

「あくまで法律上」は、ですが。

T社から支払いがあった翌日、弁護士から内容証明郵便発送の手数料、郵便代など合計5万7千円を差し引いた金額が振り込まれました。

最後に

弁護士という法律の専門家を通した方が良い方向に解決する問題もあります。

とはいっても、わざわざ弁護士に依頼するまでもないというケースも多いでしょう。
削除だけなら自分で連絡すれば良いと思います。

それで相手が応じなければ自分で内容証明を送ったり、ダメなら少額訴訟という手もある

著作権侵害に対する行動を起こす前に考えるべきは、自分の満足をどこに求めるのか?だと思います。

相手の反省が欲しいのか?お金か?

それによって、費用倒れになっても裁判をする場合もありますし、告訴や、時には無断転載を静観という場合もあるでしょう。

いちばん良いのは、ひたすら優良記事を書き続けることだと思います。
無断転載を気にしないこと。

それが貴重な人生の時間と精神を消耗せず、長い目で見て自分の幸福につながる方法では?と思ったりもします。

【関連記事】

イスラム圏にセックスレスがない理由

婚前交渉が禁止されたイスラムは「禁欲的」なのか?

 

今回の問題解決にあたっては、「旅するフォトグラファー有賀正博さんの記事を参考にさせていただきました。

ご本人からも随時、非常に的確なアドバイスをいただきました。
心から感謝いたします。

 

【「ネットは基本、クソメディア」】

多数のネットメディアを編集する中川淳一郎氏の著書。

コメントを残す