日本の貧困・格差問題とイスラムの弱者救済 <イスラム世界から見た日本>

世界中で、イスラム国に関係する痛ましい事件がおきています。そのために「イスラムは怖い・暴力的」と考える人も少なくないでしょう。

一方で、今世界で15、6億人いるとされるイスラム教徒の人口は増え続け、近い将来3人に1人がイスラム教徒になると言われています。

暴力的な宗教が15億もの人を惹きつけるでしょうか? 
なぜこれほど多くの人を魅了し続けるのでしょう? 

それは人を幸せにする宗教だからです。
「となりのイスラム」(内藤正典著)をもとにご説明しましょう。

非は自分にない

イスラムではこの世で起こったことは、すべて神の仕業と考えます。会社をリストラされても、それは神がそうされたから。つまり自分には責任がないと考えるのです。

でも日本人の場合、多くは「自分がダメだからクビになったんだ」と自分を責め、場合によっては線路に身投げすることにもなる。果たしてどちらがラクな生き方か?

「この「神様に全てを従う」というイスラム教徒のあり方は、意外なほどこれからの日本人の生き方によい示唆を与えてくれる発想のような気がします。すべてを従うからには、結果は神が決めることです。考えてもしょうがないことを、ああだこうだと考えて自分を追い詰めてしまうところがわれわれれ日本人にはありますから、別にイスラム教徒にならなくても、イスラムの根底にある発想は、学ぶ価値があるのではないでしょうか。」

「都合の良い責任転嫁」と思われるかもしれない。でも何か起こると「反省」を促し、自分を責めることが好きな民族にとって、「不必要に自分を苦しめることから逃れる知恵」に何か学ぶところがあるのでは、とも思うのです。

貧者にやさしい

「貧しい人を助けよ」という教えがイスラムにはあります。パキスタンでは、町中のレストランが食事時に貧しい人に食事を配っています。貧者救済の慈善団体も星の数ほどあります。

イランでは、物乞いがホテルの食堂でただで食事を食べているのを見たことがあります。エジプトでもこういう人が堂々と食堂の店主からご飯を受け取ったりしている。他のイスラムの国でもそうです。

こういう姿を目にすると、日本人なら「甘えるな」と思うでしょう。けれどもイスラムでは、貧困に陥ったのは、その人のせいではない。神の仕業だ。だから皆で助けようと考えるのです。

一人一人が与える額など微々たるものです。けれど、それがつもりつもって貧者は生きることができます。

貧しい人は決して肩身がせまい思いをしません。相手に、「貧者を助ける」という善行を行うチャンスを与えたからです。イスラムでは、善行をすれば天国へ行くチャンスが増えると考えられているからです。

「「弱者に対して優しくしてやれ」というのは、イスラムでは神が人間に下した義務です。義務といっても、日本語でいう義務とはニュアンスが違います。嫌いややらされているという感覚は微塵もなく、神が善行を積むきっかけをくれているという感覚です。」

日本では貧困は自己責任といった考えが強いように思います。もちろんそういう要素もあるでしょう。しかし自分の努力ではどうにもならないこともあります。

しかし「弱者切り捨て」などという言葉がある日本では、「稼ぐ者が偉い」とされ、貧しい人・働けない人が肩身がせまい思いをするどころか、精神的・経済的に非常に厳しい状況に置かれることもあります。

イスラム圏を旅行した方ならおわかりかと思いますが、カフェなどに入ってお茶を飲んで出ようすると、店主に「お金はいらない」と言われることがよくあります。「旅人を助けよ」という教えがイスラムにはあります。それとが同時に、その土地に慣れない外国人は「弱者」だから、そんな人からお金はとれない、という思いがあるのでしょう。

(参考)貧しいのは恥ずべきことではない。女性の貧困とイラン社会
    物乞いは「感謝される、社会になくてはならない存在」である

人生を楽しむ教え

「お酒を飲んではいけない」「豚肉は食べてはいけない」。イスラムを、戒律にガチガチに縛らられた厳しい宗教だおもっているおもっている人は多いでしょう。そんなことはありません。

このブログで何度ものべているように、イスラムでは夫婦間のセックスを奨励しています。そのために、なるべく早くの結婚をすすめています。
(参考:日本人が知らないイスラム(1)禁欲は罪

お酒を飲んでも貧者に施しをするなど善行をすれば、それはチャラになる。何も食べるものがないときは豚肉を食べても良いとされています。イスラムは私たちが考える以上に寛容な宗教です
(参考:なぜ世界の3分の1がイスラム教徒に?イスラムはゆるい宗教

早くの結婚をすすめるのは、家族を最も大切なものと考えるからでもあります。その代わり、女性の一人旅は日本ほど市民権を得ているわけではありません。

一方であるパキスタン女性に「一人で海外に行けないて、つまらなくないのか?」と質問した時、彼女から帰ってきた答えは、こうでした。「一人で旅行したら、楽しみが半分になる」。

次の世代に生を引き継ぐ、家族と時を過ごす。これらがイスラムの人々の生きる上での最大の喜びです。だから仕事を結婚よりも優先したり、子育てをキャリアにじゃまだとする考えはほとんどありません

晩婚化・少子化が進む日本は、いってみれば、戦後、経済効率を社会を回してきたツケがきていると言っても良いしょう。

弱い人も含めて他者と助け合い、長時間労働より家族とのつながりを大切にする。今こそ、人が人としてもっと幸せになれる社会を目指すべきだと思います。

 

となりのイスラム」。イスラム国がなぜ生まれたのか? 真のイスラムとは何か? 私たちがイスラムから学ぶべきことがあるとしたら、どんなことか? などについて、平易な言葉で語られています。

・他にイスラムについてやさしく書かれた本 

私が実際に接したイスラム圏の普通の暮らしを書きました。

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